表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
PR
18/117

地下ライブ

 5月28日の土曜日。

駅前へと続く夜の通りを、一人で歩く。

昼にごったがえしている人の群れは、思ったより早く薄れていた。


時刻は六時過ぎ。普段はあまり出歩くことのない通りを歩きながら、つい数週間前のことを思い出す。


花音らと行った植物園で、偶然ピンク色の手帳を広う。

中を開くと、「あくび少女に祝福を」というタイトルで、とても独創的な歌詞が書かれていた。


落とし物センターで出会った、手帳の持ち主の少女ーーナノハさん。

彼女はRosette(ロゼット)というバンドでギターボーカルをしているという。


手帳を返したお礼に渡されたのが、今日開催されるのライブのチケットだった。


雑居ビルが並ぶ一角に、控えめな明かりの看板が見えてくる。


ライブハウス『Green(グリーン) Box(ボックス)』。


足を止めて確認する。その奥には地下へ続く階段がある。


「地下か」


手すりを掴んで、階段を下りていく。 耳を澄ましてみる。

キックやベースの抑えめな音が聞こえてくる。

さらに降りていく。一段ごとに、音がはっきりしてきた。


階段を降りた先の黒い扉の前に立つと、胸に直接振動が届いてくる。


すごいーー心地よい感覚が芽生える。なんだか久しぶりだ。

今までライブハウスを訪れたときは、隣に誰かいたが、一人で来るのは初めてだ。

少し緊張するが、引き返すことはない。

最近読んだライブものの漫画のシーンを回想しながら、ドアを開ける。


 ロビーは暗く、独特の空気に満ちていた。

客はまだまばらで、開演前の静けさが残っている。


入口脇のカウンターへ向かい、チケットを差し出す。


「ドリンクはどうしますか?」


渡されたメニューを見ると、数種類の味があるようだ。

一瞬迷って、無難にオレンジジュースを選んだ。

プラスチックのカップを受け取る。その際、手首にスタンプを押された。


お礼をして、ドリンクを片手にロビーの奥へ進む。

黒い両開き扉の向こうがフロアになっていた。


後方の扉を開けると、音が一気に押し寄せてきた。 どうやら終盤だったらしく、最後の一音が鳴り切ったところだった。


「ありがとーう!」


ギターを肩に掛けた男性ボーカルが観客に手を振る。 フロアには拍手と歓声が広がり、空気がぱっと明るくなる。


前のバンドがステージ脇へと引き上げるのを合図に、 観客の何人かはドリンクを求めて後方のロビーへ流れていった。


入口近くの混雑を避け、俺は壁際に身を寄せる。 改めて、どこで聴くのがベストかを考えた。


ステージ正面は迫力があるが、人が密集していて音が潰れやすい。 最前列は論外。近すぎて定位が崩れるし、視線も気になる。 後方は全体が見渡せるが、入口からの人の出入りで落ち着かない。


視線を右へずらす。 壁際の空いた場所が目に入った。 人の流れから外れていて、ステージも斜めから見える位置だ。


ここなら音が拾いやすい、と感じた。


スピーカーの角度を確認する。 直接音が届くラインに入っていて、反射も少ない。 輪郭がはっきりするタイプの場所だ。


決めた。 カップを持ち替え、その場所に立つ。


転換が始まり、スタッフが慌ただしく動く。 ドラムの位置が微調整され、アンプの電源が入る音が響く。 無音ではないのに、さっきまでの熱気とは違う落ち着いた時間。


壁にもたれ、ドリンクを一口。氷が軽く鳴った。


周囲の会話が断片的に耳に入る。 次のバンドの期待、さっきの演奏の感想。 居心地は悪くない。


ステージ中央にマイクが一本、立てられる。


来るぞ、と自然に背筋が伸ばす。


俺は視線をステージに固定したまま、 静かに、その瞬間を待った。



「こんばんは! Rosettt(ロゼット)です!」


そう言ってマイクを握ったのは、目的の人であるナノハさんだった。


「さっそく一曲目いきます!」


短く息を吸って、視線を上げる。

その瞬間、空気がピンと張った。


Miraiz (ミライズ)Sky(スカイ) Fragment(フラグメント)


