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3.流石ナイトは格が違った

 そうこうしている内にターミナルへと到達した。中央部分の巨大な入り口をくぐり、中へと入る。

 真っ先に見えたのはロビーのような場所だ。ナギサはどうすれば良いか分からず、とりあえず多くの人々が集まっている場所へと足を進める。

 ロビーの中央には無数のスクリーンが浮かんでおり、その映像の中では数多くの武器を持った人間達……いや、デーヴァが戦っていた。ロビーにいる人々やそれに付き添うデーヴァの何人かは目の前で繰り広げられている戦いを真剣な眼差しで、そして更に何人かは談笑しながら観戦していた。


「これは……」

「これはですね」


 と、説明をしようとしたソウハの声を遮るようにして、少女の声が重なった。


「お兄さん、初めての人?」


 声の主は自分よりも小さい少女だった。

 高校生くらいだろうか?緑の上着を羽織り、明るめの黒い髪を肩より少し下の方まで垂らしている。目つきもキリっとしており、運動部にいそうだなという印象をナギサは抱いた。


「ああ、今日ダイブしたばかりなんだ。君は?」

「あたし?ミナミって名前でやってる。今行われてるこれは2チームに分かれて戦う団体戦で、5対5の試合をやってるね」


 ミナミと名乗った少女によると、これは複数のプレイヤーがランダムで2チームに分けられて戦い合うというルールだという。

 互いのチームの実力差はあまり開かないようゲーム側が調整してくれるため、腕に自信が無いプレイヤーでも安心。更に沢山のデーヴァが見られるので観客からも人気のバトルだそうだ。現在行われている試合はランクF~E帯のプレイヤー限定の試合らしい。


 10人のデーヴァが広いフィールドの中を駆け巡り、手に持った武器を振るう。

 戦いの様子は様々な角度から何枚かのスクリーンにも映し出されており、ナギサ達が立っている側からよく見えるスクリーンにはフードが付いた緑のローブを身に纏った弓使いと、青銅の鎧を着た赤髪の騎士が激しい攻防を繰り広げていた。

 攻防、といっても騎士は弓使いの放つ矢を左腕に装備された大型の盾で防ぐばかりで一向に攻撃出来ていないのだが。


『行くよロビン!”アロー・スコール”!』


 ロビンと呼ばれた弓使いの方から女性の声が響く。彼とリンクしている状態にあるプレイヤーの物だ。ロビンが構えた弓から一本の矢が放たれたかと思うと、それは何十本もの光の矢となって広範囲に降り注ぐ。


「マジかよ!?こっちにも飛んでくるぞ!?」

「ちょっと!こっちは味方よ!?」


 少し離れていたところで戦っていた男の剣士型デーヴァと女の格闘士デーヴァが驚愕の声を上げる。敵も味方もお構いなしだ。近くにいたお前が悪い、といったところだろうか。

 そして対する赤髪の騎士はどこか余裕の笑みを浮かべた。


「このままじゃ他の味方も危ないな。アレ頼んだ!」

『分かってる。”アイアース・シールド” !』


 騎士の傍からスキルの発動を告げるであろう合図が聞こえた。

 その瞬間、騎士の左腕に装着されてあるひし形の盾が光を放ち、四方の部分が大きく展開する。そして無差別に放たれた光の矢は全て収束し、盾を構えた騎士への方へと向かい一直線に飛んでいく。


『こっちの攻撃を全部受け止める気!?』


 そしてその攻撃の衝撃でフィールドに土煙が舞う。先ほどのスキルはおそらく攻撃を自身に誘導させるものだろう。

 味方を守るために自分を犠牲にするとは……と、緑の弓使いとそのプレイヤーは騎士の敗北を確信した。しかし。


「――生きてるんだなぁ!」

「何ッ――!」


 土煙を払いのけるようにして現れた先ほどの騎士がロビンへと向かって走っていった。あれだけの攻撃を一身で受けたにも関わらずダメージは少ないようだ。

 完全に油断していたロビンは騎士の持つ大振りの剣の一撃をモロに喰らうこととなった。


『流石ナイトは格が違う……!』


 騎士とリンクしているプレイヤー――声の感じから恐らく女性が、ボソボソと笑いながら何か呟いたが、スクリーン越しに試合を見ているナギサ達には何を言ってるのか全く聞き取れなかった。






