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【第14話】突然の査察! 王都からの魔法省役人来たる!


その日、セカンドリーフの門に現れたのは、きっちり七三分けの魔法帽をかぶった男だった。


「魔法省・福祉調整局の監査官、バルドー・リクステンだ。

この施設が“無認可の医療類似行為”および“労働契約に関する不備”を有しているという情報が入った」


「え、誰がチクったの……?」


「匿名通報だ」


(リリスが王都に広めた“福祉情報”が、裏目に出たか……)


バルドー監査官は厳しい目つきで、施設内をひと通り歩きながら言った。


「この寝室は……断熱処理がなっていない。

食堂も火の精霊石の設置基準が未確認。

それに、“職員”と名乗る者の中に、どう見ても一般高齢者が混ざっているな?」


「彼らは“生活支援ボランティア”です」


優一が毅然と答える。


「中には、訪問支援を受けて生活が安定した方もいます。

自分も何かしたい、助けたいと、申し出てくれたんです」


「高齢者に労働を強いるなど――」


「強いていません。強いられた経験があるからこそ、

“今、自分の足で立ってできることを”と、自ら動いてくれているんです」


その言葉に、バルドーの手が止まった。


視線の先には、いつものように台所で野菜を刻むトゥリルおばあちゃんがいた。


「昔はな、食うのもやっとだったんじゃ。

けどこの施設のスープで、ワシ、久しぶりに“明日が来る”って思えた。

今は、恩返しのつもりで来とるよ。誰に強いられたわけでもなくな」


「……」


その日の午後、バルドーは職員室に優一を呼び、厚めの帳簿を叩きつけた。


「申請書、雇用契約、魔力免責書、そして“福祉施設認定申請書類”。

これを満たせば、セカンドリーフは正式な“登録福祉機関”として認可される」


「……つまり、それまでは“違法すれすれ”ってことですか」


「本省には、“現場に即した前例”が少ない。

だが君たちの活動は、確かに“先駆け”だ。

見逃すこともできないが、潰すのも早すぎる」


バルドーは一冊の手帳を差し出した。


「私は、様子を見に来ただけだ。

君がこの場を守り抜けるなら、来月の視察のときには――君の“答え”を見せてくれ」


その夜、掲示板に新しい張り紙が増えていた。


【職員登録制度に向けて】

リーダー:レオン(事務整理担当)/サポート:ヴァルゴ(詩で提出用テンプレート作成中)


サラがひと言。


「書類仕事って、魔物より手強いね……」


次回:「“見取り”に寄り添う時間――魔王の娘、初めての喪失」


リリスの身近な人に旅立ちが訪れる。

セカンドリーフで学ぶ、“死と向き合うこと”の意味――

第14話まで読んでくださってありがとうございます。


今回は、“制度”と“現場”のギャップに少し踏み込んでみました。

書類や規則、決まりごとは、介護の質を守るために欠かせないものです。

でも、ときにそれが“本当に必要な支援”を縛ってしまうこともあります。


前例がないから、不安になる。

でも、前例がないからこそ、誰かが一歩踏み出さないと変わらない。

現場にいると、そんなことを思う瞬間がたくさんあります。


この作品の中でも、“型にはまらない介護”の在り方を丁寧に描いていけたらと思っています。

次回は、制度という壁を乗り越えるための、新たな動きが始まります。どうぞお楽しみに!

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