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アイビス!  作者: フユルト
第六章 流星は駆け、騎士は眠る
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〈レコグナイズ〉

「そこまでだ」


ミストルティンの片手剣がヒイナの喉元に突きつけられ、そこで模擬戦の終了を知らせるキルシュガルドの声が響く。


「負けちゃった…うぅ、左腕が痺れてる…」



恐らくあの〈千剣〉が絡んでいるのであろう腕の痺れを堪えながら。ヒイナは〈流星〉と〈クルレイド〉を解除して地面に座り込む。


「どうだ、中々いいだろ?」


「えぇ、悪くないわ」


「えっと…それよりも〈千剣〉ってもしかして…ただ単純に剣を高速で振るっただけ、ですか?」


ヒイナは、先程受けた〈千剣〉についてある程度どういう能力か分かった為、それについて問うてみる。


「…案外見抜かれるのが早かったわね…そうよ、私の〈千剣〉は一秒間に千の連撃を叩き込むだけのスキルよ」


ミストルティンは、「殆どの相手は気付いてすらいないのだけど…」と付け加える。その答えに、ヒイナは納得する。というのも、〈千剣〉を受けた際に一瞬だけ見えた大量のスキルエフェクトと、連撃による衝撃が腕に伝わったのを感じていたのだ。


「それを、私が覚えるの?」


「いいや、それは無理だ…そうだろう?」


どういう事かと聞くと、どうやら〈千剣〉というスキルは継承する事によって獲得出来るシステムらしく、どう頑張っても継承以外で覚える事は出来ないらしい。継承の方法は、持ち主が死亡すると同時にスキルが獲得するに相応しいか見定めてから継承される為、任意で決められないのだという。


「じゃあ、一体私に何を…?」


「さっき戦ってて思ったんだけれど、貴方は攻撃を回避する事にスピードが、防ぐ事に攻撃力が上がるのよね?」


その問いに、ヒイナはこくりと頷く。


「なら、貴方は〈認識眼(レコグナイズ)〉が必要ね」


「〈レコグナイズ〉…?」


「〈レコグナイズ〉っていうのは、思考を加速させるスキルよ。簡単に言えば、自身を含めて世界が物凄く遅く感じるって事。貴方のスキル的に、上手く回避し続ければ途轍もない速さを手に入れられる。けれど、あまりの速さに細かい動きが出来ず、躓いただけで致命的なダメージを負う為、ほぼ直線で移動するので精一杯になる…だから、〈レコグナイズ〉が必要なの」


「〈レコグナイズ〉は習得条件が難しくてな…持ってる奴はこの国だけでも50人いるかどうかって人数だ」


「それで、その習得条件って…」


ヒイナは恐る恐る聞いてみた。一体自分は何をするのだろうかと不安に思いながら。


「敵の攻撃を一日以内に1万回くらい回避出来れば習得出来るらしいぞ」


「ら、らしいって…」


「仕方ないでしょ?私は勝手に習得されてたし、キルシュガルドのスキルは殆ど譲り受けた物だから…」



…そして、地獄の特訓が幕を上げたのであった…



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