■最終話:見える範囲の救い
朝。
村に、鐘の音が響く。
コーン……
コーン……
小さな教会。
その前に、人が集まっている。
子ども。
大人。
老人。
誰もが、自然にそこにいる。
「おはようございます、聖女様」
柔らかな声。
扉が開く。
白い服。
金色の刺繍。
シャーロットが出てくる。
「おはよう」
「えへへ」
変わらない笑顔。
でも――
あの日とは違う。
少しだけ、
落ち着いている。
一人の子どもが駆け寄る。
「聖女様!こっち!」
「どうしたの?」
しゃがむ。
目線を合わせる。
「おばあちゃんが……」
少し不安そうな声。
シャーロットはすぐに頷く。
「行こ」
立ち上がる。
自然な動き。
ルミナが後ろからついてくる。
「無理はしない」
いつもの言葉。
シャーロットは振り返って笑う。
「うん」
「えへへ」
家の中。
老人が横になっている。
呼吸が少し浅い。
シャーロットは静かに近づく。
手をかざす。
「……ちょっとだけ」
小さく呟く。
光。
優しい。
揺れない。
必要な分だけ。
呼吸が整う。
「……楽になった」
老人が微笑む。
「ありがとう」
シャーロットは少し照れる。
「ううん」
「えへへ」
外に出る。
村の風景。
畑。
家。
人。
全部が、少しずつ育っている。
ルミナが横に立つ。
「……増えたわね」
ぽつりと。
シャーロットが頷く。
「うん」
少しだけ考えて――
「家族」
小さく言う。
ルミナの目が少しだけ揺れる。
「……そうね」
短く返す。
でも――
その声は、優しい。
少し離れた場所。
セレスティアが立っている。
静かに、全体を見る。
「……悪くない」
小さく呟く。
完全ではない。
だが――
“安定している”。
シャーロットが空を見上げる。
「ねぇ」
ルミナを見る。
「わたし、聖女かな」
少しだけ不安そうに聞く。
ルミナは一瞬だけ考えて――
「知らない」
あっさり言う。
「でも」
少しだけ間を置いて、
「やってることは、それでしょ」
現実的な答え。
シャーロットが少しだけ笑う。
「そっか」
「じゃあ、いいや」
軽い。
でも――
その言葉には、迷いがない。
「見える範囲は救う」
ぽつりと。
自分の言葉。
ルミナが小さく笑う。
「欲張らないのね」
シャーロットは頷く。
「うん」
「でも」
少しだけ、前を見る。
「増えたら、その分だけ」
シンプルな答え。
ルミナはため息をつく。
「……ほんとに」
でも――
否定しない。
鐘の音が、また響く。
コーン……
コーン……
村に広がる。
人が動く。
生活が回る。
その中心に、
一人の少女がいる。
特別でも、
完璧でもない。
ただ――
「えへへ」
笑って、
手を差し伸べるだけ。
それでも、
誰かにとっては、
それが、
“救い”になる。
■終
これが、わたしたちの物語。




