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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
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43/117

家庭科部入部試験

 7月5日の火曜日。

今日も一日授業が終わり、放課後になった。

普段なら文芸部へと向かう時間だが、今日は予定が入っている。

俺は隣の席の琴吹さんに、予定があるから部室には行かないことを告げ、リュックを持って教室を出る。


向かうのは一階の奥の方にある家庭科室だ。

1Bの教室からはかなり離れているが、文芸部の部室に行く距離とほとんど変わらない。

授業ですでに何回か行っているので、場所は覚えている。

放課後に家庭科室に向かうというのは初めてなので、なんだか新鮮な気分だ。


この前、みどり先輩の自由研究の発表を聞き、ぜひ料理仲間になってほしいとこちらから頼んだわけだが、仲間になるには試練をクリアしなければならない。

普段俺は自炊をしているため、よく知られた料理であれば問題なくできるだろうが、マイナーな洋食や他の国の料理をお題として出されてしまったら、作れない可能性がある。

その場合はスマホを使う許可を得るしかないだろう。料理の出来は保証できないが、手際の良さを見せることができれば、なんとかなる可能性はあると思う。


 家庭科室の前まで来て、俺は一度深呼吸をした。

コンコンとノックをする。


「どうぞー」


明るい声が返る。

引き戸を開けると、そこにはみどり先輩の他に、見知らぬ女子が三人いた。


「いらっしゃい、古暮(こぐれ)くん」


まずはみどり先輩が歓迎してくれる。

白地に小さな和柄のエプロン。三角巾からこぼれる髪。

家庭科室の中に立っているだけで、やたらと様になる。


「今日はよろしくお願いします」


頭を下げると、みどり先輩はうん、と頷いた。


「まずはお互いに自己紹介しよっか」

「はい。1年B組の古暮和人です」


名乗りを合図に、俺に視線が集中する。

まず、調理台に寄りかかっていた長身の女子が、ゆったりと前に出た。


「私は3年A組の白石(しらいし)ブラン」


エプロンの下に洒落たシャツ。無駄に姿勢がいい。


「料理は芸術。だが芸術には理論もいる。覚悟はできてるかい?」


まるで舞台俳優のように大げさな語り口をしている。

名前からするとハーフの人だろうか。


「はい。お手柔らかにお願いします」


次に、お団子髪の女子が、勢いよく振り返る。


「2年C組の()春玲(ちゅんりん)ネ!」


元気がすごい。日本語のイントネーションにクセがある。


「火力は正義! 覚えとくネ!」


そして最後に、小柄な女子がにこにこしながら手を振ってきた。


「1-Fの甘野(あまの)くるみでーす。あたしはスイーツが得意なんだ」


印象としては小悪魔系とギャルを足し合わせた感じだろうか。


「よろしく」

「うん。気軽にくるみって呼んでよ。君のことは和人って呼んでいいかな?」

「うん。いいよ」


俺が返事をすると、みどり先輩が口を開く。


「一年生はくるみちゃんだけだから、仲良くしてあげてね」

「先輩ってもしかして、あたしのママ?」


くるみがそんな感想を漏らす。


……濃い。

家庭科部、思ってたよりキャラが濃い。


みどり先輩が軽く咳払いをした。


「はい、自己紹介はここまで。今日は古暮くんのお手前を拝見するのが目的なんだから」


空気が少しだけ引き締まる。俺は改めて姿勢を正した。


「古暮くんは得意料理とかあるの?」

「和食ですかね」

「へえ、私と同じだ」


みどり先輩の目が、わずかに輝く。


「どうして和食?」

「家で教わったのが和食中心だったので」