  ◆






 それからしばらくして、5対5のチーム戦は赤髪騎士がいたチームが相手チームを全滅させたことで勝利した。最後まで残った騎士と魔法少女のような衣装を身に纏った桃色の髪の少女はお互いを称え合うように握手を交わす。


「凄い……!これが生のデーヴァバトルか!あんなポチポチゲーとは全然違う、デーヴァがリアルで動くとあんなにカッコいんだ……!」


 初めて見たデーヴァ同士の生のバトルを目を輝かせながら見ていたナギサの横で、ミナミが「おっ!」と興奮した面持ちで声を上げる。


「やった!Aチームに賭けてたからコインゲット!」

「賭け?」

「ああ。どっちが勝つか試合前に賭けが出来るんだ。アタシはさっき勝利したAチームが勝つ方に賭けてたから、コインが手に入ったってわけ」


 ニッコリと笑いながら自身のドライバーをナギサに見せるミナミ。そこには『アクロコイン+500』の表示が。自分は試合の途中から見ていただけだから参加出来なかったなぁ、とちょっとだけガッカリ。

 ――それにしてもやっぱり生でデーヴァの戦いを見ると気分が高揚するなぁ……!自分も、いや、自分達も早くあんな風に戦いたい!

 ナギサは生で初めてのアリュビオンでのバトルを見たせいか、かなりの興奮状態にあった。そんな心の状態が顔に出ていたのか、ミナミが一声かける。


「良かったらお兄さん、今からあたしと一戦しないか?こっちも先週始めたばっかだからほぼ初心者だし」

「え、いいの?お手柔らかに頼むよ」


 その隣でソウハも、「マスターがよろしいならやりましょう」と了承の意を述べる。その時だった。


「あの、ちょっといいかな?」


 ふと、ナギサの背後で声がした。振り返るとそこには黒いジャケットを着た青年が立っていた。

 自分と同年代くらいだろうか、背丈も似ている。髪の毛は若干ボサボサでチャラそうな印象を受けたが、その顔はどちらかというと好青年といった感じだ。


「なんです?」

「さっきちょっとだけ話が聞こえたんだけど……、君、今日登録したばかりのプレイヤーかい?」

「ええ、まあ、そうですけど」

「良かった~。僕も今日始めたばかりの初心者なんだけど、よかったら一戦どうかな?」

「えっ、でも……」


 チラリ、と隣の少女を見る。先に対戦の約束をしていたのは彼女の方なのだが。

 ミナミは別に気にしてない、といった様子で胸の前で手を振る。


「今回はそっちのお兄さんに譲るよ。また会おうね、えっと……」


 そういえば自分の方は名乗ってなかったことを思い出す。


「ナギサだよ。それで、こっちのデーヴァはソウハ」

「そっか、じゃあまた会えたらよろしくね!ナギサさん、ソウハちゃん!」


 そう言ってミナミは手を振り、駆け出して行った。

 その様子を見て青年は申し訳なさそうに頭を掻く。


「なんだかごめんね。……それじゃあ対戦依頼を送るよ」


 ナギサの目の前に「モトカズからの対戦依頼があります」と書かれた画面が表示される。なるほど、目の前の人はモトカズというプレイヤーネームなのか。

 先ほどのミナミという少女もそうだが、自分の下の名前をプレイヤーネームに登録している人が多いのだろうか?まあ自分も”ナギサ”という本名と同じ名前でプレイしているのだが。

 そしてその下に「YES」と「NO」の表示。その下に更に文字列が並んでいたので読もうとしたが、

「YESを押してもらえるかな?」というモトカズの言葉を聞いて咄嗟に「YES」を押した。


 ちなみにその文章とはこうである。――アンティルール。


 初めてのバトルだ。現実世界で見知らぬ人と殴り合い、蹴り合いをするのは好きじゃないが(そもそもしたことないが)、ソウハと共に武器や魔法を駆使して戦うってのはやっぱり楽しみだな。自分達は先ほど戦っていた彼らのようにちゃんと戦えるだろうか……。

 そう思いながらバトルフィールドに転移するナギサが聞いたのは、下種のような笑い声の混じったモトカズの声だった。


 ――カードいっただきぃ!

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