流星は駆ける2
ハデスと別れて数十分後、ヒイナはミレアとの戦いに順応していた。
「ーーーッ!!!!」
「よっと」
突然の行動パターンの変化に対応が遅れたヒイナだったが、ただ愚直に振り下ろされる剣程度ならば避けるのには苦労しない。
「ーーーーーーッ!!!!!」
ミレアが何か溜め込むモーションをした瞬間にバックステップで距離をとる。直後、周囲に衝撃波を放ちながら声にならない叫び声を上げる。
「ッ!!」
「それも対策済みだよ」
叫んだ後にミレアは、高速で距離を詰めてからの拳による一撃を放つ。何らかのバフがあるようでそれなりに火力があるのだが、ヒイナはその腕を掴んで背負投げをして防ぐ。今はなれたものだが、初見でヒイナがしゃがんで回避した時に、背後の民家が倒壊したのには肝を冷やしたみたいだ。
一時的にスタンが入ったミレアから距離をとり、ゲーム画面を呼び出してクエストを確認する。そこには〘流星は駆け、騎士は眠る〙というシナリオが新たに追加されていた。
ーーーーー
特殊シナリオ:
〘流星は駆け、騎士は眠る〙進捗度:1/3
参加人数:無制限
目標:
ミストルティンが合流するまで時間を稼ぐ。
報酬:???
ーーーーー
「これは、ミレアちゃんを助ける方法が残されてるってことかな…?」
このクエスト…ではなくシナリオの目標は、あくまでミレアを倒すことではなく時間を稼ぐとある。進捗度で目標が更新されるようなのでまだ確定ではないが、それでも希望は残っている。
「はいっ、そこォッ!!」
「ーーー」
一瞬にして距離を詰めて来たミレアに対して、ヒイナは〈レコグナイズ〉を使用して思考を加速させ、一歩踏み込んで腰に溜めた拳を振り上げ、低姿勢のミレアの顎を撃ち上げる。〈流星〉のSTR強化と〈クルレイド〉によるステータス上昇効果で爆発的な火力を生み出した。
「ーー、ーーーッ」
ミレアはその威力によって宙に舞ったが重力に引かれて地面に激突、今度はかなり長めのスタンを受けているのか苦しげな顔をする。
(そろそろポーションの在庫が無くなるから、早く来てくれないと不味いなぁ…)
実際の所、ここまでヒイナが生き残っているのは〈流星〉と〈クルレイド〉のおかげである。しかし、それぞれMPとHPを消費していくため、ポーションを消耗してしまっていた。
「ーーー」
ミレアはズガンッと石畳に両手で聖剣を突き刺した。その瞬間、そこを中心に黒色の魔法陣が地面に展開される。今まで、ミレアはこのような行動を取ったことがない。それを警戒してヒイナはさらに集中する。
「さーて、なにっ、うおおぉッ!?!?」
それを避けれたのは偶然だった。極限に近い集中をしていた為、ミレアが突き刺した聖剣を握り直したのを見て即座に動いたのが功を奏し、黒色のレーザーが髪の毛数本を斬りとられただけで済んだ。
「今度はこっちか…らァっ!?」
踏み込んで一気に加速しようとしたが、何故か前のめりになって地面に倒れてしまった。
「どうなって…って、〈流星〉と〈クルレイド〉が消えてる!?なんで!?」
ヒイナが困惑している間に、ミレアに至近距離まで接近されていた。
「…ッ!?〈レジストポスチャー〉!!」
「ーーーー」
ヒイナはスキルを使用し、黒い粒子を纏った聖剣を受け止めーーーられなかった。
「え?」
ガードしていた十六夜からスキルのエフェクトが消え、振り抜かれた聖剣によって身体が浮いた直後、大通りの奥へ弾き飛ばされた。
「〈コンバットストライク〉!!!」
空中で身体を捻ってスキルを発動し、逆手で十六夜を突き刺して地面を斬り裂きながら勢いを殺した。
「う、腕が痺れる…なんで、さっきはスキルが使えなかったのに…?」
両腕を軽く振りながらヒイナは思考を巡らせる。
「そういえば、スキルが使えなくなったのは聖剣に黒いエフェクトがかかってから…いや、あの黒いレーザーから?」
…そして、ヒイナはある仮説に辿り着く。
「…まさか、あのエフェクトに接触したらスキルを解除される…?」
そう、ミレアが使用したのは〈絆を断ち切る者〉という名のスキルで、接触した相手の使用しているスキルを全て解除する効果がある。
さらに、〈流星〉と〈クルレイド〉のクールタイムはまだ終わる気配がない。そのため、ミレアの聖剣を振るう速度に対応できず、スキルを無効化されるため防御することも難しい。
「あはは…どうしよう」
こちらへ無表情で悠々と歩みを進めるミレアを見て、ヒイナは苦笑いを浮かべた。
…実際、〈絆を断ち切る者〉をミレアちゃんは習得していません…それと真逆のスキルは持っているんですけどね?




