第33話「ひとつの答え」
翌朝、セカンドリーフの庭にて。
朝日が差し込む中、ノクは一人でほうきを握っていた。
いつもならリリが最初に出てくる時間だが、今日は早起きして“自分の仕事”として掃除を始めていた。
そこへ、神田が現れる。
「おはよう、ノク君。……今日はずいぶん早いね」
「……僕、決めました」
ほうきを止めて、ノクはまっすぐ神田を見る。
「王都の研修は今月で終わります。でも……その後、僕はここに残りたいと思っています」
神田は静かに聞いていた。
「ライナーさんの言うことも、正しいです。記録と効率は、確かに制度には必要です。でも、それだけじゃないものが、ここにはあると……昨日、強く思いました」
「昨日の、利用者さんの笑顔を見て……あれを制度の言葉で言い表せる気がしません」
神田は、少しの間だけ黙っていた。
そして、ゆっくりと頷いた。
「なら、ノク君。ここで働く覚悟はある?」
「はい。研修じゃなく、本気で“介護”を学びたいです。魔導補助師としてじゃなく、一人の職員として」
その言葉に、神田は笑みを浮かべる。
「歓迎するよ。君が本当にここにいたいと思ってくれるなら、それ以上の励みはない」
その日の昼、王都に戻る馬車がセカンドリーフを後にした。
ライナー・フェリスタは去り際に、一言だけ神田に告げた。
「ノクは、君に預ける。彼がどう育つか、制度側としても興味がある」
「……責任は引き受けます」
「……いずれ王都でも、福祉が“人”に近づく日が来ると信じている」
馬車が去った後、ノクは深く一礼した。
「……よろしくお願いします!」
その声に、リリとレオンが振り向き、ヴァルゴが静かに「新入りか」と呟いた。
新たな仲間として、ノクはセカンドリーフの一員になった。
今回は、ノクの決意と、彼が正式に仲間として加わる場面を描きました。
制度や研修の枠を超えて、「この場所で働きたい」と思ってくれたノクの選択は、神田たちにとっても大きな支えとなります。
次回からは、新しい仲間を迎えた“日常”が少しずつ広がっていきます。お楽しみに!




