第五十三話 とある監視者の報告書と現実
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商業ギルドにて、ギルドマスターは受け取った報告書を見て頭を抱えていた。
「昨日の夜と言い、今回の物と言い、あの子たちはまともな報告書がかけないのだろうか」
受け取った報告書を見ると、朝食に舌鼓を打つ、買い出しを済ませ、同居人と暫し話した後外出、図書館に入る、文字を覚える入門書の絵本を読んだ後、称号大全を読み続ける、昼少し前に店に戻り昼食をとり又図書館で続きを読んだ後、司書に何やら質問を行う。再び店に戻り、貨幣らしき物を店主に渡し代わりに金貨を数枚受け取ると、図書館に戻り、特殊閲覧領域に入った。お金が無いので中までの監視は出来なかったが、夕刻に成ると出てきて店に戻った。
これだけしか書いていないので判りにくいと、質問してみれば、詳細もしっかりと語られた。
きちんと其処まで報告書に書くようにと注意をした後帰らせたが、納得いかないような顔をしながら帰って行った。
買い出しを済ませると、由依が図書館に行ってみたいと言い出した、場所を教えて入場料などがかかるので、一日分の入場料に加え喉が渇いたりするだろうと少量の金銭を渡しておいた、お礼を言い図書館へと出かけて行った。
図書館の前に着くと結構な大きさの建物で有ったが、中に入ると思ったよりも広さが無かった。
入ってすぐの所に居る司書に呼び止められ、身分証の提示と入場料を求められたので、商人ギルドのカードを見せ、入場料を払うと、用紙に必要事項を記入された物を渡された。
本日一日有効な入場許可証なので、無くさないでくれと言われ、終わった後は持ち帰っても捨てても構わないとの事だったので、記念でとっておくことにした。
文字はなんとなくだが読めそうな気はしたが、ひとまずは文字を学習するための絵本を司書に聞いて、手始めに読んでみたところ、問題なく読めた。
覚える手間が無くて便利だが、果たしてこれで良いのかを疑問に思いつつも、本命の称号大全を探し出し自分の称号を探し黙々と読んでいく、万象調和 食の女帝、拳帝この三つの内最初に拳帝が見つかったのでそれを読んでいたが、その内容を見て自分でようやく、昨日の自分の動きに理解がいった。
拳帝とは、格闘戦における生物に於いての最上位者の称号で、持って居る者同士で争えば千日手となり、同格の称号を持っていない者との戦闘においては、まず負けること自体が無いどころか意識せずに戦うと相手を無力化どころか死に至らしめるほどの格差が有ると書いてあった。
なぜ自分の太極拳程度がそうなってしまったのかが判らないが、今後は倒そうではなく殺さないで無力化をしようという事を念頭に行動しようと心に決めた。
拳帝の項目を読み終わると、ちょうどお昼時だったので戻ってソーさんの手伝いをすることにした。
昼食を作るのを手伝い、食事をはじめつつ頼み事を伝える。
「ソーさん、午後も続きを調べたいのですが大丈夫でしょうか」
「ああ、出来れば簡単な仕込みだけ手伝ってほしいが」
「そのぐらいなら構いません、そういえば先ほど調べたのですが予想外の称号がついていたようです」
「そうか、称号ねえ。おりゃせいぜい戦う料理人ぐらいしか持っていないな」
「三つあったのですが、口に出してもいいものかわかりませんので、お見せします」
「あまり見せる物じゃないんだけどな」
そうなのですと返しつつ、カードの見えなくしていた部分を開示しソーさんに見せる。
その顔がなんじゃこりゃという顔に成って居たが、見せた後再度隠し直してカードをしまった。
「わけのわからない称号が一つに、判るようなそうでもないような称号と、とんでもないのが一つあるな」
そう言われ、とんでもないのは拳帝ですかと問いかけると肯定される。
昔冒険者時代に、槍帝と弓帝と呼ばれる人たちと仕事をしたことが有るそうで、何をやっているのかが分からない領域で戦っていたとの事でした。
ユイもできるのかと聞かれたので、多分出来るのじゃ無いでしょうかと答えたところ、ブルリと身を震わせ、俺には振るわないでくれよと言われてしまった。
そんな理由もなく人を攻撃したりはしませんし、うっかりしないように気を付けると決めたばかりなので、理由もなくそういうことをする人だと思われているのなら心外ですとだけ抗議をしておいた。
ソーさんが言うには、以前一緒に仕事をした槍帝は女性だったのだが、休憩時に近くの泉で水浴びをすると伝えられたときに、不届き者が出て、その結果起きたことを伝えられた。
槍の高速刺突により、あえて鎧の隙間や防具の無い部分全てにかすり傷のみを与え切るという、離れ業を成したそうで、やられた者は、痛痒いとひたすら悶え続けていたそうで。
それは自業自得なだけです、私も同じことをされれば流石に容赦はしませんと伝えておいた。
食事も終わり、仕込みも済んだので、再度図書館へと向かい先ほどの本の続きを調べていたのですが、結局拳帝以外の称号は見つからなかったので、司書の方に問い合わせたところ、特別閲覧室という入るのに金貨一枚がかかる部屋にある、特殊称号解説という本になら載っているかもしれないとの事で、手持ちに金貨などないので、お礼を言い一度店に戻った。
