第五十五話 忘れるってよくあるよね
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由依がこの世界に来てから三年がたち、数年ぶりに妙な夢を見た事から始まった。
いつものように朝の日課を済ませ、今ではソグラの店舗兼自宅内に設置してあるお風呂に入りさっぱりして、朝の開店前の仕込みをしようとすると、店の入り口が開かれた。
「三年ぶりに漸く来てみれば、店は無くなっちまってるし、慌てたんだぜ」
「どちらさまでしたっけ」
「おいおい、お前さんが最初に店に来た時に依頼を受けた冒険者のダラムンだよ」
「あーああ、あぁ魔法を教えて下さったダラムンさんでしたか。お久しぶりです」
久しぶりなのと折角来て下さったという事もあり、ソーさんの同意も得られたので、一緒に朝食をとることとなった。
「それでスマン嬢ちゃん、手掛かりは無かったが、妙な噂だけは有った」
「妙な噂ですか」
「今回その噂を聞いたんで、飛龍を乗り継いで急いで戻って来たんだが、ここから大分離れたところにある都市が、新たな種族と友好を結び、その種族がその都市の領主の領として認められるそうだ」
「それでなぜそのことを伝えに急いで戻ってきたのですか」
「それがな、嬢ちゃんにもらったイチエンダマなんだが、あれ二つとも手元から放出することに成っちまったんだ。おかげでこの三年にかかった費用の倍以上の金額にはなったんだが」
「その放出することに成ったのに関係が有るのですか」
「ああ、それがなその領主が、イチエンダマを売るところを見たらしく呼び出されてな、見せてくれと言われて見せたら『これがあの御方の世界の通貨か何故柔らかいのだそれに何という細かい細工これを譲ってくれ』とまあそんな風に言うんだよ」
「あのお方ですか、ふうむ夢と関係が有りそうですが、そこまで行くにはどうしたら」
「ああ、普通に旅したら半年はかかるぞ、今回は急ぎだったんで飛龍を乗り継いで無理やり半月で帰ってきたが、それもお嬢ちゃんからのイチエンダマが有ったからで、普通ならそんな事をするだけでも破産しちまう」
「なるほど、因みにその領主へ向かって手紙とかは出せるのでしょうか」
「まあ、出来ない事は無いな。ただし最低限信用のおける者が出さないといけないから、この街の領主かそれに近い役職を持つものでないと無理だ」
「なるほど、ならば何とか成るかもしれませんし、依頼はここまでで十分ですありがとうございました」
「残りの金はどうすりゃいいんだ、もらいすぎじゃねえかと思うんだが」
「いえ、それを大金に変えたのはあなたの手腕ですし、そのままでいいですよ」
「そいつは有りがてえ、じゃあまた宿をとってから夜にでもくらあ」
そういってダラムンは去って行った。
案の定昼には領主が変装してやってきたので、お願いを書いたメモをしたためておき、会計の際にお釣りと一緒に手渡した。
三日後に領主より呼び出しが有り、それに応じる形で領主の館へと向かった。
馬車での迎えだったため、それに揺られながら自分たちのしでかした結果をのんびりと眺めつつ領主の館へと移動していく。
現状この街ではサワダ地区と、中央を持って反対側の商人ギルドなどが有る商業地区が、ほぼ同じくらいの活気を持っている。
技術を学び身に着けた子供たちが店で一生懸命に働く、店の中でも熟練者たちは、その子供たちを指導しつつ更に自分の技術に磨きをかける。
子供たちの発想は、幼いからこそか突飛で、それが刺激となり新たな技術として熟練者たちが昇華する場合もある。
そしてそれらにより新たな技術が生まれを繰り返す。
初めに変化が訪れたのは、子供たちの遊ぶ遊具であった。
裕福な子供たちの遊具は色々とあるが、それ以外の子供たちの遊ぶものは意外と少ない、木登りかけっこ鬼ごっこなど、自分たちの体一つで出来る事しかなかったが、最近では掃除道具を改造されたものが生まれ、子供たちはそれを押して街中を走り周り、集めた物の量や珍しさと速さで順位を競うという妙な遊びが流行り始めた。
