第五十一話 何か忘れていた二人
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店に戻ると、二人で仕込みを開始した。
由依の収納が保存能力が有るのを良い事を利用して先にやってしまって、全部しまっておこうと由依が提案したからだ。
すべての仕込みが終わった後、寝かしておかなければいけない物だけを収納から取り出し、冷暗所へとしまう、冷蔵庫みたいなものは無いのかと言ったところ、あるにはあるが氷を毎回入れて溶けたら捨ててまた氷を入れるタイプと、魔石を使うタイプがあるが、どちらも値段が張り、大商人か貴族ぐらいしか持っていないとの事だった。
それを聞いて思いついたことが有り、実行していいのかを聞かれたので、床下に穴を掘り蓋をするだけと伝えた、なぜそんな事をするのかを聞かれたので、建物の中の地面の下は常にひんやりしていることが多いこと、穴を掘り下側にすのこの様なものを敷き、壁側と天上側はしっかりとしたものを作れば、そこそこにひんやりとした部屋が出来上がるはずと伝えた。
物は試しだという話に成り、穴掘る魔法はと聞かれたところ念動でと言ったら、それよりいい魔法が有ったはずだと、土木魔法かなんかで有ったと言われ、どうやって覚えろとと聞いたところ、商業ギルドで買えたはずと言われ早速二人で向かった。
商業ギルドはかなり大きい建物で到着すると、受付カウンターに向かい、土木魔法を覚えさせたいと伝えた所、ギルド員じゃないと駄目だと言われてしまい、そこでようやく登録しなさいと紹介状を貰ったことを思い出しその旨を伝えた。
「はいでは、紹介状と仮の身分証の木札を提出してください」
それを取り出し渡すと中を改め始めてすぐに、しばらくお待ちくださいと言って後ろの上司らしき者と話すと、何やら奥へと向かっていった。
暫くすると、好々爺然とした老人と、同年代らしき女性、先ほどの受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました、どうぞこちらへお入りください」
今老人たちが出てきた部屋へと案内され扉が開かれ、受付嬢は私たちと老人が入るのを確認すると扉を閉めた。
老人が扉に鍵をかけ、部屋に四人だけであることを確認すると、老婆に目配せをし何やら呪文と唱えそれが終わると、ソファへと案内し寛ぐように促される。
「いやー初代様達の仲間の人族の同郷で似たような時代から来ただと?珍しいじゃねえか」
いきなりフランクに話しかけられ、呆気に取られかけるも持ち直し逆に聞き返す。
「その話、ないしょという前提だったんですけどねえ」
「まあそこはほら、ただの紹介状じゃあ数日から数カ月に試験が必要だからな」
「と、申しますと、試験とやらは無くなるのですか」
「まあ、その辺はあれだな、これからの話し合い次第だ」
色々と質問をされ答えていき、証明する物は無いかと聞かれ、小銭を出して見せたりした。
色々と話し合った結果、事実と認められ、そちらの提供できる知識は無いかと言われたので、ただ料理人ですからと言うと、ソーさんが弟子を持つような領域人間がただの料理人なわけあるか否定した。
まあ確かに、自分の店は小さいが、修行を終えた弟子たちの店はかなりの規模の店が多いのは有るので少し可笑しくなり、ふふふと軽く笑ってしまう。
「少しその料理の腕前を披露してくれんかのう」
そう言われて少し困り、思いついたことが有り提案した。
「店の仕込みしか今は持ち合わせが有りませんが、市場の屋台に先ほど軽く手伝いをしたのでそこに言えばどの程度のものかは判ると思います」
そう言われると早速老婆が何かを解除して外に出ていき手配をしたらしく、屋台ごと店主を連れてきた。
「一体俺に何の用が、って先ほどの嬢ちゃん」
後ろにいた私に気付いたらしく、明日からは両隣りに酒屋と飲み物夜が付く事に成ったと、又お礼を言われたが、いえいえと流しておいた。
事情を説明された店主は商業ギルドで素材を提供され、早速仕込みを行い串を作り上げていく。
漂う香りに、職員や受付に来ていた商人たちがごくりとつばを飲み込んだ。
完成した二種類の串を、老人と老婆が受け取り一口を食べると、よく噛み味わい二口目からはがっつくようにして食べていく。
