■第19章:はじめての仕事
朝。
古城の一室。
静かな空気。
「……着替えなさい」
ルミナが布を差し出す。
白。
柔らかい布地。
そして――
金色の刺繍。
光を受けて、控えめに輝く。
シャーロットが目を丸くする。
「……きれい」
小さく呟く。
「えへへ」
少し照れながら、服を受け取る。
着替える。
鏡の前に立つ。
「……わたし?」
見慣れない姿。
スラムの頃でも、
古城に来た時でもない。
“聖女”。
その姿。
少しだけ戸惑う。
でも――
「……えへへ」
小さく笑う。
完全には理解していない。
でも、
嫌ではない。
外。
教会前。
村人たちが集まっている。
静かなざわめき。
「聖女様が来るぞ……」
期待と、少しの緊張。
扉が開く。
シャーロットが出てくる。
白に金の刺繍。
光を受けて、やわらかく映える。
一瞬、
空気が止まる。
「……」
誰も声を出さない。
ただ見ている。
そして――
「……聖女様」
誰かが呟く。
その一言で、
全員が膝をつく。
シャーロットが少し慌てる。
「え、えっと……」
ルミナが後ろから小さく言う。
「そのままでいい」
短く。
シャーロットは少しだけ深呼吸する。
「……うん」
前に出る。
教会の中央。
一人の村人が連れてこられる。
腕を押さえている。
「作業中に怪我を……」
切り傷。
深くはない。
でも、痛そう。
シャーロットが近づく。
少しだけ緊張している。
「……大丈夫?」
その人が頷く。
「……お願いします」
シャーロットはゆっくりと手をかざす。
触れない。
距離を保つ。
「……ちょっとだけ」
小さく呟く。
意識を絞る。
“ここだけ”
“必要な分だけ”
きらり。
柔らかい光。
今までとは違う。
安定している。
揺れない。
傷口が、ゆっくりと閉じていく。
「……っ」
村人が息を呑む。
痛みが引く。
「……すごい」
誰かが呟く。
シャーロットは手を下ろす。
少しだけ息を吐く。
「……どう?」
「……痛くない」
その人が驚いた顔で言う。
シャーロットの顔が明るくなる。
「よかった」
「えへへ」
その笑顔。
村人たちはもう疑わない。
「聖女様だ……」
完全な確信。
ルミナが後ろで小さく息を吐く。
「……安定してる」
セレスティアも静かに頷く。
「問題ない」




