↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイビス!  作者: フユルト
第六章 流星は駆け、騎士は眠る
108/116

咆哮










「…」



「邪魔…よッ!!」



クロエとミレアが戦闘を始める前、ハデスとミストルティンは青い線の入ったフードを被った集団と戦っていた。



「ハデス、先にミレアの元へ向かってちょうだい」



「ん」



ハデスは地面に触れて闇に入り込む。それに気づいた集団の一部が光魔法を使用して周囲に閃光を撒き散らして暗闇を消し飛ばす。それにより、ハデスは暗闇から弾き出されたが、身体を捻ってミストルティンの真横へと綺麗に着地する。



「鬱陶しい…」



「えぇ、本当に…そうねッ!!」



此方へ向けて撃ち出された多数の氷柱を叩き落としながら、ミストルティンとハデスは会話をする。



「ハデス、この集団の目的は…」



「明らかに足止め…多分、ミレアの所へ行かせない事が目的…」



「やっぱりそうよね…しかも、ハデスの対策に光まで使ってきてるわ…」



「大して強そうじゃないのに、あれだけ撃って魔力が残ってるの、おかしい…」



「ここは、無理にでも斬り込むしかなさそうね…“リスタ”、借りるわよーーー《流星剣術》」



その言葉と同時に、ミストルティンは空中に風の足場を幾つも生成、そこを立体的に移動しながら撹乱し…隙を突いて集団の1人を斬り伏せる。



その直後に炎が飛来したが、即座に離脱した為無事であった…しかし、斬られた1人はふらふらと立ち上がり、何事も無かったかのようにまた魔法を放ってきた。



「なんなのこいつら、かなり深く斬ったのになんで呻き声すら上げずに復帰してくるのよ…斬った感触はちゃんと人間だし…」



「ん、不気味」



このままではジリ貧、しかし相手は全面に盾持ちが並んで、後方には数百くらいの魔道士が魔法を放ってきており、これ以上接近すれば格好の的だ。



…だが、ミレアを助ける為とはいえ、この集団を無視して進むのは不味い。今、王城の守りにはキルシュガルドが着いているが、そこから離れてこれに対処するのは守りが薄くなってしまうため駄目だ。しかし、他の騎士達ではこれらの相手は荷が重すぎる。



「はぁ…ここにあの子がいれば…」



「ーーーやぁ、お困りかな?」



その直後、敵の集団に爆裂魔法が複数放たれ、フードを被った敵達が宙を舞った。それに気づいた敵はそちらに視線を向けるが、雨のように矢が降り注いだことで次々と撃ち抜かれていく。



「…ん、遅い」



「いや〜、これでも急いだんだよ?ただ、ちょっと向こうの国が渋ってきたから遅れちゃって…」



「いいえ、ちょうど良かったわよ?“ティターニア”」



グラミリオ王国の紋章を入れた魔術師の外套を着た少女…ティターニアは、ミストルティンに頭を撫でられて嬉しそうに笑みを浮かべる。



「うへへ…っと、もう!!子供じゃないんだからやめてよっ!?」



「あら、私から見ればまだ赤ん坊よ?」



「むぅ〜…」



ティターニアは不満そうに頬を膨らませるが、エルフである彼女にとっては確かに赤ん坊のようなものだ。その時、黒ずくめの人物が影から現れ、ティターニアに知らせに現れた。



「指揮官、敵が体制を立て直しました」



「む、もう?」



「はい、現在は魔法による爆撃を行なっておりますが、結界を張られてしまい、膠着状態です…そして、爆裂魔法によって吹き飛んだ敵が這いずりながら魔法を使用してきたようです」



「えぇ…まじ?」



「その情報は本当よ?」



「まぁ、こっちは第一から三小隊までを編成して急いで戻ってきたから余力はないし、包囲殲滅は無理だしぃ〜…」



「私が〈千剣〉を使う?」



「いや、これってミストルティン師匠の足止めが目的なんでしょ?なら、それは悪手だよ」



「…相変わらず、貴女の察しの良さは凄いわね」



この集団の目的を言い当てた事に、ミストルティンは素直に驚く。



「いやいや、この集団を潰すのが目的なら始めから近衛騎士団長に任せればどうとでもなるでしょ?それなのに、この国で三強のうち二人をわざわざ対処に当たらせるわけが無いから、恐らく別の目的のために向かおうとしたらこの集団にぶつかったとか?…そういえば、ミレアちゃんは?あの娘なら寝ててもミストルティン師匠が動いたら気付く筈だし、ここにいないってことは大方あの娘に何か問題があったんだよね〜?」



ティターニアの推測はほぼ当たっていた。実際に、キルシュガルドであればたとえ異常な程のしぶとさを持つ集団相手でも、塵も残らず消し飛ばす事が可能だ。それが出来ないのは、王城の守りには必ず三強のうち一人がついていなくてはならない為だ。



ハデスは強いのだが、どちらかというと奇襲よりの単騎特化型なので戦線を支えることが出来ず、かといってハデスが影に潜って王城にいるキルシュガルドと交代しようとしても、あの集団に妨害されてしまっていたからだ。



