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アイビス!  作者: フユルト
第六章 流星は駆け、騎士は眠る
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餓狼の矢:炎嵐

くっ…モチベーションが…誰か、私にブクマと★4くらい…あとコメントを…あ、してくれてる人…本当にありがとう

カギラスの森の奥地にて、一人と一頭が相対していた…


「っ…」


『クククっ、それを避けるかッ!!』


フェンリルがその爪を凍った地面を抉りながら振るう。それによって、氷の礫が下から掬い上げるようにして飛ばされる。ネイルは〈マルチショット〉のスキルを使用して全て撃ち落とし、フェンリルへ反撃とばかりに矢を放つが、フェンリルが直後纏った氷によって本体へのダメージは無効化された。


ネイルは腰に下げていたホルスターから毒ポーションや麻痺ポーションを取り出して投げつけるが、フェンリルに触れた瞬間中の液体が凍り、全く効いている様子がない。


『“もっと力を見せてみろッ”…〈アイス・ブリザード〉ッ!!』


「くぅっ…」


フェンリルから放たれた凍りつく嵐に対して、ネイルはインベントリから寒冷耐性と氷結耐性のポーションを取り出す。前者を一気に飲み干し、後者を間に合わずに凍ってしまった左脚にかけて氷結状態を無効化した。


「…少し本気を出しますね」


そう言って、ネイルは火耐性のポーションを飲んだ後、今手にしている異邦人の鉄弓から赤黒い金属質な弓に装備を変更し、魔晶石系のアイテムを身に着ける。


「さぁ、晴れ舞台ですよ…【豪炎弓:火龍】」


その弓は、昔火の大精霊:ヴァトスに頼んだ品である。本来ならばもう少し早くに渡せる筈が、急遽断れない仕事の依頼が舞い込んでしまい、結局ネイルへ渡すのに時間が掛かってしまった。


ネイルが矢を火龍の弦にかけると、その矢はボウッと火を纏った。本来はこの弓を使用する場合自身にエンチャントされた火によって熱のスリップダメージが発生するが、火耐性のポーションによって無効化される。


豪炎弓:火龍の主な能力は2つ。

1つ目は放たれる矢全てに火属性をエンチャントする。

そして…


「〈インフェルノ〉」


その矢が勢い良く放たれ、フェンリルの足元を穿つ。その瞬間、放たれた矢を中心に炎が燃え広がり、大きな火柱がフェンリルの身体を焼く。


2つ目の能力は、MPを使用する事によって放たれた矢を中心に5秒間周囲に火炎属性を付与し、その後火柱を上げて更にダメージを与えるというもの。


『グガァァッ…中々、聞いたぞ…?』


フェンリルが氷属性なのに対し、こちらは火属性だ。属性の相性的にもネイルが有利なのだが…ネイルの最大HP量は今までポーションの成功確率を上げる為と戦闘に特化させていた為、たったの10しかない。つまり、もし不意を突かれてスリップダメージの発生する攻撃を受ければ一瞬にしてポリゴンとなって散ることになるだろう。


「短期決戦しかない…ですね」


ネイルはそう結論づけて、ホルスターからMP回復ポーションを使用した後、一本の矢を取り出し…フェンリルに背を向けて森の中へ駆け出した。


『む、正々堂々戦えッ!!逃さんぞッ!!』


「…別に逃げた訳じゃありませんよ?」


ネイルは木の枝に飛び乗り、巨木の天辺へ一気に駆け上ると、そこからスキル〈スカイリブ〉更に高く跳躍し、その矢をつがえる…


現在のネイルは、スキル〈独狼(ラスト・ウルフ)〉の効果で味方がいない場合全ステータス2倍の恩恵を受けており、更にフェンリルからの距離も離れている為スキル〈狙撃手〉の効果でSTRが2倍になっている。


「これが今の私の全力です…勿論、受けてくれますよね?〈グライストッ!!〉」


駄目押しとばかりに全MPを消費する代わりにダメージが消費したMPの数値分上昇するスキルを使用して、その赤と緑の色を持つ矢がフェンリルヘ向けて放たれる。


ネイルは短い会話の中で、フェンリルの性格をある程度把握した。このフェンリルは、正々堂々とした戦いを好み、その力を見る事に拘っているのだ。


『良かろう…その全力、撃ち破ってくれるッ!!』


…もし、この時フェンリルが避けていたなら、ネイルは敗北していただろう。ネイルとフェンリルの間にはステータスという大きな差がある。フェンリルの防御力を突破するのに、殆どのスキルをフル動員しなければ致命的なダメージを与えられない。


…だが、フェンリルは放たれた矢をその身に受けてしまった。


フェンリルの脇腹にその矢が突き刺さる。普通の矢であれば大した問題ではない。だが…その矢はフェンリルのMPを糧として力を蓄え…辺り一帯を吹き飛ばす程の炎と嵐を引き起こした。


その矢の名は、【餓狼の矢:炎嵐】という。


その矢の能力は、刺さった対象のMPを強制的に全て喰らい、それに応じた爆発ダメージを周囲に撒き散らすというもの。MP量の多い敵にとっては必殺の一撃となる矢である…それでも。


爆発が収まり、辺り一帯を土埃と灰色の煙が舞う。その中心地点もとい爆心地にフェンリルがいた。脇腹は大きく抉れ、まるで洪水のように赤いポリゴンを流して、体中傷だらけになりながら、満身創痍でありながらもその4本の足で立っていた。


『素晴らしい…だが、我、を、倒すに、は…』


フェンリルは、この時ネイルは先程の爆発に巻き込まれて死んだとばかり思っていた。それもそうだ、この惨状の中生きているなど思いもよらない。


直後、灰色の煙を掻き分けて黒ずくめの少女…ネイルが飛び出した。


「はああぁッ!!!」


…ところで、回復アイテムには何種類かの効果があるのを知っているだろうか?例えば、100や200の決められた数値分回復するものや、二割、三割などの“割合で回復する”物があるのを…


ネイルが左手で握ったポーションをフルスイングでフェンリルの脇腹に叩きつけると同時に、中の液体を浴びせられフェンリル自身のMPが五割、つまり半分程回復した。右手で逆手に握られた矢が自身の身体に振り降ろされる。


フェンリルは防ごうとするが、間に合わない。その身にもう一本の餓狼の矢が突き立てられる…




フェンリルの瞳に映ったのは、この一瞬に命を燃やしている紫髪の少女の姿であった…それが、神狼:フェンリルの最期であった。













〘緊急クエスト:白き神狼を討てのクリアを確認しました〙










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