別れと大精霊
それから、ヒイナ達は再びログインして村の入り口に差し掛かると、キルシュガルド達と村人がなにか話していた。
「もう行かれるのですか?」
「あぁ、私らの任務は巫女の子供達を救出する事だからなぁ…急いで報告した方がいい案件だから、今回はもう帰還する」
「そうですか…呼び止めてしまいすみません」
と、巫女の一人である女の子…ステラが頭を下げて謝る。
「またいつか遊びに来るから、楽しみに待っとけよ?」
そう言ってステラの頭を優しく撫でた後、後ろにいる私達の方へ振り返る。
「お前らも元気でな!あと、カギラスの森に大精霊様がいるんだが、なんか問題が起きて巫女ですら連絡を取れないらしい。だから、お前らは巫女の子供達を連れて様子を見に行ってくれ」
「キルシュ達は一緒に来れないの?」
「私達はなんか森の大精霊様に嫌われてるからなぁ…心当たりがありまくって困るくらいだ」
笑ってそう言ったキルシュに対して、リニアスは冷ややかな目で見て、「私は完全にとばっちりでしたけど」と、少しお怒り気味だった。
そんな二人を見送ってヒイナ達は巫女の少女達に事情を聞いた。
どうやら、戻って来てからというもの何度念話を試しても応答がない様子。
「それに、私達が生きていけるのは大精霊様がいるからです」
何故かというと、この村はもともと近くの森から木の実や動物を取って生活していたらしい。
ある時、3人の女の子が森で木の実を拾っていると緑色の髪をした綺麗な女性が話しかけてきたという。
『ねぇ、いま暇?お姉さんと少しお話しようよ!』
まるでナンパのようなセリフにヒイナは苦笑いを浮かべる。
そして、その女性に今住んでいる村から若い人が離れていって廃村の危機にあることを伝えた。
『う〜ん、それなら…よっと』
女性は地面に手を添えた。ただそれだけで、そこにはそれぞれ、赤、青、緑、黄、白の葉を持った5つの木の苗が出現した。
その苗について女の子達にそれぞれ説明を始めたそうだ。
『赤色は害のある生き物を遠ざけて、青色はポーションの材料になるいろんな薬草を育ちやすくして、緑色はいいお茶の葉が出来るし、黄色は樹液がとっても美味しいんだぁ〜♡白色はとても良い木材になるから建築とかに最適だね♪しかも、燃えにくい傷みにくい防水性が高いから更にいいんだ!!』
女性は鼻息を荒くして、そう説明していたらしい…一歩間違えたら変質者だなぁ。
『管理は私がしてあげるから問題ないし、あとは売り出すなら名前をつけなきゃ!そうだなぁ〜名前は…君達の村の名前と同じ“カギラス”なんてどうだい?』
それから数日で、森が全てカギラスの木に変わっていた。
『あ、きたきた♪コレ、全部森で採れたものだよ!!』
女性はそう言って様々な薬草や、綺麗な緑色の茶葉、そして瓶に入った樹液を手渡した。
こうして、村が成長するとその事が王国の目に止まった。
一度、王国側がその森を手に入れようと強攻策を実行しようとしたが、女性の正体が露見した事により中止された。
彼女の名は森の大精霊:カノン、全ての自然を司る4体いる大精霊の一人である。
『あの、どうして私達なんかの為にここまでしてくれるのですか?』
『…?そんなの、君達が可愛いからに決まってるでしょ?』
『え?』
『だって、こんなに幼くて可愛くてしかも健気…ッいいよ、グッとくる♡』
そんな姿に冷たい視線を向ける女の子達だったが、カノンには“ご褒美”だったようだ。




