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ミッドナイト・キャナル  作者: 河野 る宇
◆第9章~天使か悪魔か果たして女神
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*余裕

「ちょっ……。降ろして!」

 健吾の訴えに素直に降ろすと、何も言わずに再び走り出す。

「待って待ってぇー!」

 それを慌てて追いかけた。


 真木まき おさむ邸の裏口にたどり着くと呼び鈴を鳴らし、すぐさま中に駆け込んだ。

「なんとも騒がしい人たちだね」

 はっはっはっ……と余裕の笑顔を見せる修氏だが、もう少し訊いてもいいんじゃないの? と健吾は思わずにはいられない。

 根掘り葉掘り訪ねて、ベリルに逃げられるのが怖いのだろうか。それとも金持ちの心の余裕なのか、健吾には計りかねた。

 部屋に戻ると機材は一切合切、持ち去られていて健吾は唖然としていたが、健吾が相手側に拘束されたと解った時点でこうなることは2人とも解っていたらしく、さして驚く様子はなかった。


「約束は守ってくれたまへよ」

「また連絡する」

 撤収作業を終えて真木邸をあとにし、ベリルたちは借りているホテルに戻った──フロントがベリルに何か手渡しているのを横目に見つつ、健吾はエレベータに滑り込んだ。

 エレベータから出て、健吾はベリルの手に収められている黒いスウェードの巾着をちらりと見やる。

 大きくも小さくも無い、なめらかな生地で出来た袋は丁寧に扱われているように感じられた。

 ベリルの部屋に集まり、ひとまず遂行完了だとホッとしたように泉と健吾は肩を落とした。

 ひと安心ではあるけれど、真木邸から出る時にパトカーのサイレンを耳にして由三郎はこれからどうなるのだろう……と健吾は少し胸が痛む気がした。

 こういう意識は、時としていけないとは思う。全てに同情していたら、被害を受けた人たちはどうなるんだ。

 何もかもを良しとする事は出来ない、それが出来る人は多くない。

 むしろ、あの老人に何もせず警察に任せた彼らは尊敬出来ると思った。


 落ち着いた処で彼がスウェードの巾着からプラスティックのケースを取り出す。

 リビングテーブルに置かれたケースの中身は──

「! 依頼された宝石?」

 え、もしかしてこれをフロントに預けてたの!?

 手元に持っておくよりも安全だろうと考えたんだろうけど、思ってもみないコトをやるもんだなぁベリルさんて……感心しつつ、改めて宝石を見つめる。

 7つ入っていて、先ほど奪還した宝石を加えて8つが並べられた。

 健吾には宝石の価値は解らないけど、照明の明かりを反射して輝くそれらを素直に綺麗だと感じた。

「あれ……エメラルドが2つ?」

 よくは解らないが、2つともエメラルドだという事だけは解る。

「一つはベリルに渡すはずだったものだ」

「え?」

 ほぞりと発した泉を見て、彼に視線を移した。

 泉はなんの表情も映し出さないベリルを一瞥し、エメラルドの一つを手にして続ける。

「依頼主の父親はこいつの友人でな。娘の依頼で、初めて自分にも遺品が残されていたことを知ったのさ」

 それがこいつ──『エンジェルズ・エメラルド』

「……天使のエメラルド?」

「見てみな」

 健吾に見えるように宝石を向けた。

 目をこらさなくても見える、そのインクルージョン(鉱物などに入っている液体や小さな結晶などの総称)は、まるで一対の翼のように形作られていた。

「知ってるか? ルシファーの冠にはエメラルドがはめ込まれていたんだそうだ」

「!」

 大天使ミカエルとの闘いでエメラルドは冠から外れ、地面に叩きつけられた。それから、エメラルドのほとんどには不純物が入って出てくると謂われている。

「最も美しいとされているルシファーの冠に収められていたんだ、神が愛した宝石なんだろうな」

 つぶやくように発して目を細めた。

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