私達は夢を見た
遅れてごめんね(´・ω・`)
…後書きの【警告】はちょっと消す可能性があります。結構ビルドワールドの世界の真相に踏み込んじゃってるので…
「第三部隊、各属性の拘束魔法を用意…放てッ!!」
「〈ファイヤチェイン〉!!」
「〈アイスバインド〉!!」
「〈アースチェイン〉!!」
「〈ウィンドバインド〉!!」
「〈ウッドロック〉!!」
左腕を火の鎖が、右腕を氷の鎖、岩の鎖が左脚、風の鎖が右脚を、最後に巨大な木の根がマリオネットゴーレムの胴体に絡まって絞め上げる。
「glooooooo!!!!」
マリオネットゴーレムの全身から、空気を振動させる程の咆哮が響き渡る。それと同時にその身体を縛る鎖が軋みだし、四肢に掛けられていた魔法が粉々に砕ける。そして、胴体に絡まった巨木の根を両腕に力を込めて引き裂いた。さらに、左腕が回復魔法特有の光を放ちだし、燃焼していた腕が治っていく。
「第一部隊は待機、第三部隊は自然魔法を使用できる者は脚を集中的に拘束、他は継続性のある攻撃魔法を胴体へ…第二部隊は引き続き第三部隊のサポート!!」
ティターニアはこの短時間である程度マリオネットゴーレムの特性とその弱点を導き出していた。
まず、マリオネットゴーレムの咆哮にはニ種類の効果が発動している。
一つ目は範囲内にある魔法の解除。ただし、岩や氷などの物理的なものではなく火や風などの魔力の塊で構成されたもののみが対象であること。それは味方に掛けていた筈の〈戦士の誓い〉が解除されたことでも証明される。
二つ目は振動による破壊。岩や氷の拘束魔法はこれで破壊されたと考えられる。単純に魔法を解除するだけなら自然魔法で作られた根も消えるはずだからだ。
(う〜ん…〈戦士の誓い〉が解除されちゃったか〜…)
ティターニアの使用した〈戦士の誓い〉は付与魔法系統の戦術魔法であり、効果は自身の指揮下にある味方のステータスを上昇し、スキルのクールタイムを減少させる。さらに、指揮下の味方の人数が多い程効果が上がり、付与効果の継続時間が長くなる。
彼女はMPポーションを飲んで魔力を全回復させて、手にした杖を水平にして瞳を閉じる。
『私達は夢を見た…』
………
……
…
『私達は夢を見た…』
「…ッ!!全員、なんとしても持ち堪えろ!!」
「「「ハイッ!!!」」」
自分の軍師が詠唱を開始したことに気が付くと、第二部隊の隊長である女性は自身が指揮する部隊に活を入れる。それに答えるように声を張上げると、後方で待機していた兵士が前方と入れ替わり、盾に力を込め直す。
『戦場に奔る残光、響き渡る声と金属音…』
その時、マリオネットゴーレムが大きく跳躍し、魔法を放つ第三部隊へ狙いを定める。
「「「〈略奪する視線〉!!!」」」
「…ッ!!『我がこの手は、遍く全ての友を護る為にかざす!!〈名誉の傷!!〉』」
第二部隊にヘイトが変わり、落下してくるマリオネットゴーレムに対してその隊長はスキルエフェクトを纏った左手をかざす。直後、マリオネットゴーレムと第二部隊との間に白い半透明の障壁が展開され、それに乗ったマリオネットゴーレムを遠くへ吹き飛ばす。
『その光景と残響に、誰もが心を奪われる…』
「グブ…ッ!?…ハァ…ッ」
第二部隊を守った障壁が消えた直後、その隊長が片膝をつき、血の塊のような赤いエフェクトを吐きながら口元を右手で押さえる。さらに左腕からもドバドバとダメージエフェクトが流れているが、女性は吹き飛ばしたマリオネットゴーレムから一瞬たりとも目を離さずに睨み続ける。
『そこに恐れや戸惑いはなく、ただ儚く綺麗で…』
「gugaaaaaa!!!」
「お前らッ!!行くぞッ!!」
再度の咆哮によって放った魔法が打ち消されていくが、第一部隊が強襲を仕掛ける。
