戦う者、嗤う者
遅くなって申し訳ない………全てはあの忌々しい提出物とかいう奴のせい…
質問とか誰か…下さい…実は《流星》には上位互換と、それに伴った隠し職業があることとか、大精霊の人数とか…
「はぁ〜…」
「え〜と、ごめんね?」
とある荷馬車の中で、ネイルがため息をつくたびにクロエは平謝りをしていた。というのも、その原因がクロエにあるからに他ならない。
遡ること10分前…
ネイルはフェンリルを倒した事で得た大量の素材を加工して貰うために、ライネスの元へ戻っている最中、偶然にも何か準備をしている副団長のリニアスとクロエに出会い…
「クロエさん、どうしたんですか?」
「あ、丁度いいや♪ネイルちゃんも行こうっ!!」
「え?ちょっ…」
ネイルのSTRではクロエの掴んだ手を振り解くことができず、そのまま荷馬車に乗せられたというわけだ…
そして現在に戻る…
「別に、怒ってはないですけど…せめて少し確認してから…」
「あはは…」
クロエは申し訳なさそうに頭をかいて誤魔化す。それを横目に、ネイルはインベントリから様々な道具を大きめの木箱の上に広げて、調合を始めた。
「ん?何してるの?」
「…何処かの誰かさんが、消費したポーション類の補充をさせずに連れてきたので、今ここで補充してるんですよ?」
「うっ…」
話題を変えようとして話しかけたクロエだったが、思いっきり地雷を踏んでしまい、うめき声を漏らす。そもそも、素直で天然なクロエと、怒りはすぐに割り切るがそれはそれとしてネチネチ嫌味を言うネイルとでは致命的に相性が悪い。そんな二人の会話は御者席にいる商人と副団長であるリニアスにまで聞こえていた。
「いや〜、若いのは元気があっていいですなぁ」
「騒がしくして申し訳ない」
「いえいえ、もう長く子供の声を聴いてなかったですから…」
この荷馬車は、カギラスの村で商売をして帰る所をリニアスが街までの護衛を引き受ける代わりにと乗せてもらっているのだ。
「お子さんがいらっしゃるのですか?」
「えぇ…でも、仕事が忙しくなって中々会う機会が減りまして…女房を早くに亡くして、自暴自棄になりかけてた俺…いや、私は、息子がいたから何とか踏み留まれたんです…」
「それは…」
商人である中年の男は何処か寂しそうに呟く。リニアスはなんと言えばいいのか分からなくなってしまった。その時、チラリと何かが光ったのをリニアスは見逃さなかった。
「ただ、幼馴染の子とはいい仲になりそうで…騎士様?」
「失礼、客人のようだ…」
直後、商人めがけて一本の矢が飛来する。それをリニアスは背中から白斧を振り抜き、叩き落とした。
「…少し馬車を停めてくれないか?」
「は、はい」
その言葉に従って、商人である男性は平原のど真ん中で馬車を停める。
「どうしたんですか?」
「いいか、私が合図するまでそこを動かず、スキルでの索敵もするな。そういうのに敏感な猛者もいるからな」
ネイルの疑問に、リニアスは顔を向けずその言葉だけを返して待機することを伝えた。
「姿を見せたらどうだ?それとも、そんな事もできない小物か?」
リニアスの挑発に乗ったのか、森の茂みから武装した男達が現れた。
「ほぅ…見たところ“弓が3人”に“魔法使いが2人”、“前衛は5人”か…で、そこの“大剣を持った”お前がボスか?」
「おう、そうだが?」
自身と同じくらいの大きさの大剣を右肩に担いだ大柄の男は、リニアスの問いにあっさりと答えた。
「では、貴様らの目的は何だ?わざわざ騎士が同行している馬車を狙う馬鹿な盗賊なのか?」
「なわけねぇよ?俺らはある人の依頼で、アンタを殺すために来たのさ」
「随分と簡単に答えてくれるんだな」
男は何がおかしいのか、クツクツと笑う。
「ククク、おうよ…どうせここで殺すんだからなぁッ!!」
「…やれ」
