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第五十四話 どうしてこうなった

誤字脱字などございましたら、感想や活動報告へのコメントなどで教えて頂けると助かります。

 由依がここに来てから二年半ほどが経ち、路地裏にあったソグラの店も今ではこの街に新たに出来たショッピングモールへと移動していた。

 年数がたって気付いたことだが、由依は年を取って居ない見た目だけではなく、商人ギルドのカードの方も、毎年更新してみてはいるのだが、年齢欄などは一度も変動したことが無い。

 一度ソグラに頼んで見せてもらったのだが、そちらはきちんと更新されていたので、商人ギルドのマスターと相談してみたが、見た目も変わってないし、壊れている訳でもないから、良いんじゃないかと言われてしまった。

 そうなった原因も、由依が折角ですから昼もお店をやりましょうと提案してきたことから始まる。

 ソグラは基本生活できていれば十分という感覚しかなかったらしく、自分に何かあった時はのたれ死んで終わりだという気分だったようで、それを聞いて由依が憤慨し説教を行い、折角苦労して商人ギルドに参加したのだから、人を雇い入れて弟子を作り、老後も安心して暮らせる様にしなさいと説得された。


 この街では、老後は面倒を見てくれる者が居ないと大概がスラム落ちをし、そのままのたれ死んでいるというのだ。

 それを聞いて、一度スラムを訪れてみたが、老人と子供ばかりで、大人と言える者たちはほとんどが居なかった。

 そこに居た子供たちも、どこか飢えていて気力が無さそうだったり、それなりに食べているであろう子供は、どこかしら犯罪を行っていそうな雰囲気を持っていた。

 飢えていた子達の中で今すぐに手を施さないといけない女の子を見つたので、ソグラと交渉をした後声をかけいくつかの質問をするとコクリと頷き気を失ったので、急いで保護し果物のしぼり汁から始め徐々に食事を与え体調を取り戻させた後色々と教えてみた。

 その子は元気を取り戻し、恩義を感じたのか、言いつけをしっかりと守り、教えたことも失敗はある物の徐々にこなせるようになり、暫くすると失敗もしなくなり、店の中の事も大概こなせるように成って居た。

 最初の頃は、店の前で掃除をしていると、スラムに居た悪さをしていた子たちにからかわれたりしていたが、しっかりとやっているのを認められたか興味をなくされたか、次第に誰も来なくなっていた。

 その子は私と同じ部屋で一緒のベッドで寝ている、この店舗は人が住める部屋が二つしかなくソグラと私の部屋しかなかったからだ。

 まだ子供とは言え女の子をソグラと一緒の部屋で過ごさせるのもよろしくないと思いそうした。


 そこまでやって思いついたのがこれだ、ソグラと同じような感覚で、適当にしか店を経営していない者たちを集め、自分たちが教え育て、自分の仕事を任せられるようにして楽をしつつ、お金を貯めたらどうかと提案した。

 当然、そんな事が出来る筈はないと、言い出し帰る者が殆どであったが、そういう中でも老後のスラム落ちは嫌だと思い、この提案に少しの期待をかけて残った者たちが居た。

 残った者たちを集めテーブルに着いてもらい、飲み物と軽く摘まめるものを作り配膳してもらった。

 大概が、一人で経営している小さな店の店主であったが、一部大店舗を抱える者も残っていた。

 なぜ大店舗を抱える者がいたのかを疑問に思い質問してみると、子供に恵まれず後添えにも先立たれ、このままだと世話をしてくれそうなものが居ないという事だった、今店に居るのは皆のれん分けを狙い、このまま店を継ぐつもりのある者はいないとの事で、そこを解決できるのであれば試してみたいと言われた。


「実にですね、スラムの子供でも、犯罪を犯さずただ辛うじて飢えをしのいでいる子達は居るのです」

「信じられんね、あんなところ近寄りたくもないが」


 そう言うと思いました。


「も、申し訳ござっございっございません、臭かったり、あそっあそこの雰囲気が、出てしっ出てしまいましたでしょうか」


 配膳していた可愛らしい服装をし、艶のある白に近い銀髪を後ろでまとめた少女が、唐突に目に涙をたくさん貯め、泣きそうになりながら、震えた声で頭を下げて謝罪する。

 少女の名前はミハイエそのスラムで瀕死だった子だ。

 それを聞いて、席に着いていた者たちは驚いた、口々にまさかそんな、あそこに居た者がここまでになど、信じられないとばかりにぶつぶつと言っていた。

 ミハイエを抱き込み、そんなことは無い大丈夫だから安心してと私は落ち着かせ、元の位置に戻らせる。

 グシグシと涙を袖でぬぐいながら戻って行ったせいで、袖が少々ヨレヨレになっていたが今は気にしない。


「もちろん、あなた方の様な海千山千の方々なら私より見る目はございましょう、もしかするともっといい子を見つけ、保護し育ててさらに富を築けるかもしれません」

「私は子供を育てたことが無いからわからんのだが、見つけたとしてその辺りはどうなのだ」

「そんなのはほら、親しい方で子育ての経験がある方にでも聞けばいいじゃないですか」


 そう言われると、それもそうだならあの婆様にでもなどと、聞こえてきた。

 皆この話し合いが終わると早々に、冒険者組合に向かっていく、護衛でも雇ってスラムに行くのだろう。


 その後どうなったかなど言うまでもない、スラムから危険な状況にあった子たちが一斉に消えた。

 暫くすると皆色々な店の前で掃除をしたり、商品を並べる手伝いをしており、その子たちの顔には笑顔が見られた。

 残されていた子たちもいつの間にやら消え去り、スラムは老人だけが残る地域と成って居た。

 そのスラムも、お休みを頂いた子供たちが定期的に掃除をしたり、当時お世話になった老人たちの世話を行い、気付けば普通の街並みではあるが、やや閑散とし老人しかいない所へと変わっていた。


