【第16話】施設の未来を描け! 魔界王国、福祉モデル設計会議
「皆さん、集まってくれてありがとう!」
会議室――といっても、施設の食堂に板を立ててつくった仮設ホワイトボードの前に立ったリリスは、真剣な表情でそう言った。
「この施設で学んだことを、魔界にも広げたいの。
“魔界福祉モデル”を、一緒に作ってほしい!」
一瞬の沈黙のあと、ヴァルゴが手を挙げた。
「我が魔界では、老いとは“力の蓄積”とされてきた。
だが現実は――足腰が痛い!」
「おまえ、年齢サバ読んでただろ!!」
サラがニヤリと笑う。
「でも真面目な話、それぞれの種族に合わせたケア方法って、確かに必要よね。
たとえば、ケンタウロス用の寝具は人間用じゃ無理だったし」
「風呂もな。ワシのために納屋を改装する羽目になったわ」
「うちのじいちゃん(スライム)は湿気が足りないと干からびるしなあ」
「じゃあ、まずは“種族別ケア設計案”から作るのはどう?」
優一がホワイトボードに項目を書き出す。
魔界式 福祉設計案(仮)
種族別ケアゾーンの設計
- スライム → 湿度管理とやわらか寝具
- ドワーフ → 関節ケア+頑丈椅子
- ケンタウロス → 移動型入浴・広い厩舎型ベッド
- 魔族 → 魔力の波を整える“瞑想室”
多世代交流スペース
- 子どもと高齢者が交われる場所
- 「人生の知恵」を共有する場に
“旅立ちの庭”の常設化
- 看取り専用の静かな部屋と、別れの場
職員育成所の併設
- 魔法と介護の両方を学べる学校の設立!
「……理想ばっかりじゃねぇかって?」
サラが笑いながら言う。
「でも、“こうだったらいいな”を描かなきゃ、何も始まらないでしょ?」
「そのとおりだと思うよ」
優一は頷いた。
「大事なのは、“誰かの最期まで、ちゃんとその人らしくいられる”こと。
そのための場所を、もっと広げていきたい」
その日の会議は、遅くまで笑い声と希望の言葉に包まれていた。
そして――
リリスは決意する。
「魔界に戻って、ちゃんと話してくるわ。
“魔族にだって、老いを受け入れ、穏やかに生きる道がある”ってことを」
次回:「魔王陛下と面会!? リリス、親子会議で福祉を語る」
リリス、いざ魔界の父・魔王との対話へ!
“老い”と“介護”をどう語るか――涙と笑いの親子会議が始まる!
第16話まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は、これまでの現場の積み重ねを踏まえつつ、
少し未来に向けて“福祉の理想”を語るようなお話になりました。
現実の介護でも、「こうだったらいいな」と思うことはたくさんあります。
そしてその想いが、制度や仕組みを少しずつでも変える力になっていくのだと思っています。
たとえ異世界でも、たとえ魔界でも――
「誰かの最後まで、その人らしく生きられる場所をつくりたい」
そんなリリスの決意を、これからも応援していただけたら嬉しいです。
次回はいよいよ、魔王陛下とのご対面。ちょっとだけ緊張の回になります。お楽しみに!




