去りゆく者、送り届ける者達
「…行ってしまいました」
思わず、私はそんな事を呟いてしまった。
あの人達は、戦う為にここへ来ている事を理解している筈なのに、何故こんなにも胸が締めつけられるのでしょうか…
「テラコッタ、そんなにアイツが心配か?」
そこへ声をかけてきたのはまるでタコのような頭をしているミナゴロシさん。
「心配?私はただ…」
「馬鹿か、この肉ダルマァッ!!」
ただ、あの人とまた会いたい…そう言おうとした筈なのに、気が付いた時には涙が溢れて…アスタさんがミナゴロシさんの背後から近づいて回し蹴りで向かい側の壁まで吹っ飛ばしてしまいました。
そこへ私にまるで寄り添うように背中を擦ってくるモモとカイト。
「テラコッタ、大丈夫なのか?…おいハゲッ!無神経が過ぎるぞ!」
「大丈夫?テラコッタ姉さん…ミナゴロシさんはただ心配して言っただけだから…って、アスタ姉さん!?それ以上やったら死んじゃうよ!!」
今にもミナゴロシさんに殴りかかろうとするアスタさんを、この酒場の店主であるロボットのマスターが必死に止めていた。
「てめぇ、うちの可愛い可愛いテラコッタを泣かせてんじゃねぇぞッ!!」
「アスタさん、それ以上やったら店の修繕費が嵩んでしまいますからッ!?」
…ミナゴロシさんの心配はしないんですね、マスター。
そんな光景を無視して、モモは私に優しく話しかけてくれました。
「大丈夫なのだ!!アイツは…H-17は絶対に勝って帰って来るから!!」
私が何故こんなに悲しいのか、始めは分からなかったのですが…モモさんの言葉でやっと理解した…というより、初めから気付いていました…だけどそんな事を考えたくなかったんでしょう。
「私は…あの人と、もっと話したい事が一杯あるのにッ…」
あの人が戦いに行く度、いつも怖かった。
もし負けてしまったら、あの人はまたここへ帰ってきてくれるのか不安で押し潰されそうだった。
この世界では様々な人達が、死ぬ事のない体で日夜戦っています。でも、以前までいた人がいつの間にか居なくなっていることなんて日常茶飯事で…いつ帰って来てくれるか分からないんです。
でも、あの人は凄いんです。私よりも年下な筈なのにあんな大人に一人で勝てるような強さがあって…いつも笑いかけてくれて、優しくてカッコいい…私が初めて好きになった人…まぁ、私と同じ女性なんですけどね。
今日、凄く嫌な人が来てH-17を潰すって言ってきたんです…私、本当は戦いに行って欲しくなかった、ずっと私の側にいて欲しかった…でもッ!!
あの人達は、この世界で戦う為だけに来ている事を知っているから…だから、私はあの時送り出した…H−17をあの黒いフードの女がいるであろう戦場に…
私はあの人を信じてる…だけど、もし負けてしまったらもう戻って来ないんじゃないかって怖かった、もう二度と会えなくなるのが嫌だった。
それでも、私達はあの人達プレイヤーを引き留めてはいけない…だって、あの人達は私達に会いに来たわけじゃなくて、戦場に行く為にここに来たんだから。
それを知っていて尚、私の…H-17だけはここに留まってと思ってしまうのは傲慢なのでしょうか?だけど私は…
「私は…信じてます。あの人はきっと、笑顔で帰ってきてくれますから。それを私は、また笑顔で迎えてあげないといけませんからね」
私は涙を拭いて立ち上がり、大きなモニターに表示された、H-17が行ったであろう戦場に目を向ける。
私達は見なければならない。彼らの勇姿を、プレイヤー達の生き様を…この目に焼きつけなければならない。
それが、酒場:英雄の集いである私達の…送り届ける者達の務めであるから。
…もしかしたら、貴方が去った世界でいつまでも貴方の事を思ってくれる人達が、いつか帰って来てくれる事を待っている知れません。
例えば、感情のない筈の…私達のいう【NPC】とか




