■第8章:聖女と呼ばれて
数日後。
古城の外。
簡素だけど、
いくつかの家が形になっている。
煙が上がる。
人の声。
「できてきたな……」
誰かがぽつりと言う。
最初の頃より、
明らかに“生活”になっている。
中庭。
シャーロットは、いつものように菜園にいる。
「今日はこれ」
小さな籠。
収穫した野菜。
「えへへ」
それを持って、村の方へ歩く。
「こんにちは」
声をかける。
「あ……!」
村人が顔を上げる。
すぐに、柔らかい表情になる。
「シャーロット様……!」
少し遠慮がち。
でも、明らかに距離が変わっている。
シャーロットは首を傾げる。
「これ、よかったら」
野菜を差し出す。
「……いただいても?」
「うん」
「えへへ」
そのやり取りを見ていた別の人が、
小さく呟く。
「……やっぱり」
「聖女様だよな」
その言葉。
近くの人が、こくりと頷く。
「助けてくれて……」
「こうして分けてくれて……」
自然に広がる。
「聖女様……」
少しずつ、
呼び方が変わっていく。
シャーロットは気づいていない。
ただ、嬉しそうにしている。
「足りなかったら、また持ってくるね」
「えへへ」
その言葉に、
村人たちの顔が明るくなる。
少し離れた場所。
ルミナがその様子を見ている。
「……始まったわね」
小さく呟く。
セレスティアが隣に立つ。
「自然な流れだ」
否定しない。
ルミナは腕を組む。
「でも、軽くないわよ」
視線はシャーロットに向いたまま。
「その呼び方」
重みを知っている。
セレスティアは静かに言う。
「本人がどう受け取るかだ」
短く。
ルミナは少しだけため息をつく。
「……あいつ、絶対気にしてない」
視線の先。
シャーロットは――
「えへへ」
子どもと一緒に笑っている。
完全に、いつも通り。
ルミナは少しだけ口元を緩める。
「……まぁいいわ」
でも――
その目は、
少しだけ真剣。




