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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
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夏の自由研究その6 中間報告

 7月18日。

先週各担任から学校アプリ経由で通知があり、自由研究の中間報告の詳細が伝えられた。

提出期限は今日の21時まで。

初回の説明通り、形式はテキストでも、スライドでも、音声や動画でもOKらしい。ただし、グループ単位なので、複数の形式がある場合は、ファイルにまとめなければならない。


先週より慌ただしい雰囲気のある教室にて、俺は机の上に置いたノートPCを開き、資料の最終チェックを始める。


「古暮くん、提出する資料ってもうまとまってたりする?」


横を見ると日代(ひしろ)さんがやってきて、笑顔を見せた。


「いや。一応調べたことは整理してるけど、この時間中にまとめるつもり」


軽く挨拶を交わし、持ち寄った資料をテーブルに並べる。日代さんは大きなiPadを持ってきたようだ。写真やスクショがテキストの間にうまく挿入されており、とても見やすい資料になっている。

俺はビジュアル重視の内容ではないため、テキスト主体でまとめるつもりだ。フローチャートや簡単な図形などを挿入し、わかりやすくまとめていく。

俺と日代さんは概ね進捗が良いため、二人の資料を組み合わせることで、それなりの成果物にはなるだろう。


問題はというと、万和人(まなと)だ。

彼は出会ったときに「進級できれば良い」と言っていたことからわかるように、あまりやる気を出さないタイプだ。

ちらりと後ろを振り返ると、椅子にゆったり座っており、小型のタブレットをいじっている。


「万和人はどれくらい調べた?」

「うーん、まあ必要最低限は」

「ああ、そっか」


彼のタブレットの画面には、オンライン授業に関するメモや学習環境の簡単な写真が貼られていた。

俺や日代さんに比べて内容は薄いが、全くやっていないわけではない。中間発表まで一月しかなかったことを考えると、ギリギリ許容されるレベルの情報量だ。


「提出用ファイル形式だけど」


俺が話を振ると、日代さんはすぐにうなずく。


「私はスライドがいいかな。図や写真も入れたいから」

「わかった」

「二人はどうするの?」

「俺はワードかな。テキスト多めだから」


俺の返事に日代さんは頷き、万和人の方を見る。


「俺は……和人の文章の後に追加させてもらうかな」


万和人は肩をすくめながら応える。


「了解。じゃあ、できたらzipファイルにまとめるから、データをラインに送って」

「オッケー」「わかった」


段取りを終え、データ整理の作業を始める。作業は比較的スムーズに進む。

俺は学習法・目標設定・メタ認知の理論などの情報を整理していく。

日代さんは文房具やデジタル環境・アプリ関連、万和人は学習環境に関しての情報をまとめていることだろう。


そして数十分後。授業ももう少しで終了というところでデータが出揃った。

日代さんはボリューミーで熱心に取り組んでいるのが伝わってくるが、万和人は調べたことを軽くまとめ、感想を書いている。物足りない感がすごい。


「ありがとう。確認しました」


俺は三人の資料を統合して提出用ファイルを完成させる。

完成度をランク付けするなら中の下といったところだろうか。万和人がもう少し頑張ってくれたら良かったのだが、仕方ない。


「これで提出するね」


日代さんは笑顔でうなずく。


「お願い」「頼んだ」


返事を聞き、学校のアプリに自由研究のファイルをアップロードする。

すると三人の名前が一緒に表示され、提出完了の通知が画面に出る。

授業終了までに提出を終えられた安心感が、ほんの少し俺をリラックスさせた。




 帰り際、俺は授業後の日代さんとの会話を回想する。


「無事、中間報告が終わったね」


日代さんは横で軽く笑う。


「うん。協力してくれてありがとう」

「こちらこそ、誘ってくれてありがとね」


お礼を返されてしまう。おそらく俺のほうが恩恵を受けていると思う。


「つまんない授業ばっかりだと思ってたけど、自由研究は悪くないね」

「そう?」

「誰かと協力して目標に向かって進むって、なんかゲームっぽくない?」


日代さんがゲーマー的思考を身につけた。これは喜ばしいことと言える。


「そうだね。ゲームと考えれば楽しくなるね」

「なんか古暮くん、食いつきがすごくない?」

「うん? ーーああ、俺ゲーム好きだから」


そう応えると、日代さんは眉を上げた。


「へえ。どんなゲームやるの?」


俺は高揚する気持ちを抑えつつ、日代さんにゲームの話を始める。

そこからは完全に話が脱線してしまった。


日代さんが一緒でなかったら、俺は夏の自由研究を楽しめただろうか。

知らない人とグループを組み、黙々とそれほど感心のないテーマについて調査する。

IFのシーンを想像しみると、楽しめるとは言い難いのではないか。つまらなくて、適当に調査して中途半端に終わらせてしまうのが筋だと思う。

そんなふうにならなかったのだから、俺は恵まれていると言える。

縁に感謝。そして何より、日代さんに感謝だ。


さて、自由研究はここからが本番だ。10月の成果報告に向けて、気合を入れて行こう。


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