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55.生まれ故郷

 マードの町は、レスタとレガリアのちょうど中間地点にある。

 二つに比べて小規模な町で、住んでいる人たちも老人や子供が多い。

 決して発展している町ではないものの、豊かな森の緑に囲まれた長閑さがある。

 レガリアとは違った住みやすさのある町、だそうだ。


「準備できたか?」

「はーい!」


 アリアが元気よく大きな声で返事をして、両手を高く上げている。

 三人とも荷物をカバンに詰めこんで、後は馬車に乗せるだけだ。


「よし、それじゃ馬車を借りに行こうか」


 出入り口の門付近には、長距離移動用の馬車を貸してくれる業者がいる。

 馬車の大きさや馬の質、借りる期間によって値段はマチマチ。

 基本的には高いから、お金に余裕がない新米冒険者とかは使わないことが多い。

 何より自分で馬を操る技術がないと、運転手まで頼まないといけないからな。


「今日は私が運転するね!」

「アリアの運転は荒いからなぁ」

「そんなことないから大丈夫だよ~」

「わたしがやりましょうか?」

「大丈夫だってば!」


 なんてやり取りをしながら、俺たちは門付近に到着した。

 適当な大きさの馬車を借りて、さっそく荷物を乗せる。

 呪いの王の一件といい、何度もやっている作業だから、さすがに三人も慣れてきている。


「そろそろ買ったほうが良くない?」

「確かにな。一々借りるのも面倒だし」


 マナの言う通り、自分たち専用の馬車を買うのもありだな。

 なんだかんだで遠出の多い俺たちだ。

 今後のことを考えても、そっちの方がコストも安そうだし。

 しいて言えば、馬の世話と車体の手入れが面倒っていうことくらいか。


「世話と手入れは当番制かな」

「……続けばいいね」

「それは全員の気持ち次第だろ」


 会話しながら作業を荷物を入れ、自分たちも乗り込む。

 運転は結局アリアにやってらもうことになった。

 これから向かうのは彼女たちの生まれ故郷。

 道順は俺よりも知っている。


「じゃあいっくよー!」


 馬車が走り出す。

 門を潜ってすぐに、スピードの出し過ぎで車体が大きく揺れる。


「ちょっ、アリア!」

「あはははっ、ごめんごめん」

「……酔いそう」

「やれやれ」


 片道で一日半。

 賑やかな旅路になりそうだ。


 しばらく進み、今のところは順調。

 天候にも恵まれていて、空は快晴だ。

 時々休憩を挟みつつ、焦らずゆっくり進む。

 今は道中に見つけた一本木の下で休憩中だ。

 

「はぁー疲れた!」


 アリアが草原の上で大の字になって寝ころぶ。

 心地いい風が吹き抜けて、とても過ごしやすそうな場所だ。

 偶然だったけど、中々良い場所を見つけたな。


「前と違う道だけど、これで合ってるんだよな?」

「はい。こっちのほうが近いし安全です」


 そうか。

 ティアが言うのだから正しいのだろう。

 道中のルートガイドはティアに任せてある。

 マナは魔法の結界で馬車を魔物から守ってくれている。

 俺はというと、特にやることもないので三人を見守るだけだ。


「マード……か」

「お兄さんは二回目?」

「ああ。と言っても、ずいぶん前だし、あんまり覚えてないけどね」


 確か三年くらい前だったか。

 俺がまだ彼らのパーティーに入っていた頃だ。

 クエストの中間地点になっていて、半日くらい滞在した。


「宿に泊まったわけでもないからなぁ~ ギルド会館に立ち寄って、簡単なクエストだけ済ませた……と思う」


 記憶が曖昧だな。

 ハッキリとは思い出せない。 


「みんなはその頃何してたか覚えている?」

「う~っと、たぶんシスターの手伝いかな?」

「シスター? 教会にいたのか?」


 俺が尋ねると、三人はキョトンとした表情を見せる。


「あれ? 言ってなかったっけ?」

「何の話だ?」

「ボクたち三人とも孤児だよ」

「えっ……」


 普通に初耳だった。

 アリアが続けて言う。


「三人とも大きくなる前に親が死んじゃったんだ。教会はそういう子供を預かってくれてて、私は二歳からお世話になってるの」

「わたしもアリアと同じ時期でした」

「ボクもちょっと後」

「そう……だったのか」


 知らなかった。

 三人とも仲が良いなとは思っていたけど、そういう背景があったのか。

 迂闊に聞いていない内容でもなさそうだし、気にもしてこなかったな。

 我ながら恥ずかしいと思う。


「そんな顔しないで師匠! 私たちはぜーんぜん大丈夫だったから!」

「はい。みんな一緒だったので賑やかで楽しかったです」

「シスターも優しかった」


 三人は底抜けな笑顔を見せてそう言った。

 無理をしている感じはしないし、きっと本当のことなのだろう。

 少し安心して表情が緩む。


「そうか」

「楽しみだな~ シスター元気にしてるかな?」


 ワクワクしているアリア。

 他の二人も同様に、久しぶりの再会を楽しみにしている。


「俺もあいさつしないとな」


 三人には色々と助けられている。

 精神的にも、生活面でも。

 お陰で毎日が楽しい。

 彼女たちを育ててくれた人に、ちゃんとお礼を言おうと思った。


 その後も馬車を進ませ、俺たちは三人の故郷。

 マードの町にたどり着いた。

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