ルールは単純で、人に迷惑をかけない、掃除なのだから散らかしたり汚さないこれだけだ。
最初は何をやっているんだと思われていたが、集めた物をごみと落し物と再利用出来る物に仕分けし、サワダ地区組合受付に持っていくことで、お駄賃がもらえる様だった。
結構落し物は多いようで、問い合わせがくる事が多発していたが、この子供たちによりそれも持ち主に返る事が多く、半年の保持期間が過ぎた場合のみ、再利用店舗の商品に並べられるようにした。
今日も移動している際に、そう言った子供たちが走っているのを見かけた、あまり豪快に走るのではなく、人を躱しながら誰もが興味を持っていない落とし物やごみをほいほいと回収していた。
「最近はごみ回収の子供も問題になりつつあるんです」
馬車の中で、そう言われ何故かを尋ねたところ、そういう子供が増えすぎて子供たちの中で縄張り争いが発生してしまっているとか、それだけを頼りにして働かない親が出始めたとかいう話だった。
掃除道具自体を一度全て回収して、貸出制にし領主側で管理したらどうですと提案しておいた。
こんなものは一度回収してしまい、貸出制にすればやった日から一定期間はその子には貸し出さないという決まりでもつけておけば、掃除だけで稼ぎすぎるという事態も回避できるし、現在サワダ地区組合で管理している落とし物なども、領主側で引き継いでくれれば、現状そちらに割いている分の労力を抑えられるため、此方の人手不足も解消される。
一理ありますな、考えてみましょうと言っていたので、そのうちやってくれると信じたい。
そう言う話をしていて気づけば領主の館の前についており、そのまま馬車を降りて館の中へ案内された。
来客室らしき場所に案内され暫くすると、領主がやってきた。
「先日のあれは何が頼みたいんだ」
自分のこの世界に着たいきさつは、以前話してあるので、同郷の者がいるかもしれないので、先日聞いた街の領主あての手紙を出したいと話した。
「そのぐらいなら問題ない、私の手紙の中に封書にでもしてもらい一緒に入れる事に成るが、それで構わぬか」
「問題は有りません、ですがそうですね。領主宛てと、その人たち宛てで二通書きたいのですが」
「それも構わん、ただし料金はそれなりにかかるが構わないか」
「今なら問題なく払えるかと思いますが、証拠としてこれも入れようかと」
「それが例の、わしにもくれんか、そしたら料金はこちらで持つが」
十円玉を数枚取り出し、何枚欲しいかと聞いたところ一枚で良いと言われた。
なんでも、こういったものは数持つよりも一枚だけにした方が、価値が出るとの事だった。
そしてその場で、手紙を書くこととなった。
文字はここ三年ほどで完璧に書けるように成って居たので問題なく、領主宛ての手紙には、もう一通したためていますが、もしその方が笹山さん達ならば、お渡しくださいという内容で、依頼料代わりに十円玉を一枚入れた。
もう一通は、あえて日本語でシイさん宛てで書いた。
夢の事、今までの事などいろいろ書いておいたが、会えることなら会いたいとも書いておいた。
手紙を書き終わると、領主は明日早朝に出して言い、急ぎ手紙として出すので届くのは、半月後ぐらいだろうという事をおっしゃった。
お礼を言い退出しようとしたところで呼び止められた。
「そのうち以前作ってくれた月餅と杏仁を差し入れで持って来てくれんかのう」
たまたま遠くからの行商が市場に来ており、そこで材料が手に入り作った時に、店内に居た少ない常連と一緒に食べたのだが、その時たまたま領主も居た。
正直あれ以来材料が手に入って居ないのでどうしようもないと伝えたが、必要なものを聞かれたので、足りないものを答えておいた。
少々難しそうな表情をしていたが、何とかしてみようと言っていたので、もしかすると手に入れてくるのかもしれない。
帰りも馬車で案内されたが、市場で下して貰い店で使う物で余剰になっても問題ない物と、自分的に欲しそうな物を幾つか購入してからお店へと戻った。
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