26話 目標は必要なのです
1階の元卸場だった場所、椅子も机もないので、皆が床にそのまま座りる。総勢74名だが、さほど窮屈ではない広さ。昨夜、俺は皆に前に立ち、バケログテさんとミダリに催促されながら、話し出す。
「まず、皆、聞いて欲しい……」
俺の言葉を皆が静かなり聞く。
「ここから歩いてほど近い森、ここで俺達は狩りをする。昨夜のようにバンバン稼げるから安心してください」
それを聞いて皆が歓喜するように声を上げる。
俺は宿屋で地図を見てからここに来るまでの考えた。前世の会社の時も、目標が無くただ金を稼ぐのは長続きしない。目標が必要なのだと。彼らがそれぞれどういった人族か知らないが今は金を稼ぐ事が最低限の目標なら、その先を俺は伝え……協力してもらわなければならない。
俺が手を上げると、皆が静かになる。
「その上で俺達の事と……目標を聞いて頂けますか?」
俺達はドムゲザル山脈出身の蛮族でロアン人に追われて、此処に来た事と説明する。家族を探す為に旅をしている……なので、地図を掲げ、俺達が昨日狩りをした“帰らずの森”の先にあるという噂の遺跡まで行くつもりだ……と。
毎日、馬鹿みたい魔物を狩って稼いで、すこしづつ森の中へ道を作りながら進み、遺跡までいくつもりだと。
「仲間を探しながら、世界中のお宝を見つけていくために協力してくれ、ガンガン稼ぐぞ!」
その声を聞いた皆が更に歓喜して大きな声を上げる。
「おう!みんな聞いたか!帰らずの森の完全制覇だ!騎士団もできねぇ事をやろうぜ!」
「最高だぜ!バデールズ!」
無闇に狩りは難しいので、1階奥に元各リーダーが集まり、今後の行動を決める事になった。
バケログテさんとミダリ、それと腕の立つ数名が魔物を狩りをしつつ、連帯した30名ほどが森を切り開く。狩った魔物は荷馬車で残りの人が街へピストンのように届けていくという形になった。
「問題は、もし強い魔物が出た場合、荷馬車が襲われたらなぁ……特に血の臭いは寄って来るからな」
そうハゲ頭のアルビンさんが呟く。
確かに森の中に進めば進むほど、その守備が長くなる。俺達は平気だが、人族は強い魔物1匹で数名が一気になぎ倒される。ふと今まで読んだ本の中の中に書かれていた“魔道具”について思い出す。
「アルビンさん、魔道具は皆持ってないのですかね?」
魔道具、たまに魔物を倒すと内臓から胆石のように出てくる石。本にはそれを利用すれれば魔法の才能が少しでもあれば、魔法が発動できると書いてあった。読んだ時は“何故弱い人族はそれを利用しないのだろう、前世の銃のように利用できるはずだが?”と思ったが。
故郷の村でも極稀に獣から取れるが、魔法が使える大人は意味がないものだった。子供が水魔法を込めて誰かのポケットにいれていたずらする事とか火魔法を込めて着火に使ったが。
「ああ、魔石利用したヤツだろ?魔石自体は取れるが、魔力込めるなんぞ、いくら掛かるかわからねぇからな」
アルビンさんやマービナさんが言うのは、魔石に特定の魔法を込めるというのは高度な術らしく王都のお抱えが魔導師が行なえるというものらしい。さらに小さな石に数発の魔術を込めるだけでも半月掛かるという。魔石自体は火をつけると長く火を持つので、石炭のような感じで使われているという。
ほら、これだろ?とアルビンさんが腰袋から親指サイズの石を出してくる。昨日狩った魔物のらしい。
「すこし試していいですかね?」
俺は風魔法……ウィンドウカッターの魔法を2~3発込めて、立てかけてあっあ箒の頭に剣で割れ目をいれて挟み込んだ。あとは誰か弱くてもいいので魔法の素質がある人だが。
「冒険者の中で魔法の素質がある人いますかね?」
「そんな素質があったら冒険者やってないわね」
「ああ、そうだな」
皆、そんな事をいう。魔族であれば多少魔力を感知できるはずだが……。部屋から出て冒険者が雑談している場所に戻る。皆もぞろぞろ出てくる。
目を閉じて感じようとする魔力を___数名からそれを感じる、ほんの僅かな魔力だが、10人ほど見つかる。その10名をそれぞれ呼んで、南門まで一緒に向かう。なんだなんだと全員がぞろぞろと付いてくる。
街の門から出て直ぐのところ、街道沿いに人ほどの高さの若い木があるのを見つけて、先程の1人に簡単に作った魔石を先に挟み込んだ箒を持たせる。
「いいですか、危険なので、指示通り行なってくださいね」
彼に5~6メートル先にある木を指差して、その箒を狙うように言う。“こうですか?”という彼の腕に手を添えて、伝える。箒と魔石で何をするんだと回りは興味津々で後ろで見ている。
「先にある魔石から風魔法がでるように考えて、すこし身体を力んでみてください」
うぐ!うぐ!と数回力みながら、7~6回目でキュュと風を切るような微かな音を出して、先の木は綺麗に切断された。
何が起きたか分からない状況で皆が一言も発しないのが怖すぎた。