静かなイントロ。

未来を切り取ったみたいな、透明な曲。


〈砕けた空のかけら

拾い集めて 前を向く〉


偶然にも原曲は聞いたことがある。歌詞はうる覚えだが。

クールビューティーな雰囲気で最近人気上昇中の女子二人グループ、Miraiz の代表曲。 楽曲の難易度はそれほど高くない印象だった。


Rosetteの演奏はというと、普通にうまい。

リードギターやベース、キーボードの三人は完璧。一方でナノハさんとドラムの子の演奏に少し粗を感じた。


パチパチパチ。気づいたら、俺は拍手していた。周りも同様だったので安心。



「次は、がらっと雰囲気を変えて、弾けます!」


ナノハさんがそう言ってにこりと笑う。


「二曲目は……KiraraのKira(キラ)-Love(ラブ) MAX(マックス)!」


イントロが鳴った瞬間、客席がざわつく。


「えー、これっ!?」「マジっすか?」


驚きの声がいたるところで上がり、オレンジ色のペンライトが揺れる。


近くの観客たちが浮足立つ。俺も驚きを隠し得ない。

まさか俺の推しであるKiraraの曲が出てくるとは思いも寄らないわけで。


<キミの寝ぼけた顔が好き

「おはよう」ぷるんと揺れる唇が好き

ストっと静かに座る腰が好き

伊達メガネ スラリと伸びる鼻が好き>


Rosette版の『Kira-Love MAX!』は、本家より少し大人しい。


<「おいしい!」もぐもぐ食べる口が好き

リズミカルに動くあごが好き

パチっと瞬いたまつ毛が好き

キラキラ輝く瞳が好き>


いや、そんなことはない。音のバランスが良くて、ちゃんとこだわりが詰まっている。


〈好き キミの何もかもが好き♡〉


ナノハさんは全力で楽しむように歌っている。


<ドッカーン!(ドッカーン!) 好きの大爆発 (ワッフー!)

赤い風船♡ ドキドキ止まらない

Kira-Love MAX!(MAX!) 大大大大大好き!>


めちゃくちゃ明るい表情で笑う彼女。意外な表情に心が揺さぶられる。

とても楽しい。周りに合わせて、俺も大きな声でコールする。


ラストサビの「大大大大大好き!」では、会場が一気に明るくなった。

かなり盛り上がったのではないか。


===

『Kira-Love MAX!- Kirara』

【Verse1】

キミの寝ぼけた顔が好き

「おはよう」ぷるんと揺れる唇が好き

ストっと静かに座る腰が好き

伊達メガネ スラリと伸びる鼻が好き


【Pre-chorus1】

「おいしい!」もぐもぐ食べる口が好き

リズミカルに動くあごが好き

パチっと瞬いたまつ毛が好き

キラキラ輝く瞳が好き


【Chorus1】

好き キミの何もかもが好き♡ (フッフー!)

ドッカーン!(ドッカーン!) 好きの大爆発 (ワッフー!)

赤い風船♡ ドキドキ破裂しそう

Kira-Love MAX!(MAX!) 大大大大大好き!


【Verse2】

サラサラたなびく髪が好き

スラリと伸びた背中が好き

六つに割れたお腹が好き

たくましい力こぶ 腕が好き


【Pre-chorus2】

「大丈夫?」差し伸べてくれた手が好き

泣いたら貸してくれた胸が好き

「よしよし」テノールの声が好き

「また明日!」駆け出す足が好き


【Chorus2】

好き 性格も容姿も背景も好き♡ (フッフー!)

ザッパーン! 好きの大洪水~~~ (フーワッフーワッ!)

理性の堤防 乗り越えてくよー

Kira-Love MAX! 大大大大大好き!


【Bridge】

こんなに『好き』を伝えてるのに

どうしてキミはツレナイのー?

このままじゃもしかしたら

嫌いになっちゃうかも……なんてね テヘ(。•ω<。)


【Final Chorus】

好き キミの何もかもが好き♡ (フッフー!)

ドッカーン!(ドッカーン!) 好きの大爆発 (ワッフー!)

赤い風船♡ ドキドキ破裂しそう

Kira-Love MAX!(MAX!) 大大大大大好き!


