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第37話「新たな風、ひとり目の門出」
昼下がりのセカンドリーフに、見慣れない姿があった。
穏やかな表情を浮かべた中年のドワーフ男性。立派な髭に、手には荷物を下げている。
「……入居を希望していた者だが、ここで間違いないか?」
神田が応対に出て、静かにうなずいた。
「はい、ようこそセカンドリーフへ。お名前は?」
「グレイス・ドルファン。……元、鍛冶職人だ」
その名を聞いたノクが目を見開いた。
「えっ……グレイスさん!? 有名な鍛冶屋だったって……」
「昔の話だよ。今はもう、火も持てん」
そう言って見せた指には、古い火傷の痕と関節の変形が残っていた。
神田はゆっくりと荷物を受け取り、手を差し伸べる。
「大丈夫です。ここは、過去ではなく“今”を大事にする場所ですから」
グレイスは少しだけ表情を緩めた。
「そうか……なら、少し甘えてみよう」
今回は、新たな入居者・ドワーフの元鍛冶職人グレイスさんを迎えました。
過去の栄光や喪失と向き合いながら、再び“自分の居場所”を見つけていく姿を、今後描いていきたいと思います。
次回は、グレイスさんとノクの会話を中心に、世代を超えたつながりを描いていきます。どうぞお楽しみに。




