11話 人に紛れて
盗賊に捕らえられていた4人について、“貴族院”、“エッツオ家”というキーワードを聞いたが、それが以外の彼らの身元はまったく聞いていない。魔力酔いと言葉を発した女性に尋ねる。
「魔力酔いとはなんですか?」
「その前に、縄を解いてもらえないかしら?」
「嫌ですね……まず教えてもらわないと」
しばしの沈黙の後、彼女は諦めたように口を開く。
「分かったわ、私達は被害者なのに、まったく……。あの錯乱状態は、魔力酔いだと思ったの。貴方達は魔法が使えるでしょ?」
彼女が口を開き説明したのは、俺達が魔法を使ったから、酔ったという事らしい。だが意味が分からない。俺達は村で普通に魔法を使っていたし、魔法を使いすぎて気持ち悪くなる事や疲れることはあるが、魔法を使って酔うなど知らない。彼女が言うには、バケログテさんとメダリさんは強化の魔法を使ったためそうなったというが……数時間休めば回復するという。まったく分からない。
その後、彼女は自分達の事を説明してくる。自分達は貴族院のエッツオ家だという。彼女はエッツオ家の長女で、彼女と侍女、執事の3人と護衛2名でロバルの街へ向う最中だったという。1名の魔法を使える護衛は捕まえられた時に殺されたという。
「貴方達、ドムゲザル山脈にいるという蛮族でしょ?」
「蛮族というのは知りませんが、まぁ、その先の山間で暮らしてましたね」
「どうして山を降りてきたの?」
ああ、そう聞かれますよね。普通。俺達は山で育って、この世界を知らないと言うと、向こうが勝手に勘違いして、“ああ、蛮族は国に嫌われているものね!”とか言ってくる。そして俺は補足する。
「我々の村が襲われましてね、家族とバラバラになって逃げてきたのです。それで家族を探す旅に」
「そうだったの……、いいわ!私が雇ってあげる!魔法も使えるし腕は立つんでしょ!」
なぜそうなるのか分からないが、彼女は自信ありげに言う。
「お嬢様!このような蛮族を……!」
「デルダル!いいのよ!腕の立つ護衛が居なきゃ、また襲われて、ロバルの街までたどり着かないでしょ?
それに今回護衛をケチるからこうなったのよ!」
勝手に話を進めているので、俺は言う。
「悪いんですが、俺達は探す場所があるのですよ」
「だから!分からない子ね!手伝ってあげるって、言ってるのよ!私がね!私はミリーデ!」
ああ、これ面倒で断れない流れか。いずれにしても俺達は家族の元へ行かなきゃならない。その為には、まずはこの世界の情報が必要だ。そのためには少し付き合うか……。
「ほら!分かったら、縄を解きなさい!」
彼女は後ろで縛られている手を見せて、ほらほらと出す。
「分かりましたが、少し彼らと話をさせてください」
俺はバケログテさんとメダリさんの近くに行く。後ろでミリーデが騒いでいるが無視だ。バケログテさんとメダリさんを寝かせたように、結界を出た今ならイメージして回復の魔法や色々使えるのだろうか?試しに彼らの状態を診れないか、イメージして呟く。
___鑑定!
すると頭の中に文字が浮かんでくる。“ガチ切れの呪い”。怒りの呪いか……。これ解呪できるのか?というか魔力酔いじゃないじゃねぇか……ミリーデさん。彼らの頭に手をあて、呪いが消せるように呟きながらイメージする。だが一向に呪いは消える様子はない。
呪いや怒りをどうやって消すんだ?安らぎか?色々イメージしているが、どうも消す事ができない。前世で怒りを消すには……と色々思考錯誤して、自分達が育った村をイメージして魔力を流す。時間が経ったためか効いたのか分からないが、ふたりを鑑定してみると呪いの認識が消えていた。
バケログテさん!メダリさん!と、身体をゆすって起こす。
「ちょ!ちよっと!!なにその殺人鬼を起こそうとしてるの!!」
「やめてぇー!!!」
「頼む!頼みますから!」
「母さん!ああ母さんごめんよ、家に戻れないよぉ!」
後ろで4人は騒いでるが、無視だ。
「うぅぅ……バデール?どうした?ん?俺はいったい……」
「頭が痛いな……ああ、夢を見たぞ、村の……」
ふたりは頭を摩りながら、周囲を見回す。すいません、寝かせましたといい、後ろの4人に聞こえないように耳元で今の経緯を話す。
「だが、信用できるか?あの……4人は?」
バケログテさんが睨むように4人を見る。
「つまりバデールはあの4人に着いて行き、情報を集めるというのだな?」
メダリさんも同じく4人を睨む。
「ええ、幸い、彼ら人族は我々と姿は変わりません。違いは魔法や魔力かと思います。何処かにあるか分からないグランダールを探すにはそれしか……」
3人で話し合い、俺達は山にいた蛮族という事にして、グランダールを探すために情報を集めよう決定する。
「だが、バデール、俺は人族を信用してないからな?」
「俺もだぞ?」
「分かりました。俺も同じです」
そういって俺は4人のところに行き、彼らが縛られていた縄を切る。それぞれ挨拶されるが、バケログテさんとメダリさんは彼らと目を合わせず、ほぼ無視に近い形で終わる。
外は夜で暗いが、近くの集落まで1~2刻で着けるから移動しようという事になり、彼らは馬車へ荷物を積み込み始める。俺達もこの部屋の中を物色する。
「貴方達は魔法が使えるんだから、そこにあるローブを着なさいよ!魔法使いはローブって決まりよ!」
ミリーデが部屋の隅に吊るしてある服を指差す。
「え?魔法使いは、アレを着るのが決まりなのですか?」
「そうよ!この世界の決まり!」
そう腰に手を当ていう彼女の言葉で俺達3人は、ふむと、吊るしてある服を手に取る。
「おい、バデール、どうする?」
「この世界の決まりじゃ……しかないですね」
「じゃ、俺はこの黒いのにするぜ」
「おい、メダリ、俺だって黒いのがいいぜ」
2人はローブを手にとり、毛皮を脱いで着替える。俺も白いローブを手に取るが、盗賊の血が少し飛び散っていて……シミが付いている。そしてローブ3着しか無かった。先に選べばよかったと思いながら、着替える。
「似合うじゃない!ほら!そこにある杖とか持ちなさいよ」
こうして俺達は何か主導権を握られたような状態で小屋を後にした。