好き 性格も容姿も背景も好き♡ (フッフー!)

Kira-kira-rin! 好きの流星群☆ (ワッフー!)

「好き」が届けばkira-happy♪

Kira-Love MAX!(MAX!) 大大大大大好き!

大大大大大好き!!!

===


「ラストはオリジナル曲です」


 さっきとは違い、ナノハさんの声が、少しだけ低くなった。

これまでの2曲はカバー曲だが、どうやら次はオリジナル曲らしい。

これは楽しみだ。


<爽やかめっちゃ短い髪

「おはよ」って笑う ちょい低めの声>


軽いリズム。

だけど、歌っている内容は真逆に真剣だ。


野球に打ち込む誰か。

追いかけたいけど、踏み込めない距離。


〈たとえ今は届かなくてもいい

わたしはわたしのビートを鳴らす〉


――俺は、なぜか目を逸らせなかった。


応援する側の気持ち。

報われないかもしれない想い。

思っていたよりも、心に来るものがある歌詞だった。


Rosetteの演奏が止み、拍手が起きる。

盛り上がりは前の曲には劣るが、ちゃんと称賛の込められた拍手だと感じた。


===

「無限大(ハート) - Rosette」

【Verse1】

爽やかめっちゃ短い髪

「おはよ」って笑う ちょい低めの声

ジャージ姿で走る横顔に

うっとりしちゃう〜 Ah...


帽子の下で光る鋭い目

「うめぇ」って弁当がっつく顔

振り向けば首筋に日焼けの跡

反則級どストライク


【Pre-chorus1】

泥だらけでも真っ直ぐ前見てる

キミの目指す場所はどこ?

いつも見てる いつも応援してる

You can do it! (you can do it!)


【Chorus1】

さあSwing! バットを振り抜いて

キミはグラウンドでリフを刻んでる

得意な球を見極めて かっとばせ

空に向かってホームランボールを


Shine! 夢を追うその背中

「頑張れ!」 ストレートに投げ込んで

あともう一球 今はピアニッシモで

I love you シグナルをおくっちゃう


【Verse2】

朝 坂道で立ち止まった私

「飲む?」ってボトル差し出したキミ

制服姿 不安そうな顔に

鼓動高鳴り ますますsick uh...


【Pre-chorus2】

試合後 悔しそうに唇を噛んだキミ

全力出したけど 敵わなかった

まだ終わらない その悔しさバネにチェンジ

Keep your flame! (keep your flame!)


【Chorus2】

Ring! ギターの音が鳴り響く

わたしの世界もスパークしてく

彼がホームランなら 私はリフレイン

どっちも全力、全開で!


Loud! キミに届くように

エフェクト全部オンにして叫ぶよ

“無視っちゃいやーよ”の気持ち乗せて

Die hard love 無限大ハート!


【Bridge】

「誰かと付き合ったりしないの?」

ってさりげなく探り玉を入れてみる

「今は野球が恋人」って

またボール玉 そらしてばっかりじゃん?


【Final Chorus】

Fly! 空を見上げてるキミ

その背中、いちばん近くで見てる

たとえ今は届かなくてもいい

わたしはわたしのビートを鳴らす


Shine! 夢を追う背中に

「頑張れ!」を今日も投げ込んで

あともう一球 これはクレッシェンドで

I love you! 無限大ハート!