老人と老婆と言っているかここの人たちは私を覗いてほとんどが蜥蜴の様な人で、稀に動物の耳をはやした者もいた程度だ。
食べ終わると、どういう感じでこれが作られたかなどを店主から聞き込み満足したのか戻ってきて此方に話しかけてきた。
「うむ、これだけの事を行える才能そして、その後の店の売り上げに関わる知識を授けた心意気合格じゃ」
「そうですね、これだけの事を平然としてしまう感覚が、少し心配ではありますが合格でしょう」
「そうですか、この程度なら私の所ではありふれていましたので」
「恐ろしいまでの食の追及をしている所なのじゃな」
「まあそれよりも、ソーラさんちょっとこちらに」
先ほどの受付嬢が呼び出され、幾らかのやり取りをしていると驚かれ、戻って行って何やら手続きをして、済ませると私が呼ばれた。
こちらの水晶に手を乗せてください、暫くの間はそのままでお願いします。
そう言われると、水晶の下に空間が有り、その下に金と銀の中間のような妙なプレートが置かれていた。
ひとまず手を乗せてボーっとしていると、水晶が淡い光を放ち、つらつらと書き込まれていく。
文字が何故か読めるのでそのまま読み取ると、ユイ サワダ 女性 六十四歳 人族 万象調和 食の女帝、拳帝と表記されていた。
周囲からはまだ何も書かれていないように見えているらしく、表示させたい項目を押して表示するように念じれば、それが出るようになりますと言われたので、早速名前と性別と種族だけ出るようにした。
万象調和と食の女帝が気に成ったので、種族の後にある物は何かを聞いたところ、称号だと言われその場でがっくりと崩れ落ちてしまい、周囲に心配された。
プレートについて聞いたところ、特別会員プレートと言われ、一般ではまず手に入らないプレートだという事、基本的に国は特別会員が問題を起こさない限り害を与えてはいけないこと、基本的に専門の監視員が必ず陰で監視していることを伝えられる。
「常に監視されると寝ているときとか、体を洗っているときが心配なのだけど」
「その辺りは、監視員は同姓という決まりもあり、理解しているので大丈夫です」
「ならいいかしら、まあおばあちゃんの体なんて嬉しくもないかもしれないけど」
「いやいやお前さんまだ見た目は子供だからな」
そんなやり取りをしていてソーラに首を傾げられたので、こっそりと年齢を出すようにして見せてすぐに年齢を隠したところ、大層驚かれてしまった。
その後に又詳しい決まり事などを説明された後、用は済んだので挨拶をすまし、ソーさんの店に戻り開店準備をして過ごした。
夜は昨日の面子に加え、屋台のおじさんとその連れらしき数人もきて、店が満員状態になった。
私は一所懸命に調理をしていたのだが気付くとソーさんはまた客の方に行き、酒を飲みながら食っちゃべってたので、首の後ろをつまんで引っ張って戻って行き、まずは客向けの料理全部終わらせなさいと説教をした。
それが客に大うけだったらしく、子供なのに姐さん女房だなどと言われたが気にしないでおいた。
一通り済ませて一息つくと、客も料理の量は事足りたのか注文が止んだ。
もし頼まれても、仕入れた食材が無くなったのでもう作りようもないのだが。
自分たちの食べる分を用意すると、ソーさんはそのまま客の方へ行き、一緒に酒盛りをしていた。
私は、厨房でゆっくり食べつつ、客席の空いた皿を回収して洗い物の所へと置いていく。
客も帰り洗い物なども全てが終わったところで、私は先にお風呂へと伝え部屋に戻り必要なものを取り出した後は意識を切り替え気配を殺したまま裏庭へと向かった。
この世界に来てからという物、妙に前よりも気配を感じられるようになったせいか、そこに先客が居る事に気付いていた。
やれやれと思いつつも、先客へと気づかれづに近寄りると、若い女性のようだった。
気配を殺したまま気付かれることもなく、そっと手を差し伸べ拘束する。
組み伏せるとすぐに、片方に持って居た手ぬぐいを口に詰めて抵抗は無駄と悟らせた。
「あなたは、監視員さんかしら」
相手の目を見てそう問いかけると、目を一瞬見開いたがそのまま目をそらされた。
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