「焼き斬ってやる…よッ!!」
第一部隊の隊長である男が大きく跳躍し、炎が纏われた大剣を振り下ろす。そこにゴーレムの腕が入り込み、炎の刃と合わされる。
「うぇっ、キモ…ぐおっ!?」
「「「「ーーーーーー!!!!」」」」
隊長の男はゴーレムの腕にあった顔達に思った通りの感想を述べたが、その直後にその全てが絶叫を始めた。
『私達の見たアレは…』
「あっぶ…!?」
ゴーレムは怯んだ隙を逃さず腕を高速で振るったが、隊長の男は即座に空中へ離脱し、身体を捻って着地した。しかし、事態はさらに深刻になっていく。
「ーーーーー…」
マリオネットゴーレムの身体全体から魔法陣が出現し、それら全てが第一、第二、第三部隊へと向けられていた。
『そう、きっとそれは…』
「ーーーーーーーッ!!!!!!」
色とりどりの魔法が咲き乱れ、業火が、激流が、風刃が、光熱が、重力が、暗闇が大地を削り、空気を裂き、空間を歪めて彼ら彼女らを呑み込まんと迫りくる。
『〈泡沫之夢〉』
その瞬間、あの破壊的な音が消えた。迫ってきていた魔法はまるで空間に溶けるようにして薄くなっていき、やがて見えなくなった。
…ティターニア・アウストラトスが所持しているジョブは、特殊職業:軍師、そして、魔導士派生上位職業:付与術師と吟遊詩人派生職業:歌い手である。現在は軍師と付与術師をセットしているが、補正がなくなるだけで歌い手のスキルを使えない訳ではない。
泡沫之夢は、付与術師と吟遊詩人のジョブを習得することで獲得出来るスキルである。系統的には歌魔法に属するそれは、詠唱を開始した瞬間から詠唱を聴いているあらゆる生命に対して付与:泡沫之夢が施され、詠唱を開始して発動するまでの出来事を全て無かった事にする。
それだけ聞けば強すぎると思うかも知れないが、それは敵が聞いていても作用されるため、敵に与えたダメージもリセットされる事になるのと、死亡した者には付与が解除されること、そして術者がダメージを受けて詠唱を中断すると効果が無くなるため、使い所が非常に限られる。
…だが、この状況では最善の選択だった。何故なら、自分達があの敵を倒す必要などなく、これはただの時間稼ぎでしかないのだから。
「…よぉ、遅くなったなぁ?」
「はぁ〜…もう、遅いよ?」
「わりぃ、ちょっと老人共を黙らせんのに時間掛かってな…」
「あ〜、それなら納得だね。あの人達、私が戦地に行くのにも反対してたしぃ〜…どんだけ保身しか考えてないのって、感じだよね?」
ティターニアとキルシュガルドが話している中、マリオネット・ゴーレムは一歩も動かない…否、動けないでいた。それは、キルシュガルドが片手間に掛けた数多の威圧スキルによる重圧によって、その行動に大幅な制限がされたからだ。
「…で、報告じゃあ防御を固めた魔術師集団って聞いてたんだが?あと、ゴキブリ並のしぶとさ付きとか」
「あー…なんか集まってあんなのになっちゃった」
「まぁ…困ってるかわいい後輩を助けるのも、先達の義務だからいいけどよ」
キルシュはティターニアの頭をポンポンと撫でて、背中に背負った聖魔剣:ディアルゴを片手で鞘から引き抜く。
『我が身は黒き暴虐』
ゆっくりと歩き出したキルシュが紡いだ言葉に呼応するように、ディアルゴの剣身が黒く染まっていく。
『我が力は破壊こそを是非とする。故に、我が前に立つは愚か者のみ』
『この身の矛盾をねじ伏せ、今ここに我が力を顕現する!!』
キルシュガルドがマリオネット・ゴーレムへ向けてディアルゴを大上段に構える。
『全てを喰らい尽くせッ!!〈ディザストラス:ノワール〉ッ!!!』
振り下ろされた大剣から、黒く染まった力そのものが溢れ出し、敵対した愚か者を呑み込む。
「ーーーー!?」
