和解
さて、どうしたものか…と私ことヒイナは思考を巡らせていた。
戦う?レベルをカンストしている相手に?いかにもヤバそうな武器を持ってるみたいだし…というかスキルを129も持ってる化け物にどうやって勝てるだろうか。
ならば逃げるか?論外。仮に私が《流星》と《クル・レイド》を使って全力で逃げたとしても相手の能力が未知数な以上、下手に動けない。それに、ネイルと他にも子供達3人を抱えて?絶対無理。
ならば話し合い?お仲間をボコボコにした相手にまともに話をしてくれるだろうか…そもそも、副団長と同じで話をそもそも聞かないかもしれない。
となると、当初の目的である子供達の救出だけは達成しなければ…私達は死んでもゲームだから復活出来るが、彼女たちは?当然死んだら二度と蘇らない。
こうなったら、子供達だけを逃し私達が命懸けで足止めをするしかないと考えていると…それに気付いたのか、考えの中心であるキルシュ・ガルドは面倒くさそうにため息をついた。
「ハァ…あのな、私とこのバカはここに捕まっていた子供達を救出する為に来ただけだ、だからお前らと戦う気はねぇよ」
その言葉に安堵した私とネイルだが、脇に抱えられている副団長のリニアスは「ば、バカ…」余程キルシュ・ガルドにバカと言われて心外そうな顔をしている。
「あ?何言ってんだ、盗賊の規模がたった二人で?しかも年端もいかない女だぞ?国にとって重要な奴を誘拐して夜中にドンパチ騒ぎ起こしてそのままどっかに閉じ込めるわけでもなくのんびり楽しく会話してる奴らが?そんな奴らが盗賊として成り立つ訳ねぇだろうが」
論破されてぐうの音も出ないリニアス。
そんなことより…
「この子達が国にとって重要…?」
疑問に思って子供達の方を見ると、何となく理解はしている様子。
「あぁ?知らないのか?カギラスの森に住んでる大精霊の巫女達だよ…ちょっと待て」
それを聞いてもよく分かっていない私達に、キルシュ・ガルドは困惑していた。
「いやいや、流石に知ってるだろ!?この国で知らない奴なんている筈…【異邦人】?」
頭を抑えて考えているキルシュ・ガルドの目に、砕けた鉄剣の欠片に気付いた。
「あぁ…そういうことか、道理で知らないわけだ」と言って納得した表情を浮かべるキルシュ・ガルド。
そして、柄だけが残った異邦人の鉄剣を持っていたヒイナに目を向ける。
「なぁ、これってお前のか?」
「え?うん、そうだけど…」
「なら、ちょっとその剣の柄貸してくれないか?」
なぜ必要なのか疑問に思いながらも渡したヒイナ。
「じゃあ、代わりに何か…コレでいいかな?ほらよ受け取れ」
そう言って鞘に入った剣を前に突き出した。
ヒイナがその剣を鞘から抜くと、そこには真っ白な片刃の刀身が姿を現した。
――――――――――
【白竜の爪刀:十六夜】
:DP+1000
付与スキル:
《状態異常無効化》
《修繕》時間経過で修復する。
潜在スキル:
《月光の白竜》
:1分間、自身の全ステータスを50倍にし、種族を一時的に《竜人》へと変更する。
発動条件:呪文詠唱
呪文:
月の欠ける時、我はその欠けた一部を補おう…
月の満ちる時、我はそれを砕いてみせよう…
全ては、自身の御心のままに…唸れ!穿て!咆哮せよ!
自らを生まれ落としたこの世界に祝福と呪いの産声を上げろ!
我が名は、月光の白竜:グラリシア!!
――――――――――
「なッ!?キルシュ・ガルド団長!!それは…」
「あ?お前はちょっと黙っとけ」
「しかしッ!?」
何か言い争ってるみたいだけど…取りあえずヤバい武器なのはステータスを見たら分かる…それにしても
(月光の白竜:グラリシアってなんだろう…それに、リニアスって言う騎士の持ってる【白竜の双斧】と何か関係があるのかな?…というか)
「呪文詠唱が長いよ…」
戦いの中こんな呪文を詠唱していたら真っ先に狙われる…自分だって、こんなヤバイのを使わせない為に狙うだろう。
そして、なんとか場を収めて大精霊の巫女達だという子供達の村に向かう事になった。




