■第13章:奪いに来た者たち
数日後。
村。
空気が、少しだけ違う。
ざわつき。
「……また来たぞ」
誰かが呟く。
前よりも多い足音。
馬の数も増えている。
古城前。
白い装束。
前回の神官と女性。
そして――
数名の随行。
明らかに、“確認”ではない。
「……本気ね」
ルミナが低く呟く。
シャーロットはその後ろ。
少しだけ不安そう。
「……お姉ちゃん」
ルミナは一歩前に出る。
「下がってなさい」
短く。
セレスティアも前へ。
完全に迎え撃つ形。
神官が一礼する。
「再び失礼いたします」
丁寧。
だが、前回とは違う。
「今回は正式な通達です」
一枚の文書を取り出す。
広げる。
「中央教会の名のもとに――」
声が響く。
「当該地域における“聖女候補”の調査、および保護対象の選定を行う」
はっきりと。
村人たちがざわつく。
「保護……?」
「連れて行くってことか……?」
不安が広がる。
ルミナの目が鋭くなる。
「……強制?」
短く問う。
神官は少しだけ間を置いて――
「協力を求めます」
濁す。
だが、
意味は明確。
セレスティアが一歩前に出る。
「対象は?」
神官は視線を動かす。
ゆっくりと。
シャーロットへ。
隠さない。
「その少女です」
空気が凍る。
シャーロットの肩がびくっと揺れる。
ルミナが完全に前に立つ。
遮る。
「……断るわ」
即答。
神官の表情が少しだけ変わる。
「これは個人の意思ではなく――」
「関係ない」
言葉を遮る。
「この子はここにいる」
「それだけよ」
強い。
完全に拒絶。
若い女性が一歩前に出る。
柔らかい笑み。
「怖がらなくて大丈夫ですよ」
シャーロットに向けて言う。
「あなたの力は、正しく使えば多くの人を救えます」
優しい声。
「ここより、もっと大きな場所で」
“誘い”。
シャーロットの目が揺れる。
ルミナが一瞬で気づく。
「聞くな」
低く言う。
シャーロットはびくっとする。
でも――
少しだけ前を見る。
「……でも」
小さく呟く。
「いっぱい助けられるなら……」
その言葉。
ルミナの表情が固まる。
セレスティアが静かに言う。
「代償も増える」
短く。
現実を突きつける。
若い女性は微笑んだまま。
「それが“聖女”ですから」
その一言。
シャーロットの中で、
何かが揺れる。
その時――
「では」
神官が手を上げる。
後ろの随行が動く。
一歩、前へ。
完全に“強制”の動き。
村人たちがざわめく。
「おい……」
「やめろ……!」
でも止められない。
シャーロットの体が強張る。
「……っ」
ルミナが一歩前に出る。
完全に遮る。
「触るな」
短く。
その声に、
空気がピリつく。
随行の一人が踏み込む。
その瞬間――
「そこまでだ」
セレスティアの声。
一歩前に出る。
ただ立つだけ。
でも――
空気が変わる。
重い。
「この地は私の管理下だ」
静かな圧。
「許可なく人を連れていくことは認めない」
はっきりと。
神官が眉をひそめる。
「中央の命令です」
「ここでは通らない」
即答。
完全な拒絶。
一瞬の緊張。
そして――
随行がさらに踏み込もうとする。
その瞬間。
ルミナの手が動く。
「――やめなさい」
低い声。
魔力が、わずかに流れる。
見えない圧。
足が止まる。
シャーロットはその後ろで、
震えている。
「……やめて」
小さな声。
でも――
その言葉に反応するように、
空気が、揺れる。
今までとは違う。
もっと広い。
村全体に、
わずかに波が走る。
セレスティアの目が細くなる。
「止めろ!」
ルミナが叫ぶ。
「絞れ!」
「一点に!」
シャーロットの呼吸が乱れる。
「……できない」
初めての言葉。
制御が追いつかない。




