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■第3章:小さな奇跡

古城の外。


「ちょっと町まで行くわよ」


ルミナが軽く言う。


「うん」


「えへへ」


シャーロットが頷く。


三人と一匹で歩き出す。


穏やかな時間。


でも――


遠くから、ざわついた音。


「……なんだ?」


セレスティアが目を細める。


土埃。


ゆっくりと近づいてくる影。


「……人?」


シャーロットが小さく呟く。


やがて見えてくる。


集団。


ぼろぼろの服。

疲れ切った顔。


「……難民か」


セレスティアが静かに言う。


中規模。

数十人ほど。


子どももいる。

老人もいる。


足取りは重い。


そのまま近づいてきて――


「……っ」


一人が、倒れる。


続けて、もう一人。


「おい!」


周囲がざわつく。


「水が……」


「もう無理だ……」


声が重なる。


シャーロットの体がびくっと震える。


「……っ」


一歩下がる。


ルミナの背中に隠れる。


「……お姉ちゃん」


小さな声。


ルミナはすぐに前に出る。


庇う位置。


「下がってなさい」


短く言う。


セレスティアは一歩だけ前に出る。


状況を見る。


人数。

状態。

距離。


「……ギリギリだな」


小さく呟く。


助けなければ、何人かは危ない。


でも――


不用意に関われば、

シャーロットの力が暴れる可能性。


一瞬の沈黙。


シャーロットはルミナの背中から、

少しだけ顔を出す。


倒れている人を見る。


苦しそうな呼吸。

動かない手。


「……」


“誰かのために使う時”


心臓が少しだけ強く鳴る。


でも――


怖い。


「……どうするの」


小さく、震える声。


ルミナに聞く。


「……っ」


その時。


シャーロットの手が、

ルミナの服を軽く握る。


震えている。


でも――


離す。


「……わたし」


一歩、前に出る。


「え?」


ルミナが振り返る。


シャーロットは、

まだ怖そうな顔をしている。


でも、


目は逸らしていない。


「……やる」


小さく言う。


「怖いけど」


正直に。


「でも」


倒れている人を見る。


「助けたい」


その言葉。


空気が、わずかに変わる。


ルミナの目が揺れる。


「……シャーロット」


止めようとする。


でも――


セレスティアが手を軽く上げる。


「待て」


短く。


ルミナが動きを止める。


シャーロットはゆっくり歩く。


一人、倒れている人の前へ。


膝をつく。


「……大丈夫?」


返事はない。


呼吸が浅い。


シャーロットの手が震える。


「……ちょっとだけ」


自分に言い聞かせる。


「いっぱいじゃなくていい」


「少しだけ」


“やりすぎない”


ゆっくりと、手をかざす。


触れない。


距離を保つ。


そして――


意識を、絞る。


“この人だけ”


“呼吸だけ”


一点に。


その瞬間――


きらり。


今までより、少しだけ強い光。


でも――


広がらない。


一点に留まる。


倒れていた人の胸が、

わずかに上下する。


呼吸が、深くなる。


「……っ」


周囲がざわつく。


「おい……」


「今、何か……」


シャーロットの顔が歪む。


「……っ」


負荷。


でも止めない。


「もうちょっとだけ」


ほんの少しだけ。


そして――


ふっ、と手を下ろす。


「……はぁ」


小さく息を吐く。


倒れていた人が、

ゆっくりと目を開ける。


「……あ……?」


周囲が一斉に声を上げる。


「生きてる!」


「呼吸戻ってるぞ!」


ざわめきが広がる。


シャーロットはその場に座り込む。


「……できた?」


自分でも分かっていない。


ルミナがすぐに駆け寄る。


「無茶しすぎ」


でも――


声は強くない。


むしろ、


「……でも」


小さく息を吐く。


「ちゃんとやったわね」


はっきりと言う。


セレスティアは静かに見ている。


「……成功だ」


ただ一言。


「この子も……!」


別の難民が叫ぶ。


倒れている人。


「お願いだ……!」


必死な声。


シャーロットの体がびくっと動く。


「……っ」


さっきの一人。


助けられた。


でも――


疲れている。


体が重い。


「……シャーロット」


ルミナの声。


止めるか、判断を委ねるか。


その一瞬の間。


シャーロットは、

ゆっくりと顔を上げる。


倒れている人を見る。


苦しそうな顔。


「……ちょっとだけ」


もう一度、立ち上がる。

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