「ハデスは王城の警護をキルシュガルドと交代、私達はあの集団を押さえつけておくので、ミストルティン師匠は目的を最優先で」



「あら、大丈夫なの?」



「大丈夫、大丈夫〜あの集団を足止めするだけなら私達だけでなんとかなるしぃ〜♪」



「そう…任せたわよ」



「よろしく」



「りょ〜か〜い、師匠も頑張ってね〜」



その言葉を聞いてハデスは影に潜り、ミストルティンはミレアの元へ向かった。それを見送り、ティターニアは小さく咳払いをして、真面目な表情になって戦線を見る。



「全部隊、傾聴ッ!!」



ティターニアの力強い声に、戦闘中の味方は敵を睨みながらも、その言葉を聞き逃さまいとする。



「私は弱いーーー魔王を討伐する勇者でも、伝説の英雄でもない…諸君らに比べれば、枯れ枝と同等の脆弱な存在だ」



およそ士気を上げるには相応しくないような言葉…



「…だがッ!!」



ティターニアは即座に、先程の弱気な言葉を覆す。



「私には諸君らがいるッ!!こんな私の指揮下に入り、私に命を預けてくれる勇猛な戦士達がッ!!」



「諸君らは戦士なのだ!!故にこの私…グラミリオ王国軍師『ティターニア・アウストラトス』が宣言しよう!!」



杖を自身の真下に突き刺す。その直後、ティターニアを中心に橙色の魔法陣が現れる。




『武器を握れ!!その名を掲げろ!!』




『戦場こそが我らの墓標!!』




『敵と己の血に染まり…それでも尚ッ、分かち合ったあの言葉…』




『〈戦士の誓い(ウォリアーオース)〉!!!』




その瞬間、戦場にいたティターニア直属のグラミリオ兵全てに橙色のエフェクトが付与された。



「お前らッ!!俺達の軍師様がわざわざ発破掛けてくれたんだッ!!たかだか数百人程度、さっさと潰すぞ!!」



「「「「「「オウッ!!!!」」」」」」



第一部隊の先頭に立っていた男が声を上げると、背後の兵達も呼応するように己の武器を掲げて叫び、敵へ突撃を仕掛ける。



それに対して、青い線の入ったフードを被った集団は大量の魔法を浴びせて来る。



「合わせろ…今だ!!」



「「「〈略奪する視線(スティールゲイズ)〉!!!」」」



盾を持った第二部隊の指揮を執っている女性が合図すると同時に、全員がスキルを発動しながら盾を振り下ろして地面に突き刺す。その瞬間、第一部隊へ放たれた魔法が軌道を変えて第二部隊に降り注ぐ。



「いくぞッ!!〈守護者の領域《ガーディアン・フィールド》〉!!」



指揮を執っていた女性がスキルエフェクトを纏った右の手のひらを空へ掲げると、半透明の白いドーム状の結界が女性を中心に第二部隊を覆い、飛来する魔法から守った。



「よ〜し…みんな!!やるよ〜ッ!!」



「「「過重重力圏《オーバーロード・グラビティ》!!!」」」



それを横目で見ていた第三部隊の少女の言葉と同時に、敵集団の上空に紫色の魔法陣が何重にも展開されると同時に、敵は過剰な重力によって地面に叩きつけられる。



そこへ第一部隊が到着し、第三部隊の魔法から逃れた敵を各個撃破していく。第二部隊は敵のヘイトを自分達へ向けるスキルを使用しつつ、近づいてきた敵を盾で横薙ぎにしていく。



「これなら、キルシュガルド殿を待たずに決着が着きそうですね」



「うん…」



諜報部隊の男がティターニアに話しかけるが、彼女は眉を寄せながら、スキルの〈俯瞰する瞳〉を使用して上空から戦場を見ていた。



「…ん?」



そして、第三部隊によって重力圏に囚われている敵の集団に注意を向ける。敵は重力圏から抜け出そうとするのではなく、何故かその中心へ集まって行き…その時、彼女は首筋に冷たいナニカを浴びせられた感覚に襲われた。



「ーーーッ!!第一部隊、即座に戦闘を中止して後退!!第三部隊は重力圏を維持しつつ後退、第二部隊は第三部隊を背に守りながら後退せよッ!!これは“命令”だッ!!」



彼女は命令という言葉があまり好きではない。



それは、『戦場に立てばお互いの立場など関係なく、同じ戦士であり、仲間である』というのが彼女の考えなので、あくまでも対等なのだ。そのため、あくまでも彼女は彼ら彼女らに指揮をさせて貰っているのだと自身を律している。



そのため、彼女が何の意味もなく命令という言葉を使わないことを、彼ら彼女らはよく知っている。故に、誰もがティターニアの後退命令を疑問に思うことなく、それに従って後退を始める。



重力圏の中心に、大量の敵がどんどん重なり合っていき、一つの山になっていく。そしてそれは蠢き…巨大な人の形になった。



『vorrrru…』



その巨人は自身の上空に張られた魔法陣の両端を掴む。



「なっ、魔法陣に干渉してる…ッ!?」



『voo…guooooa!!!』



塊の巨人…マリオネットゴーレムによって魔法陣がピシピシッと悲鳴を上げーーー雄叫びと同時に魔法陣を木っ端微塵にした。



・流星剣術

かつての英雄、星騎士リスタが編み出した剣術。

その真価は圧倒的速度と空中での立体機動による変則的な移動で、相手に対応させずに斬り込む事である。





・状態異常:【玩具状態】


■■の■■が使用する精神系統の魔法によって陥る状態異常。この状態になると人格が封印され、痛覚などが完全に遮断されたり、簡易的な行動しか取れなくなる。支配者側の命令を無条件に従うが、複雑な命令は理解できない。この状態になると身体に青いラインが浮き上がるため、見分けることは容易だ。

この状態はINTの対抗で無効化できる。




・傀儡人形【集合体】(マリオネットゴーレム)


■■の■■によって作り出されたゴーレム。

傀儡(玩具状態も含む)を塊にして制作され、主に操作は集合体の一体が本能で動かしており、支配者からの簡単な命令ならば理解できる。一定のダメージを受けると、ダメージを負った部位が剥がれ落ちる。

ちなみに、マリオネットゴーレムの発声器官は取り込んだ身体の全てである。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。