「おう、お早いお戻りじゃないか」
「残念ながら特別室に行かないと調べられないようで、金貨一枚が有りませんので戻りました」
「そいつは難儀だな、金貨ならおまいさんの硬貨を換金すれば簡単に手に入るんじゃないか」
「それでしたらこれで少し用立ててもらえませんかねえ」
そう言って五百円玉を取り出して渡すと、こいつならひとまずで良いならと金貨を十枚ほど下さりました。
今度ギルドで換金してみて、超えるようならその一割を貰い超えないようなら俺の見立てが悪かったという事にすると言われ、お礼を述べた後再度図書館へ向かった。
金貨を一枚払い、特別閲覧室に入ると先客らしき男性が居た。
如何にも、おとぎ話などに出てきそうな、大魔導士の老人と言った感じの方で、入ると此方をちらりと見た際に黙礼をしたのですが、そのままこちらに興味も示さずまた本を読み始めていました。
静かに目当ての本を探し見つけたので、その方の向かいに座り、開いて読み始めると、万象調和は乗って居ませんでしたが、食の女帝は載って居ました。
食の女帝、食を極め作ること味わう事を極めたものの称号、一度味わったものであれば基本的に何でも再現が出来る、又味の再現に必要な素材が無くても、代用品を思いつきほぼ似たような味に再現もできる。
特典かはよく判らないが称号を持つ者は皆いくら食べても体型が変化したりはしなくなる。
それを見た瞬間、この世界のすべてを食べ歩きしたくなってしまいました。
もう一つの要素として、代用品により味の再現が出来るという部分に注目し、最初の日に再現できたのは、そう言う事が有ったからで、無かったのならばあそこまでの再現は出来なかったのだと思い知り、自分の未熟さに少し悲しくなりました。
結局その後もいくつかの称号に関する本を読み漁りましたが、どれにも万象調和が乗っておらず、頭を抱えて気づくと唸ってしまいました。
「お嬢さん何か称号でお困りのようだが大丈夫かな」
そういえば、見た目だけは若いのでした。
少しうれしくなってしまい、自分の持っている称号の一つが、どこの文献を探してもここの図書館の資料には載っていなかったことを伝えると、それならば教えてもらえぬかと言われたので、外部に漏らさないのであればという制約の元伝える事に成りました。
「実はですね、万象調和という称号なのですが」
老人は目を見開いて、それを持っているのかと寄って来られ肩を掴まれそうになり、思わず避けてしまうと、床に倒れてしまった。
ちょっと可哀想だったので、そのまま手を貸して起こしてあげると謝られた。
「すまなんだ、まさかその称号が本当に存在しているとは思わずについ」
「そんなに珍しい称号なのですか」
「珍しいも何も、はじまりの旅人の中でも、ここにいる竜人族ではなく龍族の中の只一人のみが持って居た称号でな」
そう言って、語り告げられる内容を聞いていくうちに、自分のやった気配を察したり、隠したりする力や魔素を取り込み自在に操れた力がこれから来ていることを理解してしまった。
すべての物と調和することが出来る、特性を把握し始めると何も食べなくても死ぬこともなく生きていくことも可能で、完全に極めると自分は何処にでも居て何処にでも居ないという、チェシャ猫のような存在に成ることが可能であり、一種の不老不死にもなり得る称号だという事だ。
そして、世界と一体化するという事は、その世界の理を自在に操ることも可能という事で、完全に使いこなせてしまえば、天変地異すらも起こせるのではという事に気付き、自分の称号の規格外さに更に落ち込んでいく。
「何を落ち込んでいるのかは知らぬが、むしろ喜ばしい事ではないのだろうか」
そう言った老人の言葉に耳を傾けると、まず全ての物と調和が出来るのだから、生きている者たちとも調和ができ、恨まれたりなどと言ったことは力を使っていれば起きることは無い、よって自分にとっての自然体で生きていられるではないかと言われた。
確かに自然体で生きられるというのはいいのかもしれないが、それを力を使って叶えている時点で、自分的には嬉しくもなんともないのでそう伝えると。
「そこは自分の納得がいくように生きればよい、さすれば答えは見つかるだろう」
そう言われたところで、外から司書がやってきて、サワダ様そろそろ閉館でございますと伝えられた。
周囲を見渡したが司書と自分以外は誰もおらず、確認をしてみたが自分しかこの部屋の利用者はいなかったと伝えられた。
「もしかすると、図書館の主とお会いに成られたのかもしれませんね」
気に成って聞いてみると、世の中には愚か者が多すぎる、少しは本でも読んで考える力を養いなさいと、当時の大賢者と呼ばれた方がこの図書館を設立され、当時は無料で開放されていたそうで、その方が亡くなってからは、稀にサワダ様の様に魔導士の様な老人とお会いして会話をされる方がいるそうですと伝えられた。
幽霊と会って会話していたのかと思い、ブルリと身を震わせた。
謎も解決したのですぐさま店に戻り、開店の準備を手伝い閉店までしっかりと働かせてもらった。
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