騎士は眠り、使者は会敵する
ヒイナ達の視点はそろそろクライマックスに入ります!!
…長かった(´・ω・`)
「ーーーんんっ?なんか変わった?」
「…」
首筋がチリチリする感覚を感じたクロエはすぐさまミレアから距離をとって話しかけるが、やはり会話は出来ないようでーーー
「ーーて…ぃ…」
「…?今、なんてーーー」
「逃げ…って、下さいッ!!」
ミレアはそう叫びながら、両手に握った黒い聖剣を地面に突き刺す。直後、ミレアを中心に黒いエフェクトが周囲へ放たれた。
「…ッ!!」
「くっ…!?」
「うっ、うぅ…」
その瞬間、クロエ、ネイル、ヒイナの全身を悪寒が駆け抜け、立ったままでは居られずに膝をついてしまう。身体に力が入らず、呼吸は荒くなり、心臓が煩く鳴り響く…そして、視界の端が黒くなっていき、視野が狭くなる。
「グウゥ…ッ!!」
「あ、あぁ…ごめん、なさい…」
身体に力を入れようと唸りながら歯を食いしばっているクロエの側に辿り着いたミレアは、頬に涙を一筋流しながら、隙だらけのクロエへ聖剣を振り下ろす。
「ーーー何やってるの、ミレア」
その言葉と同時にギィンッと金属音を鳴り響かせ、青年の握った聖剣が黒く染まった聖剣を弾く。
「え、あ…」
「ミレア…」
「だ、駄目…今、来たら…」
「…」
ミレアの言葉とは裏腹に、その身体は近づいて来る青年…アスタを斬り裂かんと聖剣を構えるが、覚束無い様子で後ろへ下がっていく。だが、アスタはそれに臆する事なく一歩ずつ踏み込んくる。
「嫌…やだっ!!アスタをっ、斬りたくないッ!!」
「…」
ミレアは必死になって身体を無理矢理捻る事で、振り下ろす聖剣の軌道を逸らすが、その剣先がアスタの頬を薄く斬り裂く。
「〜〜〜ッ!?」
「…」
アスタの頬から血が流れるのを見て、ミレアは圧し殺した様な悲鳴を上げながら、悲痛な顔をして瞳に涙を溜める。
…いくら自分の意志では無いからといって、己の手で一番大切な人を傷つけてしまった事実がミレアのメンタルに致命的なダメージを入れてしまう。
「嫌だ…嫌だっ!!早く離れてっ!!私は…っ」
「…」
まるで悲鳴のようなその言葉に、アスタは全く動じる事なく歩みを進める。どうする、どうすればいい…これ以上、アスタを傷つけずに済む方法は…
…もう、これしかない。
「アスタ、ごめんね…っ」
「…!!ミレアッ!!」
ぎこちない様子でミレアは身体を動かし…そして、笑顔で涙を流しながら、聖剣を自身の首筋に当てる。一体何をしようとしているのか気づいたアスタは一気に加速してその手を掴み、自害を中断させる。
「何で!?早く離してっ!!アスタ!!」
「ミレア…」
「駄目なのッ!!このままじゃ、私はアスタを…」
「ミレアッ!!」
アスタの声に、ミレアは反射的に肩を跳ねさせる。
「大丈夫だから!!」
「…っ…何が!!」
「僕が全部何とかするし、その為なら何でもしてあげる!!だから…僕を、信じて欲しい」
「………分かった…信じる、ね…?」
ミレアは決心したようにそう言って、口を結んで目を閉じる。アスタは、黒く染まった聖剣をミレアの手の上から被せるように触れて集中する。
…聖剣:アステレスの能力の根源はアスタとミレアの絆だ。絆が強くなる程所有者へのバフが強力になっていく。だが、重要なのはそれではなくアスタとミレアの絆がアステレスと繋がっているという事実だ。
「ミレアに扱えるなら、僕にだって扱える!!」
直後、アスタの魔力に反応して聖剣から白い光がゆっくりと溢れていき、聖剣とミレアから“黒いソレ”を押し出していく。
『ーーーーー!!!』
聖剣とミレアから弾き出された黒色がのたうち回り、やがてそのナニカは本来の姿を形作っていく。
「これ、は…?」
…それは全身が黒く、頭と右腕はなく左腕とその鉤爪を持つ歪な人型のナニカ。
〘深淵会敵!!〙
〘特殊クエスト:【深淵からの使者】を開始します〙
〘目標:【深淵:恐怖の使者】の討伐〙
都市にいる者達へ世界の声が響くと同時に、深淵の恐怖に遣わされた使者は己の敵へその異形な爪を向けた…
・深淵からの使者
深淵に存在する一〜十の真理と定義された怪物達に、己の存在意義を示すため遣わされた者達。己の存在意義と合致した者に宿り、その概念や感情を増幅させる事によって遣わした主と己の力を強化していく。
…尚、ミレアから現れた使者はまだ力が殆ど集まっていないが、遣わした者が一番ヤバい奴のためとんでもなく強い。




