*過小評価
「……そんな話が通用するとでも思っているのか」
「どうするかはお前次第だ」
起伏のない物言いに男は躊躇した。そこに少しの嘘も感じられない。
「処で」
切り替えるようにベリルが話を振る。
「泉から武器を奪ったようだが、奴が相手に出来る数を知っているか」
「! どういう意──」
言い終わらないうちに、鈍い音とうめき声が耳に届いた。すぐに振り返ると、泉が武器を持った相手に容赦なく攻撃を仕掛けている姿が映る。
「!? 馬鹿な!? これが目に入らないのかっ!?」
青年をグイと引っ張り、強く銃口を当てた刹那──金属が落ちるガシャン、という音が背後から響き目を向ける。
視線の先にある手錠から、ゆっくり視線を上げたそこには、ベリルが無表情で立っていた。
「そんな、馬鹿、な」
アルジャンは激しい後悔におそわれた。
どうして泉を拘束しなかった、どうしてすぐにこいつを眠らせなかった!? 全ては手遅れだと解っていても、逆転出来る要素は無いかと考えを巡らせる。
「!」
そこで男は気付く──相手に出来る数──そうだ、何か違和感があったのはそれだ。集めた数に対して、ここにいる人間の数が明らかに少ない、少なすぎる。
こいつらは屋敷内をうろつきながら、警備の人間を倒していたのだ。それを悟られないように、気づかれないように動いていた。
「ク……クク」
男は喉の奥から笑みをこぼし、手にあるハンドガンをするりと落とした。健吾は慌ててベリルに駆け寄る。
「これで勝ったと思うな」
低くつぶやくと、肩に提げていたライフルを即座に構えベリルに向けた。
その瞬間、どこからか爆音が──
「!? なんだっ?」
「もう一つ、奴を買っているのは自身の設置したものは必ず作動させる方法を確保している事だ」
「なんだと?」
「それが──」
ベリルの声を聞きながら、泉に視線を向ける。
「まさか……」
「どんなものでもね」
「! きさまっ、奥歯に!?」
ニヤリと笑んだ泉に目を丸くした。
「ナンセンスなことしやがって!」
吐き捨てて、武器を肩にかけ軽く手を上げる。
「完敗だ。くそがっ!」
言い残し、仲間たちを連れて足早に去っていった。
「!? まっ、待ってくれ! わしはどうなる……っ」
すがるように伸ばされた老人の手は、悲しげに宙を掴む。そして慌てふためく警備の中で、泉とベリルの2人だけが静かに立っている光景を夢のように見つめていた。
「わ、わしはどうすれば!」
ベリルは、足にしがみつく老人を無表情で見やったあと、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
「代償はつきものだろう?」
「ひっ!?」
その微笑みに、思わず引き気味に声を上げる。
「泉」
指示を下すと、泉はベルトのバックルから小さな円形のものを取り出し、金庫に向かって投げた。
黒く平べったい物体に付いている赤いランプが点滅を繰り返し、小さな音と共に爆発する。
金庫の扉はゆっくりきしんだ音を立てて開いた。
「!? わ、わしの金がっ!」
老人の悲痛な声を無視し、目当てのものを手にすると泉に目で合図する。
「OK」
「わあっ!?」
泉は、健吾を肩に抱えて2人は裏口に駆けた。
「そんな……。わしの城が……金が」
残された老人は、未だに響く鈍い爆音を聞きながら呆然とへたりこんだ──





