第四十三話 木刀伝説
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里の観光も終わり、土産にと買った森羅の里と刻み込まれた木刀を腰に下げながら街に帰り冒険者組合に入ると、予備とは言え玩具みたいな木刀をぶら下げていると散々屯している連中に馬鹿にされた。
自分の集団は、両手でも片手でも扱える剣と両手杖を使う近接役の俺と、補助と回復を主にし隙をついてたまに攻撃魔法を行うソール、後方での警戒を兼ねる弓使いのグロウ、大盾とひっかけと言われる特殊武器を使い多数の敵が居るときに自分に多くの敵を集める盾役のモズ、短剣を使い遊撃と索敵と罠などの対策を行うコーラル、荷運び役にして一番の知恵者であり指揮官のソアラという六人で構成されているもう少しで上位に食い込めそうで食い込めない中位程度の集団だ。
今回も獲物を探し組合掲示板を見ると、新しく発布された少し離れた村にある大物の任務を見つけた。
それを剥がし持っていくと、周囲からオイあいつら知らないのかなどと言われる。
なんでも出現する魔物が強すぎるのか中位の集団が三つほどで組んで行ったが返り討ちにあい死者も出ているというのだ。
「こちらをお受けに成るのですか、集団ランクを確認させていただきます」
個人ランクのほかに、集団登録してあると、集団ランクという物が発生する。
そちらを見て集団でやるような依頼の際は、認可が下りるのだが、今回はぎりぎりで満たしていたようで、失敗してもペナルティは無しとの事だった。
このペナルティと言うのは、自分たちより低い難易度をする際の組合側の保険のようなもので、依頼中にやっぱりやめる等を防ぐ為と依頼失敗時の慰謝料支払いの為のものだ。
これのおかげでペナルティを発生させたくないため、なるべく下位依頼は受けようとしなくなり、依頼不足や上位依頼の消化不足の防止に一役買っているらしい。
上位依頼はそれでも消化不足に成るものが有るらしいが、そんなものは天上人たちが消化できる状況でもない限り無理だろうという話だ。
早速依頼を受けた後準備を整えると、依頼の村まで向かう。
到着するとあまり歓迎はされなかった、既に何組かの集団が来ては失敗して戻って行ったからだろう、それなりの手傷を負わせて暫くは大人しくなるが傷が癒えるとまた暴れはじめ被害が始まるとの事で、また明後日の昼辺りから被害が発生するのではと危惧しているらしい。
既に相手の住処は見つかっているとの事だったので場所を確認し、そちらへと向かった。
現在、相手の魔物はマンティコアで一体では無く二体居たらしく、住処へと向かい一体と遭遇し戦闘を繰り広げていたら、後ろからもう一体が現れた。
「おい!聞いてねえぞ二体いるなんて」
モズはそう言いながら急いで、目の前の抑えを外して後方へと向かい抑えにかかる。
何とかモズが間に合い、後ろを押さえられはしたが、一人で抑えるのはきついようで、すぐさま指示が飛び、グロウとコーラルがそちらの援護に向かった。
結果的に正面のマンティコアと直接戦うのは自分一人となってしまった、支援魔法が掛かり刃の切れ味が伸びる。
ソールの支援は的確で、徐々に此方が削りつつあったのだが、躱しきれないタイミングでの攻撃を防いだ際に剣が飛ばされ、両手杖で戦っているがこちらも限界が来たのか、次の一撃が来たら折れてしまいそうになっている。
記念品の飾りだろうが背に腹は代えられないと思い、杖を捨て木刀を抜いた。
手に吸いつきしっくりくると言った感触の木刀を構えると、妙な感覚に襲われる。
「どっちを掛けたら良いか判らないから両方行くよ」
ソールがそういうと、刃物向けと鈍器向けの武器への支援が連続でかかる。
それを受けた瞬間に理解した、両方の支援が掛かったのだ。
本来該当する以外の支援はかからないが、両方が掛かったという事は、両方の技が使える。
