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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
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ライト

イケメンが声をかけてきた!


俺はどうする?

→たたかう  にげる  つかまえる

 翌週。5月2日の月曜日。昼休み。

食堂へ向かうため席を立ち上がったところで、


「古暮くん、これから食堂に?」


前の席の男子がこちらを振り向いて話しかけてきた。


彼の名は中島(なかしま)ライト。明るく爽やかな自己紹介で、女子たちが湧いていたのを俺は覚えていた。


「え? うん、そうだけど」

「じゃー、一緒に行かない?」

「あっ、はい」


特に断る理由もないので、俺は承諾した。

するとライトはハッと爽やかに笑ってみせた。


 俺は彼と並んで歩きながら、その容姿を観察した。

茶髪で長身、読者モデルのようにすらっとした長身のスタイル。

そして注目すべきはやはり、その整った顔だ。

つり上がった目の中に、底を知らない漆黒の瞳がある。

明るい黄色の肌と少し高い鼻。そして、ハッと笑ったときに見せた、驚くほど真っ白な歯。

華やかな格好良さを持つ彼は、仮面ライダーや戦隊ものの主役に抜擢されてもおかしくない。

もし俳優になったら、子どもから大人までファンの人口爆発が起きること間違いなし。俺も当然その中に入ることになるだろう。


そんな彼に誘われたのだから、断るなんてことができるはずがない。もし先に予定が入っていたとしても、それを放置して昼食に同行していただろう。


それと、俺の名前を覚えていてくれたなんて、なんていい人なんだ。平凡な自己紹介は普通、印象に残らないはず……。



 食堂に素早く出向いたおかげで、混雑を避け、良い席を見つけることができた。

そして今、ライトと俺は、二人用の小さな食堂用テーブルに向かい合って座っている。

俺たちの目の前には、学食定番メニューの日替わり定食が置かれている。


「じゃあ、食べよっか」と俺が声をかけると、ライトは「そうだな」と頷いた。

そしてライトと同時に箸を手に取った。


日替わり定食の目玉は、揚げ物。楕円形で狐色のコロッケだ。

噛んだときの衣がサクッ裂ける音を始めとし、新鮮な野菜のほどよい甘さが一気に口の中に広がるのだ。


想像兼観察はここらにして、いざ美味の菜園へと飛び込もう。もう唾液があふれそうだ。


「いただきます!」


さっと手を合わせて、すぐさまコロッケをつまみ、口の中に放り込んだ。


サクッと衣が破られる音。口に広がる野菜の甘味。そして、インパクトのある濃厚なソースの味。

口内で巻き起こる嵐に脳の回線が焼き切れた俺は、味がなくなるまで何度も何度も咀嚼した。


「んで、古暮くん」


頬が緩み、恍惚とした表情を浮かべているだろうときに、ライトが話しかけてきた。

男子に「くん」呼ばわりされるのは、なんだか気持ちが悪いので、


「和人でいいよ」


と、コロッケを飲み込んでから応えた。


「そうか? なら俺はライトでいい。改めてよろしくな、和人」

「うん、よろしく、ライト」


名前を呼んでやると、ライトはまたしても爽やかに笑った。太陽より眩しい笑顔で、目がやられてしまいそうだ。


「和人は何の部活に入ったんだ?」

「文芸部」

「へー、意外だ。ぱっと見、サッカー部って感じだけど」

「……中学はそうだったよ」

「やっぱりか。なら、継続しようとは思わなかったのか?」

「うーんと、心機一転ってやつかな。中学ではサッカーしかやってこなかったから、高校では読書でもしながら静かに過ごしたいと思って」

「なるほど、それで文芸部か」


ライトは納得したようで何度か頷いた。


「文芸部っていえば、お前の隣の席の琴吹さんも文芸部だよな」

「ん? ーーああ、そうだけど」

「んで、彼女はどうだ?」

「どうっていうのは……?」

「いや、クラスで評判になってるからさ」

「そうなの?」

「ああ。あの容姿で頭脳明晰と来れば、人気にならない方がおかしいだろ」


琴吹さんって人気あるんだ。知らなかった。

でも、ライトが言う通りで、人気が出るのは当然だ。可愛くて頭がいいのだから。

隣の席から観察していて凄い人だなと見当をつけていたけれど、目をつけていたのは俺だけじゃないということだ。


「それでどうなんだ? 彼女の印象は」

「うーん。まだ入部したばっかりだから何とも言えない」


ここは一応、わからないということにしておく。入部歓迎会での詩のクオリティーから察するに、きっとかなりできる人なのだろうけど、それは言わないでおく。どうせ頭の良し悪しは、中間テストではっきりするだろうから。


