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アイビス!  作者: フユルト
第六章 流星は駆け、騎士は眠る
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希望と謎の氷扉

リニアスは、盗賊の首領に対して苦戦を敷いられていた。それは相手が強力な一撃を放ったり、驚異的なスピードを出しているわけでもない。


「オラオラッ!!どうしたぁッ!!」


「くッ…!!」


こちらの一撃が絶対に入る瞬間に、何故か相手の姿が消えて背後に立たれているのだ。そして、とある理由からリニアスはスキルが殆ど習得できないため、相手の多種多様なスキルの対処で戦闘を有利に進めることが出来ない。


「リニアスさん、ソイツは転…ッ!!」


時折ネイルがフォローに行こうとするが、何処から飛んできたのか不明な魔法の攻撃がそれを妨害する。さらに、それが商人を狙う時があるため、クロエは商人の護衛に専念している。


(どういうことだ…?相手が高速で背後に回り込んだ?いや、それなら速さにものをいわせて電撃戦でも問題ないはず…それよりも、この違和感は…)


リニアスは自身の周りの違和感を感じ、わざと地面にクレーターをつけて駆け出し、対応されるよりも早く斧を振り抜きーーー


「…ッ」


「おっと、危ねぇなぁ?」


いつの間にか後ろにいた男の進行を塞ぐようにでそして…地面に視線を向けると相手の男の足元には、まるで全力で踏み込んで走ったかのような、不自然なクレーターが出来ていた。男は全くと言っていいほどそんな動きはしていない。それはつまり…


「転移魔法…か」


「へぇ〜、流石に気づいたか…ま、だからどうしたって話だがなぁッ!!」





…………






「おっとと…もうっ、卑怯だぞーッ!!」


こちらに飛んでくる炎の槍を、黒い水晶で造られた大剣で叩き落としながらクロエはぷんぷんと怒るが、全く恐ろしさ足りないため、ただただ可愛らしさが伝わるだけだ。


「わ、悪いな、嬢ちゃん…」


「ん?大丈夫♪私がいる限りおじさんには傷一つつけさせないから!!」


おじさんと言われ、ちょっぴり傷ついた商人の男性だったが、状況はあまり良くない。何処かに居るであろう魔術師を倒そうにも、クロエは時折飛んでくる魔法から商人の男性を守らなければならないため動かせず、リニアスは盗賊の親玉と対峙している。ネイルはリニアスがピンチの時のサポートに尽力しているためこっちも動かせない。


しかも、持ってきた矢の本数も減っていくばかりなのに対して、大柄の男は無尽蔵ともいうべきスタミナを持っており、尚且未だ姿を見せない魔法使いの魔力も底知れない。このままでは勝ち目がない。だが、その時…






「…あの、大丈夫ですか?」






敗色に染まりかけていた戦いに、一筋の希望が現れた。






ヒイナ達が黒竜を討伐した頃、アオユキとグリスは一面白銀の世界であるアフテリアの大地を探索していた。ここに何故、ライネスがいないのかというと…




「まさか、大精霊の奥義を使うと一週間STRに大きなマイナス補正とスタミナが十分の一になる効果があるとはな…よっと」




グリスは、光晶竜の素材をもとに作られたガントレットである“光晶拳(カルディオ)”による打撃を、迫りくる白狼に叩きつけて牙を折り、その顎を掬い上げるかのように拳を振り上げる。それによって一匹の白狼がポリゴンとなって砕け散る。



「流石に、なんのデメリットもなかったらゲーム性が崩壊する…《アイス・ストーム》」



更に白狼の群れは、アオユキとグリスを中心に発生した氷礫の嵐に呑まれてダメージを蓄積していく。それが終了次第、グリスが怯んだ白狼を殴り飛ばすという連携プレイで地道に戦っていた。



「それにしても、何で氷魔法しか使わないんだ?ここじゃ氷とかに耐性を持ってるやつがゴロゴロいんのに…」



「確かに、ここじゃ大してダメージを与えられない…」



「じゃあなんで…」



「グリスも、大剣のほうがダメージ高いけど使わないでしょ?…それと、同じ」



「そもそも職業からして扱えねぇだろッ!!!」



厳密にはスキルを習得していないのと、補正を受けられないため大剣を“上手く”扱えないだけである。もっとも、今のグリスのSTRで装備できる大剣はせいぜい鉄製の大剣であり、それなら“光晶拳(カルディオ)”を使ったほうがダメージが出るためだが…



