↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/31

1 学びに行こう

精霊は鏡である。


プネアルマ学府で繰り返された言葉。

だがこれはプネアルマで特別切り出された表現ではなく、精霊学の基礎と言える。

正しき手にのみ、正しく微精霊は応える。

一見すると単なる格言だが、十分過ぎる程歴史がその重要性を物語っていた。


「破鏡の禍」。


そう名付けられた幾つかの災厄がある。

破鏡の禍とは、微精霊の召喚に失敗したことによる大規模な術返しを指す。ただ単に召喚者に跳ね返った、ではない。反転したその喚び声が本人のみでは負いきれなかった場合、周囲にも災を及ぼしてしまう。突出して被害規模が大きいものを、この名で呼んでいた。微精霊を扱う者はこれを心しなければならない。何せ、ひとつの街が消滅した事象すらあるのだから。


ぺらり、とイノリは頁を捲る。

ティム氏から譲ってもらった本の何冊かは、精霊に関係するものだ。

ロイの正体は分からない。だが、イノリには一つの予感があり、それの是非を調べる必要があった。

そして、恐らくそれはルキア教にも繋がる筈だ。

自分が何故ミダの元に預けられたのか。

当初はロイという危険な存在を内包してしまったから、と思っていた。

きっとそれだけではない。ロイには、「危険」以外の何かがある。

ミダは「答え」を教えない。

リガレが言っていたように、教本のように問題と解決法と解答を、順序よく提供する気は毛頭ない、というのも確かにあるだろう。しかし、イノリは感じている。

「答え」そのものより、ミダはイノリに伝えたいものがあるのではないか。

だとするならば、イノリはミダの想いに応えたかった。

恐らく、きっと、で構成されている自分の脳内を客観視し、イノリは少し笑ってしまった。





ふわ、と目の前で小さな炎が回転しながらゆらめく。

「まだ糸を切るな」

ミダの静かな声に両手を前に翳したままで、イノリは頷く。

火球はその形を保ったまま、自転を続ける。

イノリの指先が震え出した。

「よし、オッケー」

イノリは弾かれたようにへたり込んだ。ふへえ、とよく分からない音が漏れてしまう。

「火も出来るようになってきたねえ」

ミダはのんびりと話ながら、イノリの隣に座った。

ここ数日、イノリはミダに微精霊召喚を見てもらっていた。何とか火の微精霊も喚べるようになってきたが…。

「いえ、こんなのじゃ駄目です」

イノリは唇を噛む。

もっと色々なことを知り、強くならないと。

俺は何も出来なさ過ぎる。

ミダは両手の拳をイノリの顳顬に押し付け、ぐりぐりと回した。

「お前は頭が硬いねえ…」

「いっ、イタタタタタタ痛いですって!」

ふーむ、とミダは何かを思案しながらぐりぐりを続けている。

「よし」

ぐりぐりを止めたミダはイノリの頬を両手で勢いよく包んだ。

平手打ちのような音が響き、イノリは顔を顰める。

「いちいち痛い…」

「明日から遠出をします!」

にっこりと笑ったミダに、イノリはまた何か始まったと眉を下げて聞いた。

「遠出、ですか」

うん、とミダは答えた。


「若人には社会見学が必要だよね」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。