34話 人族のルールは通用しない
「流石、権宣ウィルカニア様!確かにその通りでございます!」
太陽教会の一室で、ウィルカニアは拍手と共に賛美を浴びる。
荒事しか知らぬ冒険者団体が、自分らは神の使途と巫山戯た事を言い出し、挙げ句に治療院のまねごとを始めてから暫く経つ。
再三に渡り神への冒涜であると領主に連日苦情を入れたが、聞き入れてもらえなかったが、治療師達もここにきて、患者が減った事で我々太陽教と一緒になり共に苦情を領主により強弁を効かせて判断を煽った。そのお陰か本日領主内で働く者から”冒険者へ厳重な注意受け、金品を渡した” と伝わった。
そして今夜、権宣ウィルカニアは、集まった皆に“神を語る不届き者はささやかだが、罰を受けた”と事の次第を伝えた。
治療師達は安堵した表情で話し合う。
「まったく本当に困っていましたよ。なにせ患者が日々減って、現在は半数以下。それも怪我が多い冒険者がまったく来なくなったのでは、治療師として商売が出来ませんからな!」
「そうでしょう! ワシの治療所でも薬草さえ仕入れるのにも困窮しましたぞ?使えなければ品質も落ちる」
「まぁ、これで奴らも我々と手を組んで行くしかないでしょう!なにせ領主に目をつけられるって事は、この街で商売をやっていけなくなりますからな、わはは」
「そうですな、我々太陽教とて同じ事。皆様の商売、そして神への信仰があってこそですから」
権宣ウィルカニアは集まった治療師と太陽教導職の数十名で今後の安心を考え口元を緩ませながら会話をする。
「そういえば、太陽教では祝杯の酒は禁止されていませんでしたな?」
「勿論ですとも! それをお祝いのお布施も禁止しておりませんぞ?むしろ歓迎ですから」
「わはは!さすが権宣様!もちろん今後も協力してさせて頂きます!神の為に!」
控えていた治療士見習いが素焼きの壺をテーブルに持ち、各人の杯へ酒を注いでいく。
「では、神のご意志のままに!」
一同が杯を掲げて飲み、その夜は更けていく。
権宣ウィルカニアは楽しく話し合う治療師を眺めながら思う。
王都から離れたこの街は信仰が薄い。正確に言えば王家直属の領土以外は、太陽教の信仰が盤石でない。
大講様が険しい山脈を越え、この地に着いてから数百年。
いまだ各領主へ力を持たないのは信仰という大義ではなく、こういった地域の商いと共に歩んでいく事が大切なのだと、杯を口に運ぶたびに思う。
いずれは魔族を信じているという土着の民も、この治療師と共に神の信仰を与える事ができればと。
人は弱いものだ。
「人は間違いを犯すものであり、その隣人さえも助けよ、そして共に歩め」
教義にあるその言葉をひっそりと小声で呟き、また杯に次がれた酒を飲む。
ウィルカニアは、人々が違いに助け合う未来を想像しながら、二度と覚めることのない眠りについた。
俺らの信者に招き入れてもらい、太陽教会の一室に入ると、そこは数十人が涎やら体液を垂らして倒れる一団がいた。
「毒を盛られるとか気にしないのか……全員が飲んだのか?」
俺はすこし意外だと口に出した。
まぁ無理だと思ったが、苦情を入れた太陽教と治療師達が教会に集まると聞いてから、麻痺を伴う毒を酒に入れて、騒ぎ立てずに暗殺してようと来てみれば、全員があっさり毒にやられているとは。
「アンダムの毒ですからねぇ、冒険者じゃなくても治療師なら気がつくと思いましたが、意外でしたな。まぁ匂いがないし……しかし変な味だと思わなかったのかね?」
はげ頭の人族アルビンが、口から涎を垂らして椅子を抱くように倒れいてる人を足先でつつく。
堅い棘草アンダムの毒は刺されただけでも、即効で強烈な麻痺を起こす。魔物に追われて間違ってアンダムの茂った場所に入ったらまずは助からないから注意するというのが冒険者の鉄則らしい。しかしごくごく少量で麻酔の効果もあるので、利用次第という劇薬。
そしてこの毒は間違って飲んだ場合、数刻の間に解毒剤効果のある薬草を使わないと回復できず、手足が赤黒くなり、そうなると回復できず、数日の内に肉が腐り落ち死に至るという。ならば、このまま一晩おいておけば勝手に死んでくれるだろう。
そしてこの毒に似た禁制品で同じような麻薬もあるという。
そうなれば、”彼らは神を信じる者、また民を癒やすものでありながら、麻薬で死んだ”事にしてもらう。
もちろん、太陽教で働いていた女性も、今夜これから狩って彼らと全裸で殉職して貰う。
信じる信じるなんて関係ない、勝てば官軍。
明日から信者を使ってねつ造した噂話を流すだけだ。
太陽教と癒着治療師達が、ご禁制の麻薬でご乱交!夜なのに股間の太陽はギンギンだったと。さりげなくアンダムに憧れていたと。
少し人間だった心がチクりとしたが、俺はもう魔族。これが俺のやり方。




