第五十二話 走る監視員
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ギルドマスターの依頼で、監視員の仕事に三人で就いたのは良いが、夜の番は面倒だな程度に思っていた時期が私にもありました。
今私は必死に走っていいます、何故かってそれはもう、私の手には負えない大変な事が起きているからですよ。
何時から付けていたのかはわからなかったのだが、遠めの距離から彼女が作ったらしき衝立囲いの陰に居た人物を見た瞬間に私は、急いでギルドに向かった。
「なん、でっあんな大、物、い、るか、なっ」
誰も居ないのにそう言いつつ必死に走って、ギルドに到着するなり早速報告を済ませる。
それを聞いたものが緊急指令を出し、ギルド暗部の上位者達が数名出撃していった。
私が見たのはサイレントとだけ言われている、所属種族性別などが不明で、口と鼻以外を仮面で隠した世界的に有名だが、捕まえようとした者はすべて殺されずに返り討ちされるという、間諜や誘拐など殺人以外の闇の仕事をこなす組織の一人だった。
「なんでサイレントなんかが出張っているんだ」
そう言われたところで、さっぱりわからない私は、状況だけを説明すると、お前じゃ荷が重いから監視のみをこなしていてくれと頼まれた、一息つかせてもらってから現場に戻る。
その女性は、諦めたのか抵抗をやめていた。
由依は反撃したり自殺しないでくれと念を押し、了承を得たが念のためと手ぬぐいで彼女を拘束し、話を聞くことにした。
「あなたは監視員ではないのです」
「違うわよ」
「私を殺しに来ましたか」
「違うわよ」
そう言った問答を繰り返していると、私を浚いに来たことが分かった。
こうして失敗しましたが、あなたへの罰則などはと聞いたところ、修行不足となり再度修行を受けさせられる程度で、それ以外は無いとのことであった。
この場合は私はまだ狙われるのかと聞いたところ、それは無い組織でも上位に成る自分が浚えなかった時点で組織はこの指令を撤回すると言った。
念のために、人を殺したことは有るかと聞いたが、殺しをするのは外道と三流以下だと言いのけ、その目に怒りが宿っていたのを見たところで、ならお帰りなさいと拘束を解いてやった。
「メルカ私の名前だ、覚えておくがいいユイよ」
仮面をとって顔を晒しそう言うと、彼女はまた仮面をつけたかと思えば何処へともなく去って行った。
気にせずお風呂にお湯を張り、のんびりと堪能していると、わらわらと人がやってきた気配がした。
警戒しつつも、私がのんびり湯あみを楽しんでいるときに、じわじわと寄ってくるのが分かったので、その気配全てに向けて同時に温水魔法を使い上から少し熱めの火傷しない程度の湯をかけてやった。
周囲から熱いなどの悲鳴が聞こえる中、私は声を発した。
「人の湯あみを覗こうとするなど、礼儀を知らない方たちですね、用が有るなら出るまでしばらくお待ちなさい」
そう聞いたものたちは、何とか熱さから立ち直ったのか、ご無事ですかユイ様という声が聞こえてきた。
「問題は有りませんのでそのままお待ちください」
そう言って、暫く湯を堪能しつつ、桶に湯を貯め念動魔法と温水魔法を使い服と下着を湯でもみ洗いしながら更に浄化し、念動で水を絞った後伸ばして温風魔法で乾かし、それが済むと湯から上がり体を拭いて着替えをすましでていった。
優に三十分以上待たせたわけだが、待っていた人たちは、何事もなかったことに安心し、色々と聞いてきた。
そして先程のメルカさんがサイレントに所属し、今まで誰も捕えられなかった者たちだと聞かされ、小首をかしげる。
あれだけ楽に気配を見つけられ、此方の気配を悟れない者たちがなぜそこまで脅威に成るのだろうと、もしかしてこの世界の人たちは気配などと言った物を例え荒事を専門とする方たちであろうともわからないのではないかと。
色々と説明をされ、勘違いを防ぐために本来の監視員達まで何故か紹介された。
私は、監視員の一人で何故か監視対象に紹介されるという、本来有り得ない状況にある。
眠気眼をこすりながら他の二人も呼び出され同じように紹介された。
一体どういうことなのかを上位の者たちに問いかけたが、勘違い防止のためと言われ、先ほどあったことを説明され納得した。
目の前にいる子供は、いわゆる化け物と言われても可笑しくない領域の者だったのだ。
なんですか、サイレントの一人に気配を悟らせないで近づいて両者無傷かつ無手でとらえた挙句、それに対して尋問を行い、名前まで知った挙句わざわざ無傷のまま逃しているとか、次に又着たらどうするのかを聞けば、もう二度と起こさないと誓われたとか、既に普通の人では考えられない領域の話ですよ。
先日だって、とある国の王子がサイレントに誘拐され、いまだに見つからないという話ですし。
きっとどこかの国の王か姫、権力者の誰かが依頼して浚わせて手元に引き込んだのでしょうが、まあ触られても、契約を破られるようであれば、浚い直して元の場所に戻すらしいですが、そんな事が出来てしまう集団から諦められたって、一体どういう事なんですかー!
心の底から思っていたけど、口には出さずに堪えられた。
私ミィス、姐リィラ、妹ティラの三姉妹の監視者達はそれぞれにユイとあいさつを交わし、由依は皆さんが来ていてもそれは気にしないでおきますと言っていた。
その時点で監視がいる場所まで、気付いて居るってことじゃないですか、ありえないでしょ。
色々と突っ込みたいところが満載な化け物を前にして、ありがとうございますとだけ言って又監視のために解散した。
あまりに戻って来ない事を心配したソーさんが来たが、気持ち良くて湯船で少々寝てしまった以外は、とくに何もありませんよと伝え、心配されつつも今度はソーさんがお風呂に入り、二人で店に戻りお互いの部屋に入り眠りについた。
称号や、気配に敏感になった事について気に成ったので、明日は図書館でもあれば調べに行きたいと思いつつ夢の世界へと旅立った。
眠りについたのか部屋からの明かりが消えたので、のんびりと監視しつつ今日の報告書をしたためる。
ついでだからと報告書のついでに、移動願いも書いておいたがどうせ受理はされないであろう。
そうして朝の交代が来るまでのんびりと監視することにしていたが、夜が明ける少し前に彼女が裏庭にやってきた。
やっていることは凄くゆっくりなのに、何やらとてつもないものを感じ取り、その動作に隙がまったくない事に目を見張りつつ監視していると、それらが終わったのか今度はその辺りを掃除をこなし、ついには朝からお風呂にまで入りだしていた、一度でいいから入ってみたいものである。
使っていた魔法がどういう物かはわからないけど、お風呂は高い事を考えると、とてつもなく高位の魔法使いなのだろうと思う事にした。
引継ぎ用の監視帖にそれらをしたため終わると、火が昇り交代要員であるリィラが来たので、監視帖を渡し、本部に戻り報告を済ませた後、家に帰り泥のように眠った。
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