「なるほどね」


総返事をしながら、みどり先輩は机の上のタイマーを持ち上げる。


「じゃあ、さっそくお題を出します!」


ブラン先輩が芝居がかった仕草で腕を広げる。


「季節を制する者が、食卓を制すのだ!」

「お静かに」


即ツッコミが入る。俺はごくりと唾を飲む。


マイナー料理が来ませんように。

知らない国の郷土料理が来ませんように。


そう願っていると、みどり先輩がまっすぐ俺を見て、


「お題は――」


一瞬の間。


「30分で作れる“夏バテ対策定食”」


……定食か。俺の得意分野だな。


「主菜・副菜・汁物・主食。バランスも見ます」


春玲先輩がうんうん頷く。


「夏は汗かくからネー。塩分・ミネラル大事ヨ」

「見た目も大事だね〜」


くるみがにこにこ言う。みどり先輩が一歩近づく。


「料理の出来はもちろん見るけど、作ってる最中にこだわりポイントを説明してほしいな」


こだわりか。うまく言えるだろうか。

30分で夏バテ対策定食。やるだけやってみるか。

みどり先輩がタイマーに指をかけた。


「制限時間は30分。食材は部室にあるものならなんでもを使っていいよ」


そう言われて、家庭科室の壁際に設置されている冷蔵庫と冷凍庫、広い調理台の上を確認する。

どうやら食材と食器は一式揃っているようだ。

IHとガスコンロのどちらも用意されているので、慣れているIHを使わせてもらおう。

今回は定食なので米を炊く必要がある。一応炊飯器も用意されてはいるが、時間的に鍋を使う方が無難だろう。


「準備はいい?」

「はい」


一通りの確認を終えた俺はそう返事をすると、みどり先輩がカチリとボタンを押す。


「じゃあ、スタート!」


***


タイマーの電子音が室内に響き渡るのを聞き、俺は料理を開始する。


まずは米だ。

真っ先にシンクへ向かい、ボウルに米を計る。

量は四人+αと考えれば2合半が妥当だろう。


「鍋炊きは得意?」


背後からみどり先輩の声。


「はい。普段は炊飯器だよりですが、たまに鍋でも炊いてるので」


ざるを使い、流水でさっと米を研ぐ。

そして次にボウルで研いで、最初の水はすぐ捨てる。

軽くかき混ぜ、白濁した水を流す。二、三回繰り返し、透明度が上がったところで手を止める。


正直、何分研ぐとかは決めていない。米の具合を見て、手触りで判断している。


「吸水は?」

「……三分くらい、ですかね」

「へえ」


少しだけ楽しそうな声。

手頃な鍋に水を入れる。目盛りはない。

指を入れて第一関節あたり。いつもの高さ。


「計量カップ使わないの?」


くるみが不思議そうに覗き込む。


「使わなくてもだいたい合います」


今回使う鍋は家にあるのと同じくらいなので、大丈夫だろう。


「だいたい!?」


春玲先輩が笑う。


鍋を火にかける。強火で一気に沸騰させる。その間に他の準備だ。


まずは主菜の仕込みをしよう。品目としては、豚しゃぶの梅おろし和えだ。

冷蔵庫から豚ロースの薄切りを取り出す。脂身がほどよいものを選ぶ。


「ももじゃなくてロース?」


ブラン先輩が腕を組む。


「脂の甘みも欲しいので。夏バテ対策でも、さっぱりしすぎると食が進まないかなと」


我ながら、言語化がふわっとしている。


鍋とは別に湯を沸かす。ぐらぐら煮立たせない。火を止めてから肉を一枚ずつくぐらせる。


「温度計は?」

「使ってません」

「これも感覚かい?」

「そうですね」


しっかり見ていれば、肉の色がふわりと変わる瞬間はわかる。

火が入りすぎる前に引き上げ、冷水に落とす。ぎゅっと締め、ざるに上げて水気を切る。


すばやく大根をおろし、梅干しを叩く。包丁の背でたたく音は軽快だ。


「梅はクエン酸で疲労回復を狙います。豚肉はビタミンB1が豊富なのでーー」


