閑話 文学少年のたわいない休日
日常回です。
五月中旬。とある休日の朝。
目覚ましが鳴り、いつものように七時に起きた。
妹と朝食をサッと済ませて部屋に戻った。
まず一番最初に行うのはネットでラノベ新刊のチェックだ。そして次はミステリー小説新作のチェック。からの新作アニメのチェック。三段攻撃!
それが終わると家を出て、二十分ほどランニングをする。中学校からの名残で、朝ランは日課になっていた。家を出た少し先にある交差点を曲がり、商店街の方に走っていく。晴れていて、風が心地よかった。
家に帰って、再びネットを開き、俺の一番お気に入りである歌手『Kirara』の最新情報を集め始める。ツイッターやユーチューブの動画、彼女のブログなどを確認する。
よし、一通り調べ終えた。
ヘッドフォンを装着して、再生ボタンを押す。
<足元を見てばかりじゃなくて
ほら、空を見上げてごーらん♪>
感慨に浸って午前を過ごした。
昼食は外食をすることにした。明里は午後から用事があるらしく、出かけていってしまった。
どこに行こうか少し悩んだが、結局マクドに行くことにした。
自転車を北東に走らせる。商店街を通り過ぎ、すぐにマクドについた。家から十分かかっていない。
窓際の席に座り、街の風景を見る。
今日の登場人物は、はしゃぐ子供にメッと叱る母親と、その傍で、ははっと笑う父親。
手を繋いで歩くラブラブなカップル。
足元のおぼつかない老人。
バリエーションに富んでいた。特に何も起きない日常風景だ。
適当なバーガーを二つとフライドポテト、ドリンクを平らげたあと、俺は立ち上がった。
ショッピング、娯楽、観光。この街には本当に何でもある。とはいえまだまだ発展途上だ。
都会は店の数も人の量もここより格段に多い。
マクドから南東に自転車を漕いで十数分。
大通りを超えて少し進んだところにある大型ショッピングモール『LUCUA』に到着した。
地下の駐輪場で自転車を止める。
ここは、地下一階から地上三階まであり、買い物、食事、娯楽と、すべてが勢揃いの万能建築物。一生暮らせそうな建物である。
家、マクドのやたら高い看板、LUCUAの位置を繋ぐと正三角形になるので、いつも方角の目印にしている。
俺はよくここ、LUCUAの本屋に来る。モールの二階の一角に位置するこの本屋は、とても広く、品揃えも豊富だ。
新刊のラノベや、ミステリー本が出ていないかを見るために、基本は週一で通っている。
入り口付近にレジがある。
そこから、児童文庫、ライトノベル……ミステリーや純文学という感じで、ジャンルごとに本が並べられている。
いつものごとく、キョロキョロしながら本屋の奥に進んでいく。
ラノベやミステリー以外にも面白そうな本があれば手にとって、あまり時間をかけずにぱっと見をする。
そこで、これ面白いな、もっと知りたいなというものがあったなら、俺は本の購入を惜しまない。
そのせいで俺の部屋の半分ほどは、本で占領されている。
電子書籍も活用してはいるが、ものによっては紙で持っておきたいものがあるため、常にスペースが圧迫されているのが最近の悩みと言える。
数十分後。
ピッピッ。購入する本のバーコードを店員さんが読み取っている。
「3,030円になります」
「eマネーで。ポイントも使います」
「はい。いつもありがとうございます」
大学生の店員さんが笑顔でレシートを渡してくれる。週一で通っているので、顔は完全に覚えられている。
「こちらこそ」
俺は笑い返してそれを受け取り、店を後にした。
ラノベの新刊を三冊、ミステリーものをニ冊、計五冊買った。早く読みたくて、体がうずうずする。
購入した本をしまったマイバッグを籠に入れて、家へと自転車を走らせた。もちろん全速力で。
***
ガチャッと玄関の扉を勢いよく開けて、帰宅。ダッシュでリビングへと向かう。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
リビングに入ると、妹はソファーでお茶を飲みながらくつろいでいた。
「ラノベの新刊を買ってきたぞ。後で読むか?」
「はい」
「じゃあぱっぱと読むわ」
俺は自分の部屋にダッシュし、椅子に座った。そして、異世界へ冒険に出かけた。
〜〜〜〜〜〜〜〜
目が覚めると、見慣れた草原が広がった。
大木の根元に横たわっていた俺は、さっと立ち上がって、人差し指と中指をそろえて上から下に振った。
ウィンと自動ドアが開くような効果音が聞こえ、ゲームのメニュー・ウィンドウが開いた。
【レベル】 55
【職業】 冒険者
【装備】
【武器】 聖剣デュランダル
光剣クラレント
【防具】 純白のコート(魔法耐性、物理攻撃耐性)
【スキル】
ハンドレッド・ソード
ライトニング・ソード
バーニング・スラッシュ
ウィンド・クロス
ブースト(敏捷性/攻撃力 上昇)
リカバリー(小回復)
ルミナス(光量:大)
ここはMMORPG 『Sword Busters』の中の、『アードケス』という村の大草原だ。
ゲームログイン時に必ずこのアードケスの村の大草原から始まるので、大した驚きはない。
さっと周りを見て誰もいないことを確認し、左腰につけている白銀の鞘から、聖剣デュランダルを抜いた。
ギラリ
銀色の刃が太陽光を反射した。
俺たちは牛魔王ギルファングに挑んでいた。
「ユウ、俺はもう動けねぇ……」
ケントが防御姿勢をとりながら、後ろに下がって言った。
「わかった、後ろで待ってろ!」
俺はケントにそう叫び、前に出た。牛魔王の体力ゲージはあとほんのわずかだ。かなり苦戦したが、あと少しで倒せそうだ。
「ユメ、とどめを!」
「うん、行くよ……スイッチ!」
シャキーン
ユメの一閃が牛魔王の脇腹を貫いた。
ドーーーン!