愚か者は必死に抗おうとするが、そんな事を純粋な破壊の力が許すはずもなく、その身を引き千切り、押し潰し、打ち砕き、斬り刻み、己の色で染め上げていく。
………
……
…
「さて…帰りますか」
剣身が白く染まったディアルゴを肩に担いで、キルシュガルドは振り向きながらティターニアへそう言った。
…そして、黒い閃光が収まったその地には、まるで泡沫の夢だったかのように敵の姿など影も形も無かった。ただ、黒い暴虐の破壊跡が残るだけであった…
【聖魔剣:ディアルゴ】
聖属性と魔属性という相反する力を宿した大剣。
本来の形は大剣ではなかったのだが、現在の所有者であるキルシュガルドが手にした事により形が変わった。
その能力は3つあり、1つは黒き力の解放、2つ目は白き力の解放、3つ目は…■■…◇…◆◇◇□……
【聖属性と魔属性】
世界の認識的には、聖属性は死者に対しての特効を持ち、魔属性は生者に対する特効だと考えられている。
…しかし、本来ならば魔属性などという属性はスキルにも魔法にも存在しない。
ディアルゴが魔属性などという力を顕現できるのは、その身に矛盾を抱えているからに他ならない。そして、魔族性は■■にいる者達の力そのものであるため、破壊という現象を起こせる。
…聖魔法も、厳密には死者に対してではなく下にいる次元の者達への特効である。
………
……
…
【ファイル名:警告】
〘記録者:???〙
『…これを読んでる者が、私の言葉を理解できるならば…恐らく、私達の計画は成功したのだろう』
『〈流星〉が、〈炎龍帝〉が…そして、〈聖光〉が死んでしまった今、残されたのは私と〈暴君〉…おっと、この名は嫌いだったか…おほん、残された私と彼女と実験体の子供達だけでは、もうこの世界の維持が不可能になってしまった…』
『あぁ、誤解しないでくれ…実験体というのは言葉の綾だ…皆、私達の大切な子供だ。だから…置いていってしまうのは辛いが、仕方ないことなんだ』
『話が脱線したが…私達は奴らとの戦闘を進めるうちに、▲◆□○▶◀に法則性があることを発見した。そして、奴らは★■に▲◆しないことも分かった。それを利用して、私達は奴らを討伐するのではなく生け捕りにし、封印することで危機を食い止めることが出来た』
『だが、それは時間稼ぎに過ぎない…恐らく一番下の方であろう奴を使って封印したが、一万年程は持つ計算だ。でも、奴らに常識は通用しない。故に、絶対などという言葉は存在しない。』
『これは、実際にあったことだから言っておくが…奴らがたとえ言葉を使って話しかけてきても、絶対に相手にするな、徹底的に排除しろ…奴らは君達のことなど餌かあるいはサンドバッグ程度にしか思っていないのだから』
『…はぁ、こんなことを忠告しなければいけないのは、奴らと対話して「和平を結んだ」とか言った国があったからだ…まぁ、すぐに滅ぼされていたが…』
『いいか、君達には私達が与えた力を持っている…それは、君達の潜在能力を引き出し、新しい力に変化させるものだ…絶対とは言わないが、人同士で争うなんていう馬鹿なことはしないでくれ、それはこちらの戦力を潰すだけの愚かな行為だ』
『最後に…二つだけ、伝言を頼みたい』
『私達の子供達に…そうだな、彼女達はーーやーーのお話が好きだったから、恐らく【ーーー】と名乗っているだろうから、私の名前を言ってから伝えてくれ…』
『伝言は…「どうか幸せに…愛している」と、伝えて欲しい』
『………もし、威圧が凄くて、無駄に強い黒髪に赤い瞳をした、背の高いガサツな女性を見つけたら…「生き抜け、顔を見せるのはもっと先でいい」と…』
『あぁ、そうだ…私の名前を伝えていなかったな…』
『私の名前は…』
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