ちょっとした説明はできる。だが何ミリ刻みが最適かとか、塩分濃度が何%かとか、そこまでの玄人には至っていない。

大根おろしと梅を混ぜ、少量のしょうゆで味を整える。肉と和え、仕上げに刻み大葉を散らす。


色合いは悪くない。赤と白と緑。夏らしくて、見栄えは良いだろう。


次は副菜だ。こちらは簡単なものでいく。


きゅうりを板ずりしてから、斜め薄切り。軽く塩を振り、水気を出す。


「塩は何グラム?」


みどり先輩が横から覗き込む。

思ったより距離が近い。


「……ひとつまみ、です」


「具体的に何グラムか答えられる?」


俺は言葉に詰まる。ここらへんも感覚でいい塩梅はこれくらいだと定めているからだ。


春玲先輩が腕を組んでいる。その眼光はどこか鋭い気がする。


水気を絞り、塩昆布と和える。ごまを振るか迷ってやめる。シンプルに行こう。


最後は汁物だ。


豆腐を包丁で角切りにしていく。

みょうがを素早くかつ丁寧に薄く刻む。


鍋に水を張り、火にかける。


沸くのを待つ間に、だしの素を取り出した。


「だしパック?」


くるみが首を傾げる。


「はい。家でもこれ使ってます。手軽なので」


袋を破り、中身を鍋に入れる。軽くかき混ぜると、ふわっと出汁の香りが立った。


春玲先輩が頷く。


「おー、いい匂いネ」


豆腐を入れて温め、火を弱める。味噌をお玉に取り、箸で少しずつ溶かす。

計量スプーンは使わない。鍋の様子を見ながら、いつもの感覚で量を調整する。


「味噌の量は?」


みどり先輩の質問。


「だいたい、これくらいですかね」


味見して、ほんの少しだけ足す。


「また、感覚だよりだ」


くすっと笑う声。


最後に火を止め、刻んだみょうがを散らす。湯気と一緒に、さっぱりした香りが立ち上った。

横目で米の鍋を見る。沸騰してきた。


吹きこぼれそうになる前に弱火へ。蓋を少しずらして蒸気を逃がす。


「火加減、慣れてるネ」

「場数だけはありますからね」


焦がしたこともある。芯が残ったこともある。

今は音でわかる。ぷつぷつという水分が減る音。少し静かになったら火を止める。


蒸らしは三分。タイマーをちらりと見る。残り六分なのでギリギリだ。


料理が出来上がったので、盛り付けを行う。

白い皿に豚しゃぶを中央へ。梅おろしをこんもり。大葉で高さを出す。

浅漬けは小鉢へ。

味噌汁を椀に注ぐ。豆腐が崩れないようにそっと。


最後に米。鍋の蓋を開けると、湯気が立ち上る。

しゃもじを入れると、ふっくらとした米粒がほぐれる。失敗しなくて良かった。


茶碗によそって、箸を箸置きに置いたところで、


「完成です」


タイマーがタイミングよく鳴り響いた。


***

 みどり先輩がタイマーを止めて、料理の出来栄えを観察する。

梅のさっぱりした香りと、味噌汁のやわらかい湯気。そこに炊きたての米の匂いが混ざっている。


「おー、ちゃんと定食になってるネー」


春玲先輩が定食を興味深そうに覗き込む。


「主菜、副菜、汁物、主食。まさにテーマ通りだ」


ブラン先輩が腕を組み、芸術作品を見るような顔をする。

くるみはというと、すでに椅子を引いて座る準備をしていた。


「早く食べよ〜?」

「まだ見た目の評価が終わってないよ」


みどり先輩が苦笑する。

しかし、くるみが「早く早く!」と急かしたので、俺は全員分の定食を盛り付けてサーブする。


そして、家庭科室の空気が、ほんの少しだけ静かになり、


「いただきます」


四人の掛け声が揃う。

彼女らは、まず味噌汁を一口すする。


「ふう」


ブラン先輩が息を漏らすが、他は特に反応無し。

そして全員が主菜に箸を伸ばす。


豚しゃぶを梅おろしごとひと口。

春玲先輩の表情が、一瞬だけ止まる。


何か引っかかるものでもあったのだろうかと不安になる。

