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68話 乱戦

 

 拘留所を抜け出した瑠香たち。


「どこだ!?」

 外に出るや否や、辺りを見渡す隼人。


「皆さん、あそこ……」

 茉菜がある方向を指す。

 そちらには、空高く上る黒煙が見えた。


「あっちか!」

 そう言い走り出す隼人。


「あ、ちょ、ちょっと!」

 日和が止めようとするが、隼人は止まらない。

「もう……!」

「困ったもんやなぁ」

 溜め息をつく日和に、リーが苦笑しながら言う。


「早く追いかけよう」

 隼人を追おうと走り出す一華。

 瑠香もその後に続く。


 街中を疾走する瑠香たち。

 その速度に、驚いたように通行人が目を見張る。


「そう言えば、みんなはどうやって集まったの?」

 瑠香は気になって一華に訊ねる。


「あの音が聞こえたすぐ後に隼人が来たの。みんなも同じだと思う」

 一華の言葉に頷くリー達。


「みんなを集めるの、ほんまに早かったで」

「さすが隼人……」

 隼人の行動の速さに感心する瑠香。


「見えてきたにゃ!」

 ティアが前方を指す。


 そこには真っ白な建物があった。

 その建物から、先程見えた黒煙が立ち上っている。


「“風撃(インバット)”!!」

 その声と同時に破壊音が響く。


「隼人!」

「おう、遅いぞ!」

 そこには建物の門付近に群がる一団を吹き飛ばす隼人がいた。

 一華が呼びかけると振り向く隼人。


「この人たちは?」

「わからねぇ。いきなり襲ってきたんだ」

 隼人の下に駆け付け瑠香は問う。

 隼人は気絶している集団を一瞥し首を振る。


「この服、まるでゴロツキだにゃ」

 集団の服装を見てティアが言う。


「この人たちが犯人たちでしょうか?」

「いやぁ、わからんな。せめて一人でも残ってたらよかったんやけど……」

 茉菜の言葉にリーは首を振り隼人を見た。


「悪い、全部倒しちまった」

 あっけらかんと答える隼人。

 その様子に瑠香たちは溜め息をつく。 


 その時、再び爆発音が響き渡る。

 思わず耳を塞ぐ瑠香。


 建物の別の箇所から二つ目の黒煙が上がる。


「マズい、まだいたのか!」

 建物に向かって走り出す隼人。

 瑠香たちもそれに続く。


 建物の中は酷い有様だった。

 物が散乱し、窓ガラスの破片などが散らばっている。


「さーて、どないしよ」

 リーが立ち止まり首を傾げる。


「敵さんの位置がわからんとどうにもなぁ」

「俺に任せろ」

 リーの呟きに隼人がそう返事をする。


「なんかできるん?」

「ああ」

 隼人は頷くと目を閉じる。


 隼人が息を吸うと、隼人の周りに風が集まり出す。

 そして隼人は深く息を吐き出し呟く。


「“風導(サーチ)”」

 すると一陣の風が吹き、瑠香たちの髪を揺らす。

 すぐに目を開く隼人。


「こっちだ!」

 走り出す隼人。

 瑠香たちはその後を追う。


「隼人、今のは?」

 走りながら一華が隼人に問う。


「風で建物の中を探ったんだ」

「すご、そんなこと出来るんか」

 隼人の答えに驚いたような顔をするリー。


「さっきお前たちを見つけたのもこれだぜ」

「ああ、なるほどにゃあ」

 ティアが納得したように頷く。

 瑠香も素直に感心する。

 能力はそんな使い方もできるのか。


 その時。


「誰だ、てめえら!」

 先程の集団と同じような服装をした一団と遭遇する。

 瑠香たちを見て、先頭の男が声を上げる。


「なぁ、あんたら──」

「“風撃(インバット)”ッ!!」

 リーが話し掛けようとするが、それよりも先に隼人が腕を振り被る。


「ぎゃあああッ!」

 吹き飛ぶ集団。


「隼人、こいつらから話が聞きたいんやけど……」

「わり、つい」

 呆れた顔をするリーに隼人は頭を掻いて言う。


「ま、ええわ」

 リーは前を向きながら言う。


「今ので、釣れたと思うしな」

 リーの言う通り、複数の足音がこちらに向かってくるのが聞こえた。


「ほな、行こか」

「ああ!」

 頷き合うと走り出すリーと隼人。


「にゃは!」

 笑いながらそれに続くティア。


「はぁ……」

 日和も溜め息をつくとその後を追い掛ける。