リニアスの言葉と同時に、荷馬車の屋根部分が吹き飛び、二人の少女が現れる。その一人であるネイルは既に矢を番えており、すぐさま後方にいる魔法使いに狙いを定めた。
「《マルチショット》」
直後、放たれた矢とは別に、白い矢が複数放たれた。
「《アースウォール》」
「《インパクトウェーブ》《狂化》《深紅炎刃》」
突如地面が魔法使いを守るように壁を形成し、ネイルの攻撃からその身を守った。だが、それは囮で衝撃波を放つスキルによって自身を飛ばし、狂戦士のみが習得できる身体強化系統のスキルのエフェクトを纏ったクロエが空中で振るった黒い水晶剣の刃から噴き上がった深紅の炎が、いとも簡単に壁を斬り裂く。
「なっ…ぐはっ!?」
驚いた魔法使いが反応するよりも早く、着地したクロエの振り上げた拳が顎に叩きつけられる。その衝撃波と勢いで魔法使いは空に投げ出され、すぐに重力に引き寄せられたあと今度は地面に叩きつけられた。
「全員で掛かってきていいよ♪」
「くそっ《ファイヤ……》ぐぁッ!?」
「いっ…!?」
数人の注意がクロエに向いた瞬間、インベントリから二丁のクロスボウを取り出したネイルが駆け出しながら矢を放った。その矢は弓使いと魔法使いの腕に突き刺さり、行動を阻害した。
当たった事を確認したネイルは、クロスボウをすぐさま捨ててスキルを使用して跳躍、インベントリから弓を取り出して空中で身体を捻りながら狙いを定める。
「《エクスプロード》ッ!!」
オレンジ色のエフェクトを纏った矢を、ネイルは男達のいる丁度中心部に放った。その矢先が地面に触れた瞬間、一瞬にして魔法陣が現れその範囲を矢に纏われていたエフェクトと同じ色の爆発が起きた。
「なに…?」
「よそ見していいのか?」
大柄の男が目を離した隙に、リニアスは接近して白竜の双斧を振り下ろす。だが…一瞬にして目の前から消えた。それを知覚した瞬間、身体を捻って背後に向けて双斧を振るうと、金属音と共に硬い何かを弾き返した感触が手に伝わる。
「おっと、まさか防がれるとはなぁ…」
そこには、先程まで目の前にいたはずの男が立っていた…
………
……………
時は遡り、ヒイナ達が青いラインを浮かべた黒竜と戦っている頃、赤黒い雲が空を覆う最果ての地に建てられた塔の最上階にて、一人の女が居た。
その女は水晶に映されたヒイナ達の戦いの光景を、玉座にふんぞり返りながら頬杖をついて見ていた。
「ふぅん…たとえ絞りカスだとしても、私の力を使うからどんなものかと見てみれば…ククク、“本当に絞りカス”のような強さじゃねぇか」
《流星》《クルレイド》を使用し、あの黒竜に大ダメージを与えたヒイナの事を、女はそう評価したのだ。それも、女からしてみれば至極当然な事であった。
「あの人の力を使ってるのに、あんな“図体がデカいだけの黒アリ”にこうも手こずるとは…だがまぁ、余興はすぐ終わってはつまらねぇし、これはこれで、暇つぶし程度にはなるか」
黒い霧が漂い、深紅の雷が鳴り響く最果ての大地にて、“この世界最強”である女は動かない。そして、彼女を知るものはそこに封印した者ただ一人。
だが………封印した者はある勘違いをしていた…
「…さて、私が“あえて”封印させてやった事に、あの“白黒”はいつ気づく?ククク…」
その女は、ただ純粋に、無邪気に、そして…
…この世の全てを馬鹿にするように、嗤った…
最果ての暴君、未だ動かず…
実はこの暴君、一応人間ですがその気になれば普通に魔王や大精霊を殺す事が出来るんですよ…勿論、ヒイナ達がどれだけ強くなろうと、この暴君にとってみれば「なんか虫けらが1ミクロン成長したな〜」程度にしか思えない程の圧倒的な力の差があります。
…そして、黒髪ストレートヘアーで、深紅の瞳をした少し腹筋の割れたナイスボディの女性です…勿論、私の性癖が九割注ぎ込まれたキャラ…
※言葉遣いの修正と、設定上の修正




