*勝者は誰だ
それからおよそ10分後──
「!」
数人の足音がして居間に姿を現したのは、警備3人に腕を捕まれている青年──アルジャンはおどおどとしている青年の前に立ち、威圧的に見下ろした。
あまりの視線に、健吾はビクリと体を強ばらせる。それをニヤリと見やり、通信機を手にした。
「泉がいても攻撃も進路阻止も必要ない。そのまましたいようにさせてやれ」
さらに数分後──泉が大きな足音を立てて居間に顔を出した。大きな足音は当然だ、泉の足下を見やるとトレッキングシューズで屋敷内を動いていたらしい。
老人は、檜の一枚板で造られたテーブル越しに苦い表情を浮かべた。
「さっそくで悪いが、ベリルはどこだ」
彼はそれに肩をすくめる。
「別行動だ。解る訳がない」
小さく舌打ちを返し泉を睨み付けた。
「聞いてるんだろう! 出てこい!」
青年をグイと引き寄せ、そのこめかみにハンドガンの銃口を突きつける。
ピクリと反応した泉に見せつけるように青年を強く揺さぶり、「動くな」と示すようにあごを上げた。
そのとき──一同の耳に、土を踏みしめる音がして庭に目を向けるとベリルが立っていた。
「……どこにいた」
問いかけに、無言で下を指さす。
「床下……」
よくもそんな所に隠れていたものだと呆れると同時に感心した。しかも、居間の真下にいたという事になる。
まるで気配が無かったことからみて、どれほどの手練れなんだとあっけにとられた。
男は気を取り直し、青年のこめかみに当てている銃口を見せつける。
「奴の武器を回収しろ」
動かない事を確認し仲間たちに指示を出す。ベリルは両手を肩まで揚げて抵抗もせず、ただ男を見つめていた。
とりあえず武器の詰まったベストを脱がせると見た目よりも重く、次に肩と腰のホルスターを外した。
「……」
男はその姿に目を細める。
武装が解かれていくに従い、ベリルの妖艶さが浮き出てくるようで目が離せなくなる。男性に対してあまり使うような言葉でもないと解っていても、その言葉がしっくりくるのだから仕方がない。
ひと通り武器があるか探ると、あちこちから出てきて泉以外の一同は目を丸くした。
「次は手錠だ」
ベリルを居間に促し、まず両手を後ろ手に手錠をかける。そうして畳に座らせ、足首にも手錠をかけた。
健吾と泉はそれをじっと見ているしか無く、はがゆい気持ちをなんとか抑える。
老人は、居間の端で拘束されたベリルをじっと見つめたあと、ゆっくりと這い寄った。
「ふむ……実物の方が綺麗じゃな」
発してベリルの頬をさすると、泉が凄い形相で老人の背中を睨み付けた。
「こいつはどうします?」
警備の男が問いかけ、アルジャンは泉を一瞥し言い放つ。
「用はない、殺せ」
「! 待たんか。ここで人殺しは困る」
老人が止めると、それもそうだと思い直した。
どうせベリルがこちらの手にある以上、こいつは手を出せない。放っておいても問題は無いだろうと武器だけ奪ってその場に立たせたままにした。
一般人も人質にしているのだ、これで2人とも手出しは出来ない。
「まず、おまえたちの根城を教えてもらおうか」
青年に銃口を突きつけたまま問いかける。健吾はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「わしの宝石を返してもらうぞ」
しわだらけの顔を歪ませてベリルの体を触りまくる老人に、呪いの念でも送っているかのような泉の表情に健吾は身震いした。
「アルジャン」
「! ……なんだ」
静かなベリルの呼びかけに、警戒しながら応える。
「私が全て預かっている。彼らはその場所を知らない」
「……だから、こいつらを解放しろと言うのか?」
「いいや」
否定すると、声を低くして続けた。
「彼らに危害を加えるなら、私が話す必要は無い」
「!?」
こいつ──逆に脅迫してきやがった!?





