第四十九話 明晰夢(?)と朝の一幕
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眠りについた私は、久方ぶりに夢を見た。
その内容が何とも言えない内容過ぎて、起きた後もはっきりと覚えていた。
「死んだはずのとーさんと、シイさんが、良く判らない女性と話してた後若返って何処かに行った」
私はそのことについて考え始める。
そもそも、地球上のどこを探してもこんな場所は有り得ない。
それに使ったコンロだ、どう使えばいいかは何となく判ったが、仕組みはさっぱりわからない。
「魔法もありますしやはり異世界ですよねえ」
昔はよく、とーさんにお勧めの本を借りては読んでいたので、ファンタジー物は散々読んでいた。
そんな中でそれなりにあったのが異世界転移もの、大概は王様の元とかに現れるが、たまにこう言った訳の判らない街中や森の中などと言うのもあったはずだ。
それに加えあの夢だ、とーさんとシイさんが若返っていた。
あれが事実だったらもしかするとこの世界に居るのかもしれない、当時のあの不可思議な出来事と言い、この手元にあるエプロンと言い服装もそうだが、当時バイトしていた時の制服として用意されていた服装にエプロンなのである。
エプロンをぎゅっと握りしめ少し懐かしさにほろりとしてしまう。
「さて、そろそろソーさんも起きてますかねえ」
元が年寄で料理人だった影響か、まだ日も登って居なく外は薄暗い。
静かに廊下へと出てみたが、隣の部屋からはいびきが聞こえてきたので、そのままそっと裏庭へ向かう。
桶にお湯を張り、顔を洗い手ぬぐいで拭った後、ゆったりとした動作で日課の太極拳の型を一通りこなし、息吹を行い周囲の魔素を取り込み体内を循環させ外に戻していく。
すると大分体がポカポカとして来て、意識もはっきりとしたので、今度は衝立の中に入り服を脱いで軽く汗を流し、体を拭いてから衣服に浄化をかけ着直し店に戻る。
辛うじて朝日が昇り始めたが、まだ起きてこないようなので、箒と塵取りを見つけ出し、店内と店の前の掃除を済ませた。
それでゴミをどうしたら良いか判らず、ひとまず先ほどと同じように裏庭の一部に念動で穴を掘り、そこに入れた後着火で燃やし、十分に燃えたところで流水で消火し、念動で土をかぶせておいた。
再度店に戻るとようやくソーさんが起きてきた。
「おはようございますソーさん」
「おう、おはようだユイ。早えな」
「仕入れると聞いてたのでてっきり早い時間かと思っていたのですが」
「そっちだとそんな早くないと駄目なのか」
「ええ、良い品は早朝に争奪戦まがいで買いこみに行きますから。うちは違いましたけど」
「そんなめんどくせえ所は嫌だな、こっちはゆっくりで問題ねえ。昼前に買い出して仕込んでおくだけで十分だ」
そう言いながら厨房へと向かい、朝食の準備をしようとする。
手伝いを申し出ると、そちらの料理を見せてもらえないかと頼まれる。
味はどうしても調味料の問題で完全には再現できないが、それらしいもの程度なら作れるが、時間と手間を少々かけてもいいかを聞くと、構わないとの事だったので、ごま油のような物を多めに貰い、フライパンにたっぷりと入れ加熱する。
そこそこの温度に成ったところで、ヘタを取って乾燥しただけの唐辛子をそのままと、輪切りにしたものと、細かくしたものを作り大量に入れ、暫く焦がさないようにかき混ぜながら火を通し油が赤くなったところで火から離す。
冷めたら瓶に移し替えて保存したいと申し出ると、瓶ではなく梅干を入れるような壺を出してきて使ってくれと言われたので冷めた後にそちらに移し替えた。
昨日調理したときにラー油が無かったので簡易ではあるがこれで代用することにする。
次に、ラー油、ワインビネガー、砂糖、刻みニンニク、醤油のような物(スパイスが入ってる模様)を混ぜておく、スパイスのせいで少々味を調えるために塩を加えたりラー油とビネガーを多めにして調整する。
