19話 街道レース
宿小屋に戻り、商人の護衛にどうしたのですか?と聞かれて寝付けないので、周りを探索にと答え俺達は警戒しながら交代で仮眠を取る。この商人たちも何者か分からないしね。彼らも警戒しているようで、俺は魔法使いの男性に至っては“君も魔法を?”と聞くのでミリーデが調子づいて俺達が強いと自慢を始めたので、止めたがそれ以降、異常な警戒をしていたが……。
翌朝、辺りが明るくなり始めると同時に、商人たちは急いでいるのが、慌てるように出て行く。一緒に行けばいいのでは?という商人を護衛達が急がせるようにして。
「なによ、あれ?一緒に行けばいいのに」
「忙しいのでしょ?商人ですし」
「分かったわ!なら全力で追いかるのよ!食事も護衛も多いほうがいいでしょ!」
へいへいとグレーブさんが言うと俺達は馬車に乗り込み、全力で彼らの後を追った。
「おい、お前達どうした?目的地方向は一緒になんだから、彼らと一緒に行けばいいだろう?」
急ぐ馬車の中で商人のラデムに護衛の一人が振り向き口を開く。
「ラデムさん、彼らふたりが夜に外に出て行ったのを覚えていますか?」
「ん?ああ、眠れないとか言って周りを警護してくれたのだろう?会話したら彼女はエッツオ家のお嬢さんなのは間違いないだろうし、商売としても今後……」
ラデムがそういう中、黙って荷馬車を急がせる仲間を見てから、彼はラデムに近づき耳元で言う。
「彼ら戻って来たときに、血の匂いがしました。それと、微かですが、人の叫ぶ声も聞こえました。獣なら毛皮を剝ぐなり何か持ってくるはずです」
驚愕するラデムに更に彼は言う。
「何があったのか分かりません。ただ我々はそれを口に出しませんが、危険を感じました。それに昨晩、彼らは警戒しているようでしたが、殺気というか……ともかく普通じゃありません、いいですか?」
振り向いた魔法使いの一人が怯えるようにいう。
「ラデムさん、彼らは軽く火の玉を出していました、魔法は簡単には使えないですし、簡単でも呪文を唱える必要があるのです。ご存知でしょう?……あの3人とも魔導師級だとしたら我々では守りきれません、皆殺しになりますよ?」
その言葉を聞いたラデムは震えながら言う。
「あ、ああ……そうだな、先を急ごうか」
その時、後方を見ていた一人が叫ぶ。
「ガディ!大変だ!奴らすごい勢いで追いかけてくるぞ!」
「急いでくれ!ワシはまだ死にたくない!頼む!追加の金ならだす!頼む!」
「おーい待ってくれ!俺達も一緒に!」
「リーダー!彼ら何か叫んでいます!いや何か唱えてるのかも!」
「ひぃぃ!!おい、お前達もっと早く進めんのか!?」
「そんな事を言っても……荷を捨てますか?」
「そ、そんな!いや仕方ない!おい、荷を捨てるぞ!」
どんどん荷を捨て、加速する荷馬車。追う箱馬車。
「なによ!あの商人?荷物を落としてるわ……気がつかないのかしら?ほら拾ってあげなさい」
「へいへい」
貴族の箱馬車のほうが早い。
こうして逃げる荷馬車と荷物を拾って追いつこうとする猛レースがロバルの街に向けて開始された。