===


 俺はフロアを退出しながら、ライブを振り返る。

Rosetteメンバーの楽器の割当と見た目の印象はこんな感じだ。


ナノハ:ギターボーカル 一見大人しそうだけど、かなり元気で明るい。

リオ:リードギター 目付きも音も鋭い。演奏はプロ。

ラブ:ドラム モデルのようなビジュアル。華やかに支えている

ミユ:ベース 存在感があり、全くブレない。

サヤ:キーボード 印象は薄いが、演奏は上手い。器用そう。


Rosetteの演奏は、全体としてはうまくいった印象だ。

ただ――Miraizの『Sky Fragment』で、引っかかるところがあった。


Aメロが終わり、曲が一段持ち上がるはずのPre chorus1の頭。

ナノハさんのギターが、ほんのわずかに先に出た。 些細なミスだが、弾いている側なら、確実に分かる種類のやつだった。

それに、ドラムのラブさんはテンポが一定ではなく、ところどころで揺らいでいたと思う。


考察を深めつつお手洗いに行き、ロビーのイスに座り時間を潰した。

物販の前を通り過ぎる人の流れを眺めながら、

さっきの演奏を頭の中で反芻する。


メンバーの雰囲気は普通か。音の作り方や、曲の選び方はこだわりがあるのだろうか。

とらえどころがないが、曲の選定は誰がやっているのだろうか。ナノハさん、それともリードギターのリオさんだろうか。


そう頭を悩ませていると、出演者用の通路からRosetteのメンバーたちがばらばらに出てきた。

その途中で、ナノハさんとリオさんが足を止める。


「Pre chorus1の入り、早かった」

「ごめん」

「簡単な曲なんだから、気をつけて」

「うん……」


短いやり取り。周りのメンバーは気づかず去っていく。

俺はその場面を傍から眺めた。リオ さんは厳しい人なのだろう。


それから彼女はそっけない挨拶をしてナノハさんと別れた。


フロントが落ち着きを取り戻す。

周りに人がいないのを見計らい、俺はお目当ての人であるナノハさんに声をかけた。


「あの、こんばんは」


彼女は振り向き、「あっ」と声を上げる。


「来てくれたんですね」

「はい」

「嬉しいです。今日のライブ、楽しんでいただけましたか?」

「とても楽しかったです」


俺は即座に返事をする。ひさびさのライブハウスだったけど、来た甲斐があった。


「あの」


一つ聞かなくてはいけないことがある。そのためにロビーで待っていたのだから。


「2曲目、Kiraraでしたけどーー」


『Kira-Love MAX!』は結構恥ずかしい歌詞だと思うのだが、それをあれほど全力で歌い切るなんて、なかなか肝が座っているというか、できることではない。並々ならぬ思い入れがあると見た。


「もしかしてナノハさん、Kirara好きなんですか?」


すると、ナノハさんは一瞬だけ驚いて、それから、ぱっと笑った。


「はい! 大好きです!」

「やっぱり」

「わかります?」

「もちろん。好きじゃないとあんなに全力でできないと思いますよ」

「あはは。それもそうですね」


ナノハさんは口に手を当ててくすりと笑う。


「音づくりも凝ってましたね」

「えっ、わかりますか? めちゃくちゃ嬉しい!」


ほんの少し前まで張り詰めていた肩の力が、一気に抜けたのが分かった。


「俺もKirara大好きで、最推しなんです」

「えっ、ほんとに? すごい、偶然。私もです」

「おお」


思わず驚きの声が漏れてしまう。まさか彼女もKiraraが最推しだったとは。こんな偶然、そうそうあるものではない。


「私、ああいうキラキラした曲をやりたくてバンド始めたんです」

「なるほど」

「歌ってると楽しいのはもちろんですし、力が湧いてくるんですよね」


その言葉に、俺はさっきのステージを思い出す。

確かにあのときのナノハさんには、活力がみなぎっていた。


「わかります。俺も不安な時とかに口づさんで、元気をもらってます」

「わー、同じだ。ふふ」


ナノハさんはにこにこと笑いながら相槌を打つ。


「Kirara好きの人がいて嬉しいな」


そう言って、ナノハさんはさらに近づいてくる。俺もオタクトークをするべく、体を寄せた。


どういう思いで曲を選定したか。ライブの構成。意識したサウンド。Kiraraの楽曲の特徴と傾向など。


ライブ後の遅い時間であったため、満足に話はできず、あっという間に時間が過ぎてしまった。


「あの、またどこかでお話しませんか。全然話足りなくて」

「ですね。自分も消化不良です」

「じゃあ、連絡先交換しましょうか。ラインやってますか?」

「はい、やってますよ」


スマホを差し出し、ラインを交換する。


「ありがとうございます。また連絡しますね」

「はい。待ってます」


そして俺たちは軽く挨拶を交わし、ロビーの入口前で分かれる。

珍しい出会いもあるものだと興奮しながら、俺は帰路についた。



 翌日の昼過ぎ。自室でリラックスしていると、スマホがぶるっと震えた。

ラインの通知。送り主は……ナノハさんだ。

昨日は夜遅くになってしまったため連絡はしなかった。

そろそろメッセージを送ろうかと思っていたところでのことだ。


〈ナノハ〉

古暮さん

昨日はライブに来てくれてありがとう(^^)

話し足りなかったので、もっとお話したいです!


