■第5章:手の届く距離
古城。
シャーロットの部屋。
ベッドの上。
静かに眠っている。
呼吸は安定している。
ただ――
力が抜けている。
「……」
ルミナはその横に座ったまま、動かない。
ずっと見ている。
「……バカ」
小さく呟く。
「無理するなって言ったでしょ」
返事はない。
当然。
でも――
少しだけ、手を握る。
冷たくはない。
でも、力がない。
「……怖かったのよ」
ぽつりと。
「そのまま止まらなかったらって」
視線が少しだけ揺れる。
「……あんたがいなくなったら」
言葉が止まる。
そこまで言って、
小さく息を吐く。
「……やめた」
それ以上は言わない。
その時――
「にゃ」
シュバルツがベッドに上がる。
シャーロットの隣に丸くなる。
「……あんたも心配してるの」
ルミナが少しだけ笑う。
そのまま、
シャーロットの手を軽く包む。
「……ちゃんと起きなさいよ」
「まだ教えること、いっぱいあるんだから」
ぶっきらぼう。
でも、優しい。
しばらくして――
「……ん」
シャーロットの指が、少しだけ動く。
ルミナの手がぴくっと反応する。
「……起きた?」
顔を覗き込む。
シャーロットの目がゆっくり開く。
ぼんやりとした視線。
「……お姉ちゃん」
弱い声。
ルミナの肩から、力が抜ける。
「……遅い」
そう言いながら、
少しだけ、安心した顔。
シャーロットは少しだけ笑う。
「……えへへ」
まだ力はない。
でも――
ちゃんと戻ってきている。
その時、
ドアの外から、
「目を覚ましたか」
セレスティアの声。
静かに入ってくる。
シャーロットを見る。
「無理をしたな」
淡々と。
シャーロットは少しだけ俯く。
「……ごめんなさい」
セレスティアは首を振る。
「謝る必要はない」
「ただ、覚えておけ」
少しだけ声が重くなる。
「“止まれるかどうか”が、境界だ」
はっきりと言う。
シャーロットは小さく頷く。
「……うん」
ルミナが横で腕を組む。
「次は止める前に止めなさい」
厳しいけど、
ちゃんと前を向いた言葉。
シャーロットは少しだけ笑う。
「……がんばる」
「えへへ」
弱いけど、
ちゃんとした笑顔。




