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第47話 大団円の意味

「ミオちゃん、お姉さんたちにお礼を言いなさい」


「えー、ママ、なんでぇー?

よくわかんないけど、ありがとー!」


無邪気なミオちゃんは、無邪気なことを言っている。


「えー、でもぉー、このおねえちゃん、しらなぁーい。

あのおねえちゃん、どこいっちゃったのー?」


あのお姉ちゃんが逮捕されるきっかけを作ったのは、私たち。

まさか、手錠をかけられて捕まっているなんて、4才児には言えない。

雄大(ゆうだい)さんも遥《はるか》さんも、気まずそうな顔をしている。


「あのお姉ちゃんのことは、もう忘れなさい」


「えー、パパ、なんでぇー?

だって、やくそくしてたんだよぉー」

と、両手をジタバタさせた。


かわいい―


「ミオ、もういいから!」


「えー、なんでぇー?

なんでぇー?なんでぇー?」


早く切り上げた方がいいかな、と考えていると、ここで動いたのはマモルだった。


「ねぇ、ミオちゃん。

あのお姉ちゃんと、どんな約束したの?」


「また、いっしょに、あ(・)の(・)カレーをたべるんだもん!」


「カレーだったら、昨日も食べたじゃない」


「ママ、わかってない!ちがうもん!」


「カレーなんて、どれも同じなんだから。

ママを困らせるんじゃない」


「パパもわかってない!ちがうもん!ちがうもん!」

と、また両手をバタバタする。


雄大さんも遥さんも、私たちがいる手前、ミオちゃんをしかりつけることもできず、困っている感じだ。

だが、本当に困った人は、両親なのかもしれない。

やっぱり、私が助け舟を出すべきだよね―


ミオちゃんの身長に合わせ、腰をかがめる。


「ミオちゃん、カレーだっていろいろ違うもんね。

私も、好きなカレーあるよ」


ミオちゃんは一瞬キョトンとして、

「こっちのおねえちゃんは、なにがすきなの?」


「そんなの、決まってるじゃない!

プリギャール20thアニバーサリー 華麗にカレーなルーでめしあがれ」


両親が目を丸くし、ミオちゃんの目が輝いた。


「うわー、こっちのおねえちゃんもおなじだぁー」


「ミオちゃんも、プリギャール好きなの?」


「うん。だぁーいすき!

あのおねちゃんとあにめ、ぜーんぶみたんだ!!」


全部?

最新シリーズ「名探偵プリギャール」を全部見たって意味?

プリギャールは全シリーズがネット配信されてるから、見返すことはできるけど。


「名探偵プリギャール、全部見たの?」


「めいたんていだけじゃないよ!

―まさかのぎゃるとがぁーる―からめいたんていまでぜんぶ!」


―まさかのギャルとガール―だって!?

シリーズ1作目の第1話じゃないか!


「ぜんぶで20年分だよ

ミオちゃん、よく頑張って観たね」


「うん。

あのおねえちゃん、プリギャールのことしらないから、ミオがおしえてあげたんだ」


「あのお姉ちゃんと一緒に観たの?」


「ぜーんぶ、いっしょにみたよー」


「どのお話が、いちばん好きなの?」


「えーとねぇ。

めいたんていのやつ。

かいとうかれーな・るーないと かれいにとーじょーってやつ」


―名探偵プリギャール 第3話 怪盗 カレーナ・ルーナイト 華麗に登場―

第3話のストーリーって――


「大人たちから大切なものを盗むけど、ちゃんと返してあげるんだよね」


「だいだんえん!」


「ミオちゃん、難しい言葉、知ってるね?」


「うん。

あのおねえちゃんに、おしえてもらったんだぁ!」


そう、第3話は大団円(だいだんえん)。

だって、怪盗カレーナ・ルーナイトの犯罪後にみんなが幸せになっているから―


中腰の姿勢をやめ、ミオちゃんの部屋を見る。

ベッド、机、小さなタンス、時計くらい…

簡素とも言えるが―


余計なことだよね、だけど―


「雄大さん、遥さん、ちょっとお話があります。

マモルくん、あっちでミオちゃんの相手をしてくれる?」


マモルは戸惑ったが、しゃがんで

「ミオちゃん。

ボクにもプリギャール、教えてくれる?」


「うん!いいよ!」


こうやってマモルは、ミオちゃんを別室に連れ出してくれた。


私と両親の3人だけが残ったミオちゃんの部屋。


「これから、完全に自分語りをします。

完全に余計な話なので、気分が悪かったら忘れてください」


「は、はぁ…」


私は、ミオちゃんを見つけた大恩人。

だから、自分語りを断れず、困っているのだろう。


「私は、幼少期、施設で育ちました。

つまり―私の両親は、物心がつくかどうか、そのくらいのときに、突然亡くなりました。

そう、あれは、亡くなった両親も生きている私も想定していなかった、いきなりの出来事でした」


両親をしっかり見て、言うべきだ。


「物心がつくかどうか、と言いましたが、覚えていることが1つあります。

私は、プリギャールが大好きでした。

そして、父も母も一緒にアニメを観てくれて、コミックも絵本も買ってくれて、部屋にはポスターを貼ってくれました」


ここで、ミオちゃんの部屋を見回す。

プリギャールのグッズが、ひとつもない。


「私の場合、父と母が急死し、幼少期に親子3人でプリギャールを楽しむ時間は消滅しました。

だけど、親子3人が生きていても、幼少期にプリギャールを楽しむ時間は、消滅していきます。

だって、ミオちゃんの幼少期はいずれ終わるのですから。

ミオちゃんの幼少期が終わった時に、親子でプリギャールを楽しんでおけばよかったと後悔しても、その時間は、もう存在しません」


「で、でも、たかが女の子向けのアニメで、そこまで…」

と、雄大さんは動揺している。


「女性は、子どもも大人も、かわいいものが大大大好きなんです。

そうですよね?」

と、遥さんにそっと顔を向ける。


「ええ、たしかに」


雄大さんは驚く。

今度は雄大さんが、遥さんにバッと顔を向ける。


「そうなのか?

お前もプリギャールが好きなのか?」


「いや、私はたまたま、おジャ魔なレミたん派なだけで、かわいい女の子のアニメは好きだよ」


雄大さんは興奮しながら

「なんだよ!

だったら、は(・)る(・)た(・)ん(・)、早く言ってくれればよかったのに!!」


数日後―


両親からみなさまへお礼メッセージが公開された。

親子3人で映画館に行った写真が添付されていた。

映画のタイトルは、―名探偵プリギャール 歴代戦士がまるっと謎解き―。

もちろん、怪盗カレーナ・ルーナイトも華麗に登場!

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