俺は少し考えてから、メッセージを打った。


〈和人〉

こちらこそありがとう

楽しい時間でした


少し間を空けて、続ける。


〈和人〉

あのさ

俺たち、たぶん同い年くらいだと思うんだけど

よかったらタメ口で話さない?


送信してから、ほんの一瞬だけ不安になる。

フランクすぎたか、と。


でも、すぐに返事が来た。


〈ナノハ〉

いいよ!

気楽にいこう!


画面を見て、少し肩の力が抜ける。


〈和人〉

俺のことはカズトって呼んで


〈ナノハ〉

了解!


〈和人〉

じゃあ、改めて

ライブ誘ってくれてありがとう

ナノハの歌、めっちゃよかったよ


変に飾らない言葉を選ぶ。


〈ナノハ〉

え、ほんと?

ありがとう

正直ちょっと緊張してたから、そう言ってもらえて嬉しい


昨日、会場で見た光景が頭をよぎる。

一曲目のミスは緊張が原因か。それには触れないでおく。


〈和人〉

緊張してるようには見えなかったけどな

ライブハウスの空気、似合ってたと思う


少しして、ナノハからスタンプが一つ届いた。

シロクマの照れた顔のやつだ。


〈ナノハ〉

そういえばカズト

一人でライブ来るの、初めてって言ってたよね?


自然に名前で呼ばれた。

こっちのほうが、しっくりくる。


〈和人〉

うん

基本は誰かと一緒だった

昨日が初ソロ


〈ナノハ〉

ほんと? 嬉しいな!

結構真剣に聞いてくれてたから、音楽好きなんだなーって伝わってきたよ


「伝わってきた」という言葉に、少しだけ驚く。


〈和人〉

父が音楽やってるから

その影響で構えてしまうのは仕方ない


〈ナノハ〉

すごい!

音楽家の家系だ


それから何度かやり取りを交わし、学校の話題になる。


〈ナノハ〉

カズトって、どこの学校?

愛野町?


〈和人〉

うん

県立北高校


〈ナノハ〉

え、うそ? じゃあめっちゃ頭良いじゃん?


〈和人〉

いや。受かったのはたまたまだ


〈ナノハ〉

ちょっと謙遜しないでよ。入れてる時点で勉強ができるのは確定じゃんか


そう言われてふと考える。

今年の県立北高校の倍率は4倍くらいだったか。県全体の平均は2倍くらいだろうから、断然高くはある。

もっと自信を持った方が良いだろうか。


〈和人〉

そうかもな


〈ナノハ〉

すごいね

私は比べ物にならない


〈和人〉

ナノハはどこの学校に通ってるんだ?


ストレートに聞いてみる。答えるのを渋られるかと思ったが、そんなことはなくすぐに返事があった。


〈ナノハ〉

私は芸能高校だよ


〈和人〉

へえ、結構近いじゃん

最寄り駅は愛表駅?


〈ナノハ〉

そ。Green Boxにも通いやすい


もしかしたら隣町の愛華町かと思ったが、まさかの芸能高校か。

芸能高校は駅の南東に2キロほど行ったところにある。

北高校とは駅を挟んでちょうど反対方向で、距離もそれほど変わらないところに立地している。


〈和人〉

それはいいな

練習も捗りそうだ


〈ナノハ〉

まあね


その後もだらだらと会話を続け、


〈ナノハ〉

ごめん

この後用事あるから、またね


ナノハがチャットを切り上げる。

「また」と書いてあるところ、この関係がこれっきりではないとわかる。


〈和人〉

OK

また


スマホを伏せて、息を吐く。

ナノハと話すのは、どこか心地よい。

もっといろいろ聞いて、仲を深めていきたい。

ついでに音楽の知識も深めていきたいと思う。


ヒロイン追加。今後に期待です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