「そうか」


ライトは閉口して、目線を落とした。

「手応えなし、つまんねえな」といった様子で表情を曇らせた。きっとライトも琴吹さんに目をつけている一人なのだ。

もう少し時間が経てば自ずとわかることなので、その話はまた今度にしょう。

次はライトの情報を集めていこうか。親密度を上げていき、ぜひとも良好な関係えを築いていきたい。


「ライトは部活、何に入ったの?」

「俺はバスケだ。小学校からずっと続けてる」

「え、すごいね」


中学でそこそこの結果を出せたことに満足した俺とは違い、同じものを長く続ける姿勢は尊敬に値する。


「好きだからな、バスケ」

「始めようと思ったきっかけは何だったの?」


ライトのことだから、何か熱いドラマがあるのかもしれない。愛と友情的な。俺は思わず目を輝かせた。


「んー、そんな大した理由じゃないんだ。小学校の頃、雨の日は体育館しか遊ぶ場所がなくてさ」

「あー、わかる」


遊ぶ場所が限られているのはどこの学校でも同じだ。


「最初はバスケに興味なかったんだけど、同級生が試合してるのを見てて」

「うんうん」


俺も年の近い仲間とサッカーやバスケをしていた記憶がある。


「で、『お前もやってみろよ』って誘われて、やってみたら意外と面白くてさ。初めてシュート決めたときの高揚感がすごかったんだ。観戦してたみんなが盛り上がってくれて、それがまた気持ちよくて」


ライトはそう語りながら、自然体の笑みを浮かべる。

快活な雰囲気に加え、イケメンの彼なら女子からの歓声もすごかっただろうと容易に想像できる。


「その試合のあと、バスケ習ってるやつに声かけられてさ。その紹介でミニバスのクラブに入ったんだ。そっからずっと続けてる」

「いい話じゃん」


俺は感心して頷いた。英雄的といえばいいのだろうか。さすがライトだ。



「ごちそうさま」

「はあ、食った食った」


 昼食を取り終えたら、席を立たなくてはならない。本当はもっと話をしたいけれど、食事をし終えたら席を譲るというのは規則なので仕方がない。


「明日の昼、俺の友達を紹介するよ。そいつ、見た目も性格もいいから、結構人目に留まるけど、まあそこは気にせずにな」

「うん、わかった」


ライトの友達か。一体どんな人だろう。楽しみだな。


……ちょっと待て。今人目に留まるって言わなかっなか? ーーまさか、ライトと同等のルックスの持ち主が出てくるということなのか。


正直に言うとライトかっこいいなとときめいてしまったのに、同等もしくはそれ以上のイケメンを見たら、流石に俺、やばい気がする。イケメンオーラで浄化される!

俺の人生って普通にボーイ・ミーツ・ガールで男女の恋愛ものかと思ったらまさかのBL展開でしたなんてことにならないよな……?


「んじゃ、ちょっとこれから用事あるから」


そう言って、彼は食べ終わった食器を持って立ち上がった。

彼はまたしても笑顔を浮かべ、真っ白な歯を見せた。キラーンという効果音が脳内で補填される。


またしても俺の心臓が跳ねた。その破壊的な笑顔は女子だけでなく男子にも有効ということだ。

耐性の低い者なら、完全にハートキャッチされて目がハートになっていることだろう。

俺は大丈夫だ。咄嗟に手で射線を切って回避することができた。危ない危ない。

単に視線を逸らすだけではまた引き戻されてしまうからな。しっかり防御したのは偉い。


「じゃーな」

「うん」


さあて、これから巻き起こるカズト&ライト展開に期待だなーーって一体何を考えているんだ俺は!? 

もうすでに毒され済みなのかもしれない。

ライトハッピーエンドーーってそんなことあるわけないだろ。ないよな。ない……よな?



それにしても、ライトは多趣味だったな。スポーツ、ゲーム、本や漫画、映画など様々なことに関心があり、初会話とは思えないほど話が弾んだ。

今日出会ったことに運命を感じながら、あれこれと話し込んでしまった。

幸福な時間でした。ライトともっと話がしたい。絶対に、心の友になってやるからな。



 放課後。


「じゃ俺、部活だから行くわ。また明日」

「うん。じゃーね」


軽く挨拶をした後、ライトはすぐに教室を出て行った。

隣を見たが、琴吹さんもいなかったので、俺は一人寂しく部室に向かうことにした。

ゴールデンウィークで3から5日は休みなので、次は6日の金曜日。

ライトの友達に会えるのを楽しみに待とう。


もしイケメンだったら自分の人生はどうなっていたのだろうーーそんな妄想を膨らませながら執筆してしています。

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