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【第15話】“見取り”に寄り添う時間――魔王の娘、初めての喪失


春の空気が、ゆっくりと流れていた。


セカンドリーフの一室で、ある利用者が布団に横たわっていた。

名はエリザベート。

リリスの乳母であり、魔界時代から彼女を育ててくれた元魔族の老婆だった。


「わたくしが、“介護施設”に連れて来たの……

でも、そんなつもりじゃなかったの。こんな……こんな形で……」


リリスは泣きそうな顔で立ち尽くしていた。


エリザベートの息は浅く、でもどこか穏やかだった。


優一は静かに言った。


「大丈夫。リリスさんがここに連れてきたから、

彼女は“誰かに見守られて旅立てる”んだよ」


「……けど、どうしても、できることがもうない気がして……」


「あるよ。

“寄り添う”って、それだけで、何より意味のあることだから」


それから数時間、職員たちは交代で付き添いを続けた。


サラが枕元で手を握り


レオンが痛みを和らげる癒し魔法をかけ


ヴァルゴが静かな詩を読み上げた


リリスは、何度も言葉をかけようとして、言えなかった。


けれど、夜が明ける直前。


エリザベートの唇が、かすかに動いた。


「……お嬢……さま……」


その一言に、リリスの涙が溢れた。


その後、エリザベートは静かに息を引き取った。


誰にも迷惑をかけずに、誰かに見守られながら、

人生の幕を下ろしていった。


葬儀のあと、リリスは庭に小さな碑を立てた。

その隣に置かれた花瓶には、彼女が自分で摘んだ魔界の花が一輪。


「死って、終わりじゃないのね」


「……うん。

“誰かが生きた”ということを、

ちゃんと見送ることができるかどうかが大事なんだと思う」


優一の言葉に、リリスは小さく微笑んだ。


「わたくし……

この世界に福祉を根付かせたいって、本気で思ったの。

エリザが“安心して旅立てる場所”にいたことが……その証拠だから」


その日から、リリスは“利用者”ではなく、

**正式な“研修職員”**として、セカンドリーフの名簿に加わることになった。


次回:「施設の未来を描け! 魔界王国、福祉モデル設計会議」


リリスの提案で“魔界にも介護を”!?

若き職員たちの“福祉の未来”を描く、妄想と希望が広がる回!

第15話までお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、“看取り”をテーマにした、とても大切なお話でした。


誰かの人生の終わりに寄り添うことは、

介護の現場において最も繊細で、そしてかけがえのない時間でもあります。


急がず、焦らず、その人の最期の一日一日を大切にする。

手を握り、言葉をかけ、ただそばにいることが、

なによりの支えになると信じています。


リリスが今回の経験を通して何を感じたのか。

それは、これからの彼女の歩みにもつながっていくはずです。


もしこのお話が、どこかで誰かの心に届いていたら嬉しいです。

次回は、少し未来に向けて動き出す回となります。どうぞよろしくお願いします。

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