 それを苦笑しながら追う茉菜。


「瑠香、私たちも」

「うん」

 一華と頷き合うと、瑠香も走り出す。




 広場は大混戦に陥っていた。


「“落星(らくせい)”ッ!」

「ぎゃあああッ!」

 一華が大上段から木刀を振り下ろす。

 吹き飛ぶ襲撃者たち。


 瑠香は一華の背後に迫る影を見つける。

 警告しようと口を開く瑠香。


 しかし、それよりも前に。 


「にゃ!」

 ティアの拳が一華を背後から襲おうとしている者を吹き飛ばす。


「ありがと!」

「いいってことにゃん」

 短く礼を言う一華にウィンクを返すティア。

 そしてまた走り出す二人。


 ほっと息をつく瑠香。

 一華が無事でよかった。

 瑠香も走り出そうとしたその時。


「“風撃(インバット)”ッ!」

「“剛拳(ガンチュアン)”ッ!」


 瑠香の背後から轟音が響く。

 驚いて振り返る瑠香。


 隼人とリーの一撃で壁の一部が崩れていた。


「やるやーん?」

「そっちこそ!」

 拳を打ち合わせる二人。


「ふ、二人とも、建物が崩れてしまいます!」

 焦ったように茉菜が叫ぶ。


 茉菜の言う通り、時折パラパラと建物の破片が落ちてきている。

 これは、少し壊しすぎかもしれない。


「んー? そかそか」

 そう言い壁に手を当てるリー。


「これなら問題ないやろ?」

 そこには鉄製の壁が出来ていた。

 即興で作ったのだろうか。

 だとしたら、かなりの技術だ。


「え、ええ、まあ、そうですけど……」

 困ったように頷く茉菜。


「ちょっとぉ、そこ! さぼらないで!」

 襲撃者たちから逃げ惑いながら、こちらに向かって指を突き付けて日和が叫ぶ。


「お、わり、今行く」

 頭を掻きながら隼人が歩き出す。

 瑠香は少し離れた場所から広間を観察する。


「おや、瑠香もさぼり?」

 いつの間にか瑠香の隣にリーが立ち、こちらを見て言う。


「『も』って……私はさぼりじゃないもん」

「ほーん?」

 片眉を上げて興味深そうに言うリー。


「なんもしてないように見えるで」

「してるの」

 瑠香は口を曲げて言う。


「な、この戦況、どう思う?」

 いきなりそう訊いてくるリー。


「どうって……」

「なんでもええで」

 リーは糸目をこちらに向けて言う。


「……私たちの方が、強い」

「ぶっちゃけたなぁ。でも、その通りやな」

 リーは頷きながら言う。


「敵さんには魄練はおろか、霊装すら使えん奴しかおらん。でも……」

「数が多すぎる」

「そうや」

 瑠香の言葉に頷くリー。


「このまんまの戦い方やったら、いずれボクらは疲弊する。そーなったらまずいやろ?」

「うん」

 首肯する瑠香。


「だから瑠香、キミのとこに来たんや」

「……なんで?」

 瑠香の問いにニヤッと笑い、地面の下を指すリー。


「気付いとるで。キミがこの広場の下の地面徐々に『砂』にしとるの。一気に崩すつもりなんやろ?」

 その言葉に驚く瑠香。


「……気付いてたんだ」

「うん。で、キミがそれをぶっ放さない理由にもな」

 そう言いリーは戦いの中心へ目を向ける。


 瑠香が一気に『砂』を使わない理由。

 それは、仲間がいるからだ。

 このままでは仲間も巻き込んでしまう。


 だが、ここから呼びかける訳にもいかない。

 仲間を呼び寄せれば、敵の注目もそこに集まってしまうかもしれない。

 チャンスは一回きりなのだ。

 外すわけにはいかない。


 しかし、仲間を巻き込んで力を発動させるという選択肢は、瑠香の中には存在しない。

 だから、こうして何もできない状況が続いてしまっているのだ。


「な、ボクが手伝ったろか」

「え?」

 リーの予想外の言葉に驚く瑠香。


「ど、どうやって……?」

「ちょっと耳貸してや」

 内緒話でもするかのように小声でリーが作戦を話す。


「で、できるの?」

「任せとき」

 自信満々に胸を叩くリー。


「じゃ、合図で頼むわ!」

「あ、ちょっと!」

 瑠香は手を伸ばすが、リーは既に走り出してしまう。


「やるしか、ないか……」

 瑠香は覚悟を決めると合図を待った。


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