■第4章:止まるという選択
「……ちょっとだけ」
もう一度、立ち上がる。
ルミナの目が細くなる。
「……無理はしない」
低く言う。
シャーロットは小さく頷く。
「うん」
二人目の前へ。
膝をつく。
さっきと同じように、
手をかざす。
でも――
さっきより、少しだけ遅い。
集中に時間がかかる。
「……ここ」
呼吸。
一点に絞る。
きらり。
光る。
さっきと同じ。
でも――
ほんの少し、強い。
疲労の影響。
制御が甘くなる。
「……っ」
シャーロットの顔が歪む。
「大丈夫!」
ルミナがすぐに声をかける。
「一点だけ!」
「広げるな!」
指示。
シャーロットは歯を食いしばる。
「……うん」
絞る。
押さえる。
そして――
手を下ろす。
二人目も、
ゆっくりと呼吸が戻る。
「助かった……!」
周囲がさらにざわつく。
「この子……何者だ……?」
声が広がる。
シャーロットはその場に座り込む。
「……はぁ……」
明らかな疲労。
肩で息をしている。
「……もう一人……」
誰かが言う。
三人目。
シャーロットの目が揺れる。
「……」
立てない。
体が重い。
ルミナが前に出る。
「もうやめなさい」
はっきりと。
シャーロットが顔を上げる。
「……でも」
「でもじゃない」
強く言う。
「倒れたら意味ないでしょ」
現実的な言葉。
シャーロットは言葉を失う。
でも――
目は、三人目に向いたまま。
その時。
セレスティアが一歩前に出る。
「ここまでだ」
静かな声。
周囲が少し静まる。
「応急はした」
「残りは我々が処置する」
はっきりと言う。
難民たちは戸惑いながらも頷く。
シャーロットはその場で、
小さく息を吐く。
「……ごめん」
ルミナがしゃがむ。
目線を合わせる。
「十分よ」
短く言う。
「ちゃんと“止まれた”」
それを評価する。
シャーロットの目が少しだけ揺れる。
「……うん」
小さく頷く。
その場を離れる。
難民たちはセレスティアの指示で、
応急処置へと移る。
ざわめきはまだ残っている。
でも――
シャーロットには、もう聞こえていない。
「……っ」
足がふらつく。
「おい」
ルミナがすぐに支える。
「……大丈夫?」
「……うん」
答える。
でも――
体に力が入らない。
「……なんか」
「重い」
言葉が遅い。
視界が少し揺れる。
セレスティアが近づく。
一目で判断する。
「使いすぎだ」
短く言う。
シャーロットは首を振る。
「……まだ、いける」
無意識の言葉。
ルミナの顔が一瞬で変わる。
「バカ言わないで」
強く言う。
その瞬間――
シャーロットの膝が崩れる。
「……っ」
そのまま、倒れかける。
「シャーロット!」
抱きとめる。
意識はある。
でも――
焦点が合っていない。
「……へいき」
弱い声。
でも明らかに無理をしている。
その時――
空気が、わずかに歪む。
今までとは違う。
整うのではなく、
“揺れる”。
周囲の草が、ざわ、と動く。
風ではない。
「……っ」
ルミナの目が見開く。
「セレスティア様!」
即座に呼ぶ。
セレスティアが前に出る。
「落ち着かせろ」
短く指示。
ルミナはシャーロットの顔を掴む。
「聞いて」
強く、でも揺らさない声。
「今、止めなさい」
「全部止めて」
シャーロットの目が揺れる。
「……とめる」
意識がぼやけている。
でも――
「……やめる」
小さく呟く。
その瞬間――
揺れが、すっと収まる。
空気が静かになる。
「……はぁ」
シャーロットの体から力が抜ける。
完全に、ぐったりする。
ルミナがしっかり支える。
「……ほんとにバカ」
小さく呟く。
でも――
その手は離さない。
セレスティアは静かに見る。
「限界の手前で止まったな」
冷静に言う。
「……手前?」
ルミナが睨む。
「超えたら、崩れていた」
淡々と。
ルミナは何も言えない。
ただ――
シャーロットを抱きしめるように支える。
「……帰るわよ」
はっきりと言う。




