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17話 ニーミの街

焚き火の横で、失神しているミリーデが目を覚ます。



あれからどうなったの?と聞く彼女に執事のデルダルさんは襲われて助からなかったと伝える。彼が裏切り者だったという事実は、面倒だから当の本人には伝えない。面倒な事は避けようと我々で話した結果だ。せめて遺体は埋葬したかったという彼女に獣がくるからという強引な理由で処分したと言って、人間キャンプファイヤーを指差す。


彼女は、ただ“そう……”と呟き、その夜は早めに箱馬車に入り、寝たようだ。そして翌朝に旅が再開した。もっとも翌朝、彼女は泣きはらした面影が見えたが。執事が裏切り者だと伝えたら、もっとションボリしてガン泣きしたあげく、人間不信になるのだろうな……きっと。


護衛のダゲーラさんが馬車を操り、箱馬車にはミリーデ、侍女のリアナさん。そして俺達は昨夜襲ってきた輩のボロークにそれぞれに乗って移動開始した。ボロークは本当に従順な馬で、顎下を撫でると可愛い声で鳴く。愛嬌のある生き物だ。時々ガチガチと歯を鳴らすのは怖いが。


夕方になり、また街道の脇で野営を決めて、ボロークを木に繋いで、準備をする。今度は俺が食事を作った。毒でも入れられたら困るし。途中、侍女のリアナとダケーラを何か察して執事のデリダルについて、意味深な事を言っていたが、そうですかと聞き流した。

翌日の昼過ぎにはニーミの街が見えた。



ニーミの街は周りを高い石造りの塀で囲ってあるようで、近づくにつれて、お城のように見えた。


「見えましたね。いや~ひさしぶりだな。ニーミの街」


護衛のダゲーラさんはボロークの手綱を引いて言う。聞くと普段はミリーデの育った領地で腕っ節が必要な雑用のような仕事を請けながら生活しているが、もともとはこの地方の出身だという。あの壁は?と聞くと、この地方は肥沃な土地で回りに田畑も人口も多いが、森から魔物が襲ってきたり、周囲の村や街と争いになったりするので必要だという。なんだ??この暴力的な世界は。


「え?よく分からないのですが、この国……ロニアテ王国って王が治めている国じゃないのですか?」

「そうだよ?何か?」


ダゲーラさんに逆に聞き返された。何で領土内の村や街でそれぞれ争いが起きるんだ?内紛が当たり前の世界なのか?まったく分からないが、いずれ分かるだろうと、“そうですか”と返事をしておいた。


街には貴族の箱馬車だからなのか、門番にミリーデがなにやら書類を出して、そのまま俺達もすんなり通してもらった。予め決まっていたのか、寄り道もせず、馬車は宿屋に辿りつく。


「2日程、泊まって、ロバルに向うわ。貴方たちの部屋も取ってあるから休みなさい、ほらリアナ幾らか渡して上げなさい、必要なものでも買いなさい」


「おい、お嬢ちゃんよ!俺達は……」


「分かりました。ではゆっくり休ませてもらいます!」


バケログデさんが言い始めるのを俺は手を上げて、彼の声を遮る。そして侍女のリアナさんから硬貨の入った袋を受け取る。ダゲーラさんも受け取ったようで、話がしたいので、一緒に食事にと誘われる。




「おい、てめぇ、それ以上、気安く話しかけたら殺すぞ?」



そうバケログデさんやミダリさんに言われてダゲーラさんは、ひぃ怖がるが、多少は慣れたようで、俺達は宿の近くの酒場にきて4人で飲んでいる。


「と、ともかくですね。本当に申し訳ないのですが、私はここで依頼は降りさせて頂きます。相棒も死んだし、それに……ここだけの話しですが、執事のデルダルさんも裏切っていたんでしょ?貴族の護衛だってきいたのに、盗賊に襲われるだの……」


そういうダゲーラさんは、野営で毒を盛られた事、今後もミリーデを殺しや誘拐を請け負った冒険者がくるのが察しているようだ。


「ロバルの魔法学校は王族も貴族も多いから学校も住まいも護衛がしっかりしていると聞きます。ですが、着くまでが危なすぎます。私はこの依頼に850,000ギルで、前金で400,000ギルしか貰ってません!それで今回みたいなのは無理ですから!簡単な護衛だって聞いたのですよ!」


そう怯えながらも“……これ、少ないですが、貰ってください、あ、私にも生活あるので、少し貰いますけど”と自分が貰った硬貨が入っている袋から、数枚を取り出して、俺の手に強引に数枚を握らせて渡して、そそくさと小走りに酒場を出ていく。見ると20枚ほど。


あ、逃げた……。


それはそうだろうな、命あってのモノだもの。盗賊に襲われるだの、野営中に仲間に一服盛られて、バンバン人族を殺すような訳の分からない途中参加の護衛がくればそうなるよな。



「どうするんだ?バデール?」


ふたりが俺を見る。



「ともかく俺達の目的は、皆が転移したグランダールに向うこと。そのためにまずは情報を集めましょう!」


「そうだ……」


「ああ、メケルアとミーア、無事だろうか」


俺達はその夜に酒を飲みながら話し合った。まずは俺達と人族の違いをしっかり確認して、この人族の国で情報を集めながら生活をするということ、それと俺達以外にこの世界にも魔族がいるはずで、それを探し出すという事。




その夜、俺も少しお酒を飲み、いい気持ちで宿に戻り、むさ苦しい夜を過ごした。


うん、男3人で同じベッドはないわ。


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