パンや揚げ物を作るときに使うという粉を卵で溶き、水を足しながら緩さを調整し、塩を入れだまが無くなるまで更に溶く、余りものの野菜類色々を千切りかみじん切りにし混ぜておく、肉か魚介を頼んだ所肉を渡されたので薄切りにして別に置く。
かなり熱したフライパンに少し多めに油を伸ばしそこに先ほどのタネを伸ばし暫く揚げる感じで焼き上に薄切りの肉を並べ、少しまちカリカリになったであろうタイミングでひっくり返す。
徐々に香ばしい香りが広がり空腹を誘われる、まだ扱いに成れていないコンロらしきものでは火にむらが出てしまい、ひっくり返すと少々焦げ(と言っても臭くはない)が出来てしまったが仕方ない。
肉に少々火が通った程度で火を止め、余熱で焼いていき少しふっくらしたところで肉が上に成るように還しつつ皿に置き、つまみやすい程度にカットし、先ほど作っておいたタレを小皿二つに入れて、既にスープとサラダの用意を済ませて、座って待っていたソーさんのテーブルへと運び向かい合うように座る。
「あえて言うならば、異世界風チヂミとでも言いましょうか」
「何やら粉物みたいだったから、スープとサラダにしたが正解だったか」
「先ほど作った赤い油はわかる通りかなり辛いので、此方のたれに辛みが欲しければそれを、酸味が欲しければビネガー、甘みなら砂糖、塩辛さなら塩あたりかあのソースを足して調整してくださいな」
「あの油、色々応用できそうだな、ドレッシング作るときに入れてサラダ用のホットソースもいけそうだ」
「まあどう使うかはご自由に、ささ冷める前にいただいてしまいましょう」
そう促し二人で食事を開始した、勝敗と言いますか、ええまあ、お代わりを申し出てもっとたくさんと言い出したので結局私が二枚なら居ながらソーさんが三枚ほど焼いて四枚以上をソーさんが食べつくしましたとも。
辛い物が好きらしく、途中からラー油を足してかなり真っ赤なたれで、辛い旨い止まらんなどと言いながら食べていましたが、下世話な話ですが彼の今後のお尻事情は大丈夫でしょうか。
基本私の料理は、子供が食べても平気な程度の味付けにして辛みや苦み塩辛さを抑えめで作っている。
昔一度やらかしてしまってからの教訓だ、とはいってもお店の常連さん相手だとどの程度の辛さや味付けが好みかが分かっているので、その辺は調整しているし、子供以外の客のみであれば、本来の味付けにして作っていた。
以前やらかしたのは、本来の味付けで出した際に、一緒に居た子供が辛すぎると泣き出してしまい、親御さんに謝りつつ、その子の分だけ料理を作りなおし、おまけでデザートまで付けたことが有るのだ。
まあ材料費考えたらそれでも黒字ではあるが、あれ以来子供向けな味付けを基本とし、タレなどあとから調整できるものは、調整用の薬味やたれの材料などを一緒に出すようにしている。
弟子たちは、注文を聞いた際に確認して、作るようにしているらしいので問題は起こさないだろう。
そんな事を考えていたら朝食を並べたテーブルには気づけば空に成った皿と飲み物しか残って居なかった。
もう少し、チヂミを食べたかった気がするが仕方ないだろう。
「ふー、朝からたくさん食べ過ぎちまった。ところであのたれ本来だとまだ何かあるだろ」
「そうですねえ、此方にあるかわかりませんが幾らかの発酵食品が足りないので、そこは妥協しました」
「折角だから、市場に有ればその辺も抑えるか。俺の料理に合いそうな物しか置いてないからな」
「まあ、見つからないと思いますけどね。似通ってはいますが、加工調味料には違う物がおいですし」
そう言った後、洗い物や後片付けをし綺麗になったところで、のんびりと市場へと道案内をされつつ散歩をした。
途中で警備の巡回に足止めを貰い、身分証が無いこと、そもそもこの世界の者では無いと思われること等を説明したが、念のためと詰め所まで同行することとなり、ソーさんが心配以前に又迷子じゃたまらんと主張し一緒についてきた。
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