ギリギリセーフ
ヒイナとネイルは昨日のうちに山岳エリアを抜けて、草原エリア内の茂みで交代で見張りをして迎えた2日目。
「そういえば、草原エリアの次は海洋エリアの筈だよね、どうやって海を渡るの?」
「あぁ、ヒイナさんは行った事ありませんでしたっけ?あそこの浜辺にはボートが設置されてるのでそれで向かいます」
「…ちなみに、運転できるの?」
ヒイナは心配そうに聞いたが、ネイルは堂々としている。
「えぇ、大会前にアオユキさんから1時間程のレッスンを受けたので問題ありません」
「なら大丈夫だね」と言うヒイナ。
アオユキは、バトル・フロンティア内の乗り物系全ての操縦技術をマスターしており、最近ではスポーツカーや高級車で敵を倒す奥義、“上級国民アタック”をして楽しんでいるらしい。
アオユキ曰く、「今度は両サイドにガトリング砲をつけて一掃したい」とのこと。
そんなアオユキの話に盛り上がりながら、2人は海洋エリアに入って行った。
一方、アオユキ達は〜
時刻は夜の7時を過ぎた頃、2人はまだ砂漠エリアに居た。
周りには先程まで敵が使用していた武器の山とそのアバターがゴロゴロと地に伏せていた。
「…グリス、もう移動しないと間に合わない」
アオユキは神妙な面持ちでそう言う。
一方グリスは肩で息をしながら「分かった」と返事をする。
あの戦闘の後、湿地エリアから来た敵と、戦闘音を聞きつけた雪原エリアからの敵によって挟み撃ちとなり、膠着状態となって朝を迎えた。
その後、どうにか勝利したものの、日付が変わる前に近未来都市エリアに移動しなければ範囲縮小によって強制敗北になってしまう。
「残り時間は…あと5時間!?」
グリスが驚くのも無理はない。現在地から近未来都市ヘ行くには、足の取られやすい砂漠エリアの2/3を移動して雪原エリアを抜けなくてはならない。最短距離で移動したとしても、残り5時間で辿り着けるかどうか微妙なところだ。
「アオユキ、オートマータのスラスターを全力で噴かせたら行けるか?」
その質問にアオユキは「多分」とだけ答える。
「どっちみちそれしか方法がないからな…やってくれ!」
アオユキはオートマータの掌にグリスを乗せて目的地へと向かった。
残り1分を切った所で、雪原エリアと近未来都市エリアの境界線が見えた…しかし、そこでオートマータの動きが止まる。
「…燃料切れ」
「ッ!!アオユキ、急いでそれを収納しろ、早く!!」
アオユキの背後の雪原がどんどん消えていくのを見たグリス。
アオユキは急いでグリスの元へ向かうが、AGLが低すぎてとてもじゃないが間に合いそうに無い。
「あーもうッ!!」
その姿を見てグリスはアオユキヘ逆走して、抱きしめると同時に左脚を軸にして体を反転させ、目的地である近未来都市ヘ駆け出す。
その背後から地面の崩壊が後を追うようにジリジリと迫ってくる。
「グリス、私を抱えて走ったら、間に合わない。適当に投げ捨てて…そしたら」
「馬鹿か、んな事するわけ無いだろうが!!それに、そんな事してもこの距離は無理だ」
アオユキはこの状況を打破すべく思考を加速させる…そして、何か思いついたのかグリスに自身の考えを伝える。
「…だから、私が合図したら、その瞬間にジャンプして」
「…分かった、信じるぞ」
アオユキはグリスの背後の少し下ヘ、細長の四角い箱の様なもの…レールガンの銃口を向けた。
そして、すぐ後ろまで崩壊が迫りグリスの足元を呑み込む瞬間…
「今!!」
その言葉と同時に、グリスは上空へ飛んだ。しかし、これだけでは到底届かない…だが、ここでアオユキはレールガンを放つ。
グリスとアオユキはレールガンの反動で更に加速し、地面に叩きつけられるようにして近未来都市ヘ入った。
「ハァ…ギリギリセーフだったな」
「…うん」
とある2人のプレイヤーは、近未来都市の入り口である道路で、大の字になってそう呟いた。
グリスちゃん本当にイケメン…女の子だけど