アオユキの謎理論にグリスはブチギレるが、当の本人はどこ吹く風だ。そんな話をしていると、アオユキの視界に不自然なものが入る。



「…?」



「アオユキ、どうした?」



「…目の前、大きな扉がある…?」



「はぁ?なに言っ…なッ!?」



グリスが、隣にいるアオユキから視線を前に向けると、先程までは一面雪原であった目の前に、突如大きな山と扉が現れた。



「どうなってんだ…?」



「…この扉、氷でできてる…」



「まぁ、とりあえず入ってみようぜ?」



そうして、二人が同時に重厚な氷の扉を開くと…中から膨大な冷気が溢れ出した。それが地を這い、二人の足元に触れた瞬間、まるで身体を蝕むように凍りついていく。



「ちっ、《ライトニング》ッ!!」



グリスは即座に“光晶拳(カルディオ)”の能力で熱を発生させ、足の氷を解かそうとする。だが…



「おいおい、こいつ解けないぞ…?」



かざしても熱量が足りないのか、水滴すら垂らさないため直接“光晶拳(カルディオ)”で触れると、それ自体に霜がつきだした。



「どうなってんだよ…こうなったら、最大出力でーー」



「ーーーっ!?グリスッ!!」



その時、扉を開けた薄暗い内部からまるで津波のような冷気が途轍もない勢いで襲ってきた…







………………








「………」



(危なかった、最大出力でギリギリ保ったか…)



グリスは冷気の波に呑まれる瞬間、“光晶拳(カルディオ)”の能力である《ライトニング》の光熱を自身のダメージを無視した最大出力でガードした。そのおかげもあって死ぬことはなかったが…



(やべぇ…身体の感覚が無い…)



“光晶拳(カルディオ)”はガントレットではあるが、それは指先から肘までを覆う形なので、そこから先は防御できない。そのため、グリスの下半身と胴体、左目以外の顔が凍りついていた。肩が完全に凍結されているため間接的に腕にも感覚がなく、動かせない。



(くそっ、アオユキは大丈夫か…?)



右側にいた筈の確認しようにも、右目は冷気にあてられたのか霜がついて目蓋を開けられないため見ることができない。その時、暗闇の奥で「ガゴンッ」と何かが動く音がする。次第にそれは大きくなり、扉からの僅かな光によって姿を表したのは巨大な氷の大剣、その剣身が視界に入る。



(早く解けろっ、早く解けろっ、早く解けろッ!!!)



“光晶拳(カルディオ)”の最大出力によって、やっと身体に纏わりついた氷を解かせるようになり、肩の氷がポタポタと水滴を垂らし始めた。



だが…



無情にも、必死に足掻くグリスを嘲笑うかのように、大きく振りかぶられた氷の刃がグリス達目掛けて振り下ろされーーー…











ーーーその瞬間、グリスの視界が暗転した…






Qあの冷気って何なの??


A“氷結の眠り《アイシクル・ヒュプノス》”

・ーーーの固有スキルであり、半径30メートル以内の全ての物質に対して〘凍結〙という事象を与える。


…つまり、近くにいる生き物に凍るというルールを“押しつける”から、だからどんだけ良いアイテムと防具つけてようが問答無用で凍らせる。しかも、その事象が【絶対零度で凍結させる】っていうヤバい能力。だから、触れた瞬間絶対零度になる。“光晶拳(カルディオ)”の《ライトニング》で解けなかったのは、凍った事で発生した氷自体に“氷結の眠り《アイシクル・ヒュプノス》”の効果が永続発動されるので、絶対に解けない。


…もっとも、最大出力では光晶竜本来の力である〘上書き〙で“氷結の眠り《アイシクル・ヒュプノス》”自体の効果を上書きした事で対抗できた。なので、厳密には解かしたのではなく“光晶拳(カルディオ)”の能力によって凍結が解除されたというのが正しい。あくまで熱は副産物。





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