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第40話「小さな炉を囲んで」
セカンドリーフの一角に、小さな作業スペースが設けられた。
ノクとリリ、そしてレオンが協力し、古い倉庫の掃除と簡易炉の設置を行っていた。
「まさか本当に、グレイスさんが“また火を使いたい”って言ってくれるなんてね」
リリが感慨深げに言うと、ノクも頷いた。
「でも、まだ本物の火は無理です。今日はあくまで“火の感覚を思い出す練習”」
小さな魔導熱板を使った炉の前に、グレイスがゆっくりと腰を下ろす。
「……匂いは違うが、悪くないな」
彼の前には、柔らかい金属棒と木槌、そして布手袋。
リリがそっと問いかけた。
「グレイスさん、今日は何を?」
「……簡単な鈴を、作ってみようと思う」
かつて弟子の誕生日に贈った、小さな真鍮の鈴。
あれをもう一度、作れたなら——それが、彼の“再出発の証”になる気がした。
手が震えても、焦らず。
金属に触れ、打つ。
その音は、施設の静けさに、優しく響いた。
今回は、グレイスさんの“もう一度、火と向き合う”第一歩を描きました。
鈴という小さな作品には、彼の記憶や願いが込められています。
次回、その鈴が意外な人物の心を動かすことに——どうぞお楽しみに。