その自分の考えたことの非現実さに冷や汗をかきながら、マンティコアの攻撃を防ぎながら、状況を見てそれを確認するための技を放つため受け流しの構えをとる。
「こいつはもしかすると、とんでもないかもしれないぞ」
そう言った言葉を誰が理解できただろうか。
両手剣技に流れ斬りと言う技が有る、相手の攻撃を受け流し切り込む技なのだがそれの終点が、両手杖技のかち上げと同じ体制に成るのだ。
実際にやってみたところ、それは成功したどころか、その先が見えた。
体が勝手に動くというべきなのだろうか、そこから片手に持ち片手剣技袈裟一文字切り、その勢いで左方向に一回転しそのまま槍杖技の回転突きへ繋ぎ、その姿勢を利用して片手剣技二段突きの二段目へと繋いで決めたところでマンティコアが沈んだ。
ソールが呆気に取られる中、急いで剣を拾い後方の戦闘に参加し、何とか討伐を終え、討伐の証を回収し解体を行い不要な部分はその場で火葬した。
村に戻り討伐成功とその証拠を見せたら、大いに感謝され宴が開かれ、翌日二日酔いを起こしながらも街へと帰って行った。
街へ戻ると二体居た事と討伐完了の報告を済ませついに上位へと入れた。
それを聞いた周りの者たちが、煽ってすまなかった等と謝られたので気にしてないと伝えておいた。
壊れかけの両手杖と、剣と木刀を持ち鍛冶屋へと向かうと、木刀ってここでいいのだろうかと疑問に思いつつも手入れと修理の依頼を出した。
その時に驚かされたのは、木刀は一切傷んでいない汚れを拭くだけで良いじゃないかと言われ返されたことだった。
杖の方は修理は無理との事だったので、諦めてそのうち薪にしようと思う。
酒場に戻ると、ソールが皆と酒を飲みながら俺の武勇伝を語っていた。
「ああ、クーファいいところに来たよ、だれもあんたがやったアレを信じてくれないのさ」
「そりゃそうだろうな、こんな木刀でマンティコア倒したなんて前代未聞だろ」
「そういやそれ折れたり傷んだりしてなかったのかい」
「それが、さっき心配だったんで鍛冶屋持って行ったら汚れただけの新品よこすなって怒られたよ」
「あんだけ酷使したのに新品って言われたのかい」
そう言われて取り出して汚れを拭いてみたところ、多少は汚れが残るものの新品同様だった。
確かに新品だなと皆も言っていたが、あれだけの酷使をしたのにこれはおかしい。
それで食いついてきた奴がいたので、皆に煽られた結果引っ込みもつかないので仕方なく、そいつと模擬戦をする事に成った。
この街にある組合の模擬戦場は特殊結界で覆われており、死亡しても死なないという何とも便利な性能を備えている。
そこで実際にもう一度やってみたのだが、繋がりそうと思った技はほとんどが繋いで使う事が出来た、問題は一気に体力を消耗するため、そう何度も放てないのでここぞと言う時にしか使えないという事だ。
そして、実際に体験した奴と、それを見ていた奴らから、クーファ式戦闘術などと言われ持て囃されたが、実際の所の説明をしこの木刀と同じものが無い限り出来ないと言ったら、任務を受けていなかった数名が急いで飛び出して里へと向かっていったという話だった。
「この木刀を作った奴には感謝しないとだな、これだけの物を作れるのだからさぞや高名な製作者に違いないが、だからこそのあの値段だったのか、記念と思ったが思わぬ掘り出し物だったよ」
模擬戦の後に行った酒場でクーファは皆にそう語っていた。
それを知らないシルヴァイルは、何度もくしゃみをし姉に病気にでもなったのかと心配されたがそれはまた別の話だ。
その数年後、最上位冒険者の一人に木刀を持って目にも止まらぬ速さで技を繰り出し、数多の上位魔物を屠る伝説の男がいるという噂が流れたがそれはクーファかどうかは定かではない。
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