しかし、料理に集中しているようで、声をかけるのはためらわれる。


続いて、副菜のきゅうり。しゃくっと軽い音がした。

くるみの表情が明るくなる。これは手応えありか。


最後にまた味噌汁を一口すすり、ふっと息を吐く。


「うん。とっても美味しいよ」


そのみどり先輩の一言で、肩の力が一気に抜ける。

春玲先輩は豚しゃぶが気に入ったようだ。


「さっぱりしてるのに肉の味がちゃんとあるネー!」


ブラン先輩は味噌汁を飲んで頷く。


「みょうががいいアクセントだ。爽やかな夏の一杯だね」


くるみは浅漬けをぽりぽり食べている。


「これ止まんないやつだ〜」


三人が普通に食事を始めてしまい、俺は立ったまま様子を見るしかない。


みどり先輩はもう一度、主菜を食べた。


「さっぱり食べられる構成で、夏バテ対策っていうテーマには合ってるね」


その感想にほっとした。


「古暮くん」

「はい」

「この料理は70点かな」


思ったより具体的な数字が出て、思わず顔を上げる。


「……70点ですか?」

「うん」


みどり先輩はにこっと笑った。


「全部ちゃんと美味しいし、バランスもいい。定食として完成してる」


そこで少しだけ声を柔らかくする。


「でも、説明がふわっとしてる」


……やっぱりそこか。


「塩の量も、味噌の量も、“このくらい”だったでしょ?」

「はい」

「それで美味しいのは、場数がある証拠」


みどり先輩は箸を置き、まっすぐこちらを見る。


「でもね、それを言語化できるようになったら、もっと料理上手になるよ」


優しい言い方だった。否定されている感じは、不思議としない。


「だから70点。伸びしろ込みだね」


少しだけ、楽しそうな顔をしている。この感じ、結果は……


「合格。家庭科部へ歓迎します」


胸の奥がじんわり熱くなる。


「ありがとうございます」


そう言うと、後ろからぱちぱち拍手が起きた。


学弟(シュエディ)、歓迎するネ!」


春玲先輩が元気よく立ち上がる。


くるみが家庭科室を出ていき、まもなく戻ってくる。

その手にはお盆を持っており、透明なカップが乗せられている。


「歓迎のデザートだよ」


テーブルに並べられたのは、小さな透明カップ。

底に入っているのは、淡く黄色いレモン寒天。

その上に、色の違うフルーツが三種類。


オレンジ色のマンゴー、赤いイチゴ、緑のキウイ。


最後に、ちょこんとミントの葉が一枚乗っている。


夏っぽい、爽やかな見た目だった。


「可愛いでしょ?」


くるみが胸を張る。俺は一瞬戸惑いながらも頷く。


「お昼に作って冷やしといたんだー」


春玲先輩がいち早くスイーツを受け取り、スプーンを持つ。


「いただきマース!」


一口食べて、すぐ笑う。


「酸っぱあま! 面白いネ!」


ブラン先輩も続く。


「レモンの寒天にフルーツか……うん、軽やかな味だ」


くるみが俺の前にカップを置いた。


「はい、和人の分」

「ありがとう」


スプーンで寒天をすくい、口に含む。

寒天はぷるんとしていて、レモンの酸味が爽やかだ。

フルーツの甘さとよく合う。


「美味しい」


素直に言うと、くるみがにこっと笑った。


「良かった」


みどり先輩は俺の隣の席に座って食べ始める。


「んー、さっぱりしてていいね」


少しだけ満足そうな顔。それから、ちらっと俺を見る。


「甘いものは別腹だよね」


先輩が耳元で囁いてくる。ほんのりいい匂いがする。

俺は一拍遅れて相槌を打ち、目の前のスイーツを平らげる。


「古暮くん」

「はい」

「今日は来てくれてありがとう」

「こちらこそ、入れてもらえて嬉しいです」


俺がそう答えると、みどり先輩は少しだけ目を細めた。


「家庭科部ってね、料理だけやってる部活じゃないんだ」


スプーンで寒天をすくいながら続ける。