 犯罪を行っていた子供たちがどこへ行ったのかが分からないのが心配ではあるが、ひとまずの解決を見て街の領主と商人ギルドの方たちから、子供たちを引き取った商人たちが表彰され褒章が施された。


 結果、最初に話に乗った面々はその資金を使い、スラムだった場所をすべて買い取り、中の老人を保護し、新たなショッピングモールと、生活するための寮、そして老人たちの中で知識や技術ある物を集め、学ぶ場所を作った。

 老人たちのうち動けない者は、動けるが知識や技術などが無いものに任せ、区域内の清掃に関してもその者たちや、休みの日で手の空いた元スラムの住民たちが行っていた。

 今までなら親が育てられなくなったり、両親を失いスラムに流れていた子供たちが、出来上がった巨大な学校の前に集まるようになっていた。


 老人たちは、子供たちに厳しく時には優しく自分の持つ技術を教え、それを習い実践した結果出来上がった物は、ショッピングモール内の学校から提供される商品販売所に並ぶ、出来は其処まで良いわけではないがその分安価で買えると今ではそれなりの人気がある。


 そして学校は当初こそ身寄りのない子供たちしか通っていなかったが、半年も経つと技術を身に着けられると知った親たちが、子供の将来を心配して通わせたいという申し出が有った。


 この地域を開発した者たちの組合での話し合いの結果、申し出た場合その親は月収の一割を収める代わりにひとり通わせられるような気まりとなり、同時に通わせる場合二人目からは五分を上乗せで最大でも三割を上限と支払ってもらう事で落ち着いた。

 但しそれでも払ってしまうと暮らしていくのが厳しくなるという意見が出たため、一定額以下の収入の場合は免除され、収めた結果その一定以下に成る場合も、その一定額以降は免除されるように追加された。


 学校内で作った物の売り上げは、学校の経営などに使われ、この組合に所属する者以外がショッピングモールに出店する際は、此方も売り上げの一割を収めることで参加を認められている。

 この収められているお金で、学校の維持及び元スラム地区の整備や美化などに費やしている。

 因みにこの地区の名称は、自分たちに救いの知恵を提案してくれた者を称えた結果サワダ地区である。

 更に言うなら組合の名前はサワダ地区組合となっており、当の本人はあまりうれしそうではない。


「どうしてこうなってしまったのでしょう」

「そりゃ由依が昼も店開けって言ったのが始まりだろ」

「そうですよ、ユイ姉さまとソーおじさまのおかげで、私は今生きていられるのです」


 最初の頃はユイ様、ソグラ様と呼んでいたのだが、居心地が悪く説得した結果、何とかこの呼び方までこじつけられた。

 ソグラも気づけば、その日暮らしどころか、このままショッピングモールなどが維持される限り、何もしないでも暮らせる状況を得てしまった。

 だというのに、料理屋だけはやめられなかったようで、今日も()から店を開けて、近所の店舗の店員や、もともとの常連客相手に食事を作っている。

 仕込みや材料管理を基本由依が行い、注文を受けたり配膳はミハイエが行う。

 材料に不足が出そうな場合は、ミハイエが仕込みの補助をしつつ受注配膳を行い、その間に由依が仕入れてくる。

 ソグラは料理を作り続けるか、常連客とのバカなやり取りをしつつ料理を作り続けている。

 もともとそれなりに腕が良かったソグラだが、由依とミハイエと三人で行う夜の研究会で、さらに腕前を上げ、最近ではこの辺りの貴族階級の者もお忍びで稀に来ている。


「おいソグラァ俺の頼んだ飯まだかよ」

「ちょっと待ってろこのスットコドッコイ向こうの客の方が順番が先だ」


 そう言ったやり取りをしているが、相手は変装した領主である。

 お互い慣れたもので、無礼だなんだと言って騒ぎを起こすと、この店にお忍びで来ているのがばれてしまい、二度とこれなくなるのでそれを避けるためにも、こういった感じのやり取りを平然と行っている。

 因みにいつも閉店後にこう言ったやり取りをやった日は、今回もやっちまったそろそろ首飛ばされるんじゃないかと心配して震えているが、そんなことは無いので安心してほしいと思う。

 他の初期から参加した者たちの中で特筆すべきはあの大商人だろう。

 何と此方の地域を手掛けようという話が決まった際に、もともと自分のやっていた店舗のすべてを店子達を集めこう語った。


「面白そうな事をやるが、外れれば借金まみれに成る。なので今までの店舗はお前たちに全てを譲ろう、今後も商売の道を踏み外さずに頑張ってくれ」


 そう語って、スラムで拾った子供たちを連れて、自分と子供たちの給料として順当な分のみを持ち、去って行ったのだ。

 そして屋敷とそれまでに貯めた資金のみとなった大商人は、真っ先に土地を押さえ始め、それと並行して今までの伝手を使い、土木関連とそれらに必要な資材関連を抑えた。

 今彼の居る立場としては、サワダ地区代表だ。

 連れてきた子供たちは全て、三食昼寝付きという好待遇ながらも、大量の書類との戦いを繰り広げている。

 最近になって子供たちに聞いたところ、最初の頃はこれ同じことが出来る人が居たら正直全てを任せて、その辺の掃除夫に成りたいと思っていましたが、慣れた今ではこのままでよかったと思っていますと語っていた。

 残された店子達は、大旦那様に絶対負けてはならないとばかりに団結し、さらに発展させたというがそれはまた別の話だ。

ブクマ評価ありがとうございます。

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