「っしゃー! やっと倒したぞ!」
「やりましたね!」
俺たちはついに、ギルファングを倒したと喜んだ。しかし……
「ん? おい、ちょっと待て!」
後ろで待機していたケントが声を上げた。
ヒュー、ピカーン
突然牛魔王の体が漆黒の波動に包まれ、ドスッドスッと鈍い音を立てながら、ゆっくりと立ち上がる。
「何! 体力はすべて削り取ったはずだが?」
見ると、牛魔王の体力ゲージはモヤのようなものに覆われている。一体どうなっているのだ。
シュキーン
「あいつ、あんな武器もってたっけ?」
牛魔王はその手に、影の大斧を手にしていた。
ドン!
牛魔王が思い切り地面を蹴って、瞬時に間合いを詰めてきた。
「うそ? 移動速度が倍近くになってる。どうして!?」
「くそー、三人で勝てるわけないよ。こんなの」
「やばい、来るよ!」
ギィーン!
あり得ない程素早くて重い一撃を、俺は何とか防ぎきり、咄嗟に魔王から離れた。
くそ、このままじゃまずい。俺は体力が三分の一くらい、ユメは五分の一くらい、そしてユウはほぼゼロ状態だ。俺はまだ一撃は耐えられるかもしれないが、他の二人はおそらく耐えられないだろう。
もうこうなったら、俺が戦っているうちに二人に逃げてもらうしかないなーーそう思ったとき、
ピカーーーン、ドーーーン
一瞬周りが光に包まれ、周りが見えなくなった。
恐る恐る目を開けると、なんと牛魔王が倒れていた。
「な、何が起こったんだ……?」
俺たちが唖然としていると、覆面をした男が、何の気配も感じさせず、俺たちの近くに現れた。
「回復薬だ。使え」
そして、赤い液体が入った瓶をニ本、青い液体が入った瓶を一本、懐から取り出して、俺に投げて渡よこした。
「……危ないところを助けていただいて、ありがとうございます。あなたは?」
「名乗るほどのものではない。さらばだ」
彼は漆黒のマントを翻して、風のように去っていった。
何のオーラも感じない影のような人。彼は変異してしまった魔物を一瞬で葬ってしまった。
レベル60前後の者が四人でパーティーを組んでも倒せなかった、あの牛魔王をだ。
彼は一体誰なのか、それはわからない。ただ言えるのは、光魔法を使うことができる強者ということだけだ。
俺はケントとユメに回復薬を使い、消え入りゆく牛魔王の屍を眺めた。
「帰ろう」
「うん」
牛魔王の亡骸が消え入るのを見届けたあとで、俺たちは戦場を立ち去った。
ーー続ーー
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最後まで読んで、本を閉じた。
いやー、今回もいい出来だったな。特に、ボスとの戦闘シーンはもうだめかと思ったけど、まさか助けてもらうとはな。
ラノベの感想をレビューに書いておくことにしよう。評価はもちろん★5だ。
一息吐いて時計を見ると、もうすでに七時になっていた。
妹にご飯だと言われたので、リビングに向かった。
「今日はハンバーグとサラダです」
「美味しそう。いただきます」
「はい。どうぞ召し上がれ」
夕飯を終えた後、自室へ戻った。
掛時計を見ると時刻は八時を回っていた。
俺はパソコンを開いて、ネットサーフィンを始めた。
最近のニュース、来週発売のゲームソフト、最新音楽ランキング……。
一時間ほど経つと眠気が襲ってきたので、着替えを済ませてベッドに入った。
よし、今度はあの曲をフルコンするぞ!
あれ、もうスタミナがない。ならばハートを消費しよう、ってハートもないのか!?
そうだ、昨日新年ガチャ回して爆死したんだった……。はぁ、一休みしよう。
コンプリートまでの道のりは長いです。これからもリズムゲームを頑張りたいと思います。
もちろん執筆も頑張りますよ。