「料理が多いのは確かだけど、家事全般かな。掃除とか、洗濯とか、保存食作ったりとか」


「この前は包丁研ぎ大会だったネ!」


春玲先輩が元気に割り込む。


「大会なんですか?」

「もちろん、大会ネ!」


力強く言い切られた。ブラン先輩が肩をすくめる。


「ただ皆で黙々と砥石で研いでただけさ」

「研ぎ比べしてたじゃない」


みどり先輩が笑う。


「切れ味テストで新聞紙スパスパ切ってたヨ!」


……なんだろう。


想像していた家庭科部より、だいぶ自由だ。

お題を出されるくらいだし、タフな部活かと身構えていたが、そうではないようだ。

文芸部と似たような感じだろうか。


くるみがスプーンを振りながら言う。


「あと掃除もやるよー。家庭科室って油とか粉とか飛ぶからさ」

「なるほど」

「この前は換気扇分解したネ」

「それは春玲がやりたいって言っただけだよ」


ブラン先輩が冷静にツッコむ。

四人の会話は、妙にテンポがいい。

長い間一緒に過ごした人たちの空気だ。


俺はレモン寒天をもう一口食べながら、その様子を眺める。

みどり先輩がふとこちらを見た。


「古暮くん」

「はい」

「家庭科部はね、火曜日と金曜日に活動してるの」

「週二ですね」


さすがに毎日ではなかったか。運動部とは違い、文化部は大抵こんなものだろう。


「うん。料理を作ることが多いけど、テーマは毎回違うよ」


指を折りながら数え始める。


「和食の日とか、洋食の日とか」

「火力の日!」


春玲先輩が大声を発する。


「それは中華の日でしょ」

「あとスイーツの日もあるよ〜」


くるみが楽しそうに言う。ブラン先輩がゆっくり頷く。


「四人ともちょうど良く得意分野がバラけているおかげで、多彩な料理を楽しむことができるのさ」


なんだか格好つけた言い方だが、言っていることに納得はできる。

みどり先輩が笑いながら付け加える。


「まあ、要するになんでも楽しくやってるってこと」

「それは良いですね」


正直な感想だった。


「でしょ?」


みどり先輩は少し嬉しそうだ。


「古暮くん、これから一緒に活動してくれる?」


そう言われて、俺は軽く頷く。


「はい」


春玲先輩が急に身を乗り出してきた。


「じゃあ次の金曜、火力パーティーネ!」

「火力?」

「そう! 私の腕前を披露してあげるネ」


くるみがぱっと手を挙げる。


「はい、あたしはスイーツがいいです!」

「いや、ここは本格フランス料理を」


ブラン先輩まで乗ってきた。


みどり先輩が少し困った顔をする。


「古暮くんには料理の基本とか栄養学的なところを教えるのがいいんじゃないかな?」


そう言って俺の方に視線を向けてくる。

俺はみどり先輩に声をかけた理由を思い出す。


「そうですね、まずは基礎的なところを学びたいです」

「うん」


みどり先輩は軽く返事をする。


「じゃあ、当分は座学メインだね」

「はい。お願いします」


俺は頭を下げる。


「決まりネ。まあ、座学の合間に料理作る分には問題ないネー?」

「もちろん」


みどり先輩が快諾したので、春玲先輩は満足そうに頷く。


「じゃあ、あたしも何か作ろー」


くるみも元気よく言う。


「私も」


ブラン先輩も同調する。


家庭科室の窓から、夕方の光が差し込んでいる。


放課後は文芸部の部室に行くのが当たり前だった。

でもこれからは、ここが俺のもう一つの居場所だ。


俺はそんなことを思いながら、賑やかな声が止むまで耳を傾け続けた。

文芸部とは全く雰囲気の異なる家庭科部との出会いです。濃いキャラが複数人登場しましたね。

楽しい家庭科部の行